拳闘士 2
ある日、山賊に一人に女剣士が襲われていた。
彼女は剣士としては強かったが、それでも多勢に無勢。
山賊に襲われればその末路は悲惨だ。
所謂レイプという形で、女の尊厳を山賊たちは奪うだろう。
そして用済みになった女は、息の根を止められた後に山に捨てられる。
だがそれを黙って見ている拳闘士ではなかった。
「あべしっ!!」「ひでぶっ!!」と、爆散していく山賊。
あれよあれよと拳闘士は山賊たちを片付けてしまった。
そして女剣士を助ける男。
女剣士の名前はアンナというらしく、助けてもらった羞恥心からか顔は真っ赤だった。
そして拳闘士の方も、どことなーく彼女を見る目が普通の人間と違う。
これは人間の世界でたまに起こる『一目惚れ』という現象だろう。
我々杖の世界に、性的干渉の概念はない。ただ今回のケースでは、危機的状況を救われたというバイアスが上手く作用したことによってお互いに異性を意識する展開になったようだ。
そして、そこから拳闘士はアンナに剣を教えてもらう日々が始まった。
独学の完全な我流で剣を学んでいた拳闘士と違い、アンナはちゃんとした師匠の下訓練を積んだ剣士だった。しっかりと基礎から剣を学び、拳闘士は剣士としても着実に強くなっていった。
一年後、彼はアンナを凌駕するほどの力を持つ剣豪になっていた。
この頃になると、もう誰がどう見ても分かるほどに二人は意中の恋仲になっていた。
そしてこの頃から、夜になると暗い洞窟の向こうで嬌声が聞こえるようになった。
何をやっているのかは定かではないが、恐らく修行の一環なのだろう。
そして夜が明けると、お腹を押さえたアンナと汗に濡れた拳闘士が洞窟から現れる。
私が聞くところによると、人は性交渉という過程を経て新たな生命をはぐくむという。
もしかしたら、彼らは新たな生命の創生に専念していたのかもしれない。
そんな中、ある日彼に決闘を挑む人間が現れた。
拳闘士の異名は各地に轟き、最強の戦士の一人と謳われていたからだ。
拳闘士は、それの挑戦をあっさり退けた。
するとそれを聞いた世界屈指の有名な剣豪が、彼に挑戦を申し出た。
勝負の内容は、剣での決闘。勝てば栄誉を手にし、負ければ死ぬ。
剣術での勝負、それは拳闘士には余りにも不利な戦いだった。
いくら強くなったとはいえ、相手は剣に人生を賭けた男。それも最強格である。
しかし拳闘士はそれを受け入れた。そしてアンナもそんな彼を止めなかった。
この頃になると、アンナのお腹は大きく膨らんでいた。
彼と彼女の間に、子供が生まれていたのである。
そして拳闘士は、彼の人生最大の強敵と対峙することになった。
では、今日の話はこの辺で終わりにしよう。アディオス。