私は50年間、ずっと刑務所の中で過ごしてきました。
私は、50年間という歳月を刑務所で過ごしてきました。
私の罪は、“強盗殺人”です。
私の人生の殆どは、刑務所の中での暮らしです。
人を殺めてしまった。
被害に遭われた家族の方たちには、本当に申し訳ない事を
したと本当に反省しています。
私が殺めた女性には? まだ幼い子供がいました。
幼い時に母親を殺されて、その子の母親がいない寂しさや苦しみ
を考えると今でも私は胸が苦しくなります。
当時の私は、まだ20歳になったばかりで友達は、札付きの悪と
言われていた連中ばかりでした。
その友達の一人が、【強盗】をしようと話を持ち掛けてきたのです。
お金のない、私達はその話に乗りました。
強盗に入る家は、正直何処でもよかった。
人通りが少なく、家に簡単に忍び込めそうな家ならどこでも。
たまたま、入った家が【仁藤】さんという家でした。
深夜、みんなが寝静まった時間に忍び込む事に私達は決めました。
私達は、見張りに1人と逃げるための車の運転手に1人忍び込むのは?
私を入れて3人でした。
私達は、窓ガラスを音を立てないように割って入る事にしました。
私達は、単に強盗で入るだけでした。
お金やお金になりそうな高価なモノを物色して逃げるだけだと思っ
ていました。
・・・でも、そこに4歳ぐらいの女の子が2階から降りてきました。
寝ぼけているのか? 目を擦りながら私達にその子は言いました。
『・・・お兄ちゃん達、誰?』
『・・・・・・』
その後、子供を心配した母親が2階から降りてきて。
私達と鉢合わせしました。
私達は、彼女が大きな声をあげないように口を押えました。
小さな女の子も同様です。
でも、そこにまた2階から今度は、父親が降りてきました。
私達は、どうする事も出来なくなり。
仲間の一人が、父親を台所にあった包丁で刺してしまいました。
それを見た! 母親が大声をあげたため私はカッとなって母親も
殺してしまいました。
子供は、父親と母親を同時に目の前で殺されて泣き叫びました。
私達は、直ぐにこの家から逃げましたが警察が来て直ぐに捕まっ
てしまいました。
私ともう一人は、人を殺してしまった為、刑務所に入りました。
彼は“死刑”で、私は“無期懲役”となりました。
彼は、警察の取り調べの時に“一度、人を殺してみたかった”と
自供したらしいのです。
私は、咄嗟に気が動転して人を殺めてしまったと話しました。
でも、まさか!? 彼が【死刑】になるなんてショックで胸が
苦しくなりました。
でも、ホッとしたのも本当です。
自分は、まだ生きていられると思ったのも正直なところだったからです。
50年という歳月は、私の生活を一変させました。
家族と一緒に過ごす時間より刑務所の中での生活の方が長いのです。
朝5時に起床、分刻みに1日やる事が決まっています。
50年間ずっと、ここでの生活を過ごしてきました。
だから、看守の指示がないとまったく何をしていいのか分からない。
自分で考えて行動するという事が、私にはよく分からないのです。
指示通り動く事が出来ても、私の考えで何をしていいのか分からない。
私も、70歳になり死ぬ時もここで死ぬ覚悟を決めました。
一度、罪を犯すと? 一生後悔して反省するしかありません。
勿論! 亡くなった方は戻って来ませんし。
私の罪が、消える事はないでしょう。
それでも、生きている間に一度でいいから外に出たい。
外の生活を、少しの間でいいから過ごしてみたい。
そんな夢のような事をずっと思い続けているのです。
私は、人を殺めた事で家族や親戚、友達や知人の方々。
何よりも、被害者のご家族にご迷惑をかけてしまいました。
私が生きている事で、辛い想いをさせているのかもしれません。
それでも、私は生きたいと望んでしまうのです。
一度、幼かったあの女の子が私の面会に来てくれた事がありました。
彼女は既に大人の女性になっており、私を睨みつける目でじっと私を
見つめていました。
私は、ただただ彼女に謝るしかできませんでした。
許してもらえるとは思っていませんが、少しでも私が今ここで生きて
いる事を認めてほしかったのです。
その時の面会で、彼女が私に話した言葉は、たった一言でした。
『わたしは、貴方を一生許しません!』
『・・・・・・』
彼女が私に言った言葉は?
当たり前のことかもしれません。
それでも、どこかで許してもらえるという淡い想いが私に
あったのだと思います。
彼女が帰った後、私はショックで何も手につきませんでした。
【そりゃ、そうだな。】
分かっていたけど、私の心が受け止められなかった。
勝手に涙が流れてきました。
涙はずっと止まりません。
私は、涙を止める事ができなかったのです。
ここで私が学んだことは?
一度の大きな過ちは、後悔してもどうにもならない事です。
生きる事すら、私には許されないのでしょうか。
こんな私でも、生きたいと望んではいけないのでしょうか?
私は、今も刑務所の中で、いつも通り過ごしています。
きっと、死ぬまで私はここを出る事は出来ないと思います。
それでも、私は生きる事をやめないと決めたのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。