最強の杖
私は魔獣神杖ディスティニーレイン。
異世界最強の杖と謳われる神杖34聖の中でも、最強と謳われる杖である。
杖を振るえば大地を割り、海も割り、やり過ぎると地球を割る。
魔力は尽きることなく使える魔法は数知れず。時を止めることも、空間を歪めることも、命をよみがえらせることも出来る、まさに最強の杖だ。
世の魔術師たちは、私を心から欲した。
手に入れれば最強を確約され、天をも穿つ雷撃でも大地を覆う氷塊であっても召喚できる。
そんな最強の杖たる私には、一つの秘密がある。
杖は、確かに分類上は『物』である。
神木で造られ、分類上は有機物に属するだけのモノである。
しかし、一つだけ誰も知らぬ秘密があった。
私には、『意志』があったのである。
最強の杖ディスティニーレイン。
私はビジネスライクである。
主人の命令には絶対服従をモットーにしている。
命じられれば、どんな魔法でも使う。たとえそれがどうしようもない低レベルなものであっても。
ある時は、金持ちの飾りの道具としてショーウインドウで飾られたこともあった。
そして金持ちが死ぬまでの間、ずっと飾り続けられた。
流石に私もヒマになった。
ショーウィンドウの中にいる間、ずっと一人でしりとりをし続けた。
そしていつしかプロ級のボキャブラリーを手に入れた頃に、その主人(金持ち)は死んだ。
その次の主人は、名も無き商人だった。
死んだ金持ちの財産をくすねたその男は、私の価値を理解していなかった。
ある時私を手に持った商人は、まさかそれが神級の杖とも知らずに杖を振って遊んでいた。
そして私を適当に振り『俺の所に雷落ちてこーい』と遊んでいた彼の頭上に、私は本当に雷を落とした。
そして男は稲妻に裂かれて死んだ。
主人を失った私は、その後もいろいろな人間の元を訪れることになったのだが、話し始めればキリがない。
ということで次は、私がオークションにかけられた時の話をしよう。
実に退屈で滑稽な話だが、付き合ってもらえると嬉しい。
ではまた次の機会にお会いしよう。アディオス。