血の気が引く状況に陥る
翌日、朝食を摂り終えて制服に着替えた俺が登校しようと玄関扉を開けると、玄関前で一人の少女が佇んでいた。
俺に気付いた彼女は顔を上げ、微笑みながら挨拶をしてきた。
「やぁ、おはよう!昨日ぶりだね、いよちゃん......って、馴れ馴れしい呼び方は嫌いか。蒼嶺くん」
「......っ!えっ?どうして貴方がここにっ!?ストーカー!?」
「ストーカーとは人聞きが悪いじゃないか!蒼嶺って表札があったからもしかしたらって思って待ってたの。......謝って、くれないの?」
口を尖らせ、不満をあらわにし謝罪を要求してきた彼女に顔を逸らして改めて訊ねることにした俺。
「昨日、別れたと見せ掛けて後をつけてきた、なんてことじゃないんですね?」
「ちっちぃっ!違うよー、そんなことしないよー、蒼嶺くんは人が悪いなぁ~」
明らかに黒だ。
尋常ではないキョドリをみせた彼女。
「ストーカーというですよ、それを。はぁ......まだあるんですか、昨日に引き続き?」
「......ごめんなさい。つい、出来心で......お試しって形で良いのでっ!短い間だけ......付き合ってぇっ、くださいっっ!」
しょんぼりと肩を落とし、謝ったかと思えばもじもじと身体を小さく捩り出して、思いもよらないお誘いを告げてきた彼女。
「......えぇっと、はあ~あっっ!?今なんて言いましたぁ~っっ?」
俺は思わず叫んでしまった。
俺の叫び声があがると同時に彼女の背後からドサッとアスファルトに重いものが落ちたような鈍く低い物音が聞こえた。
物音が聞こえた彼女の背後に視線をやると、通学鞄を落とした伊奈沢が立ち尽くしていた。
マッ、まずい......この状況は──。
俺は、血の気が引いたのを実感したのだった。




