プロローグ
そして世界は、赤錆びた鉄に覆われた。
いつか見た、碧の大地、蒼い空はとうの昔に失われている。
そこは機械が支配する地。機械を造った当の人間は、その機械に脅えて過ごす日々。
事の成り行きというものを話すと、この世界で昔、戦争があった。
人は皆、己の欲望のために無意味な戦いを繰り返し、そしてその武器となったのが「機械」である。
早い話が、人間は機械同士で戦争を始めた。そして、愚かにも機械の制御が不可能となり、今や機械と暮らす事はできなくなっているのである。
大量に造られた兵器には『目の前の人間を殺せ』というインプットがなされているのだから。
――すべての国が崩れ、戦争が終わった今。機械はただの人殺しでしかない。
機械は世を狂わせ、街を焼き、人を殺す。兵器だが、使うのは人間ではなく、自動。
勝手に動き、止まらない。全て自動なので、ミスもない。
機械とは元々役立つことを前提に作り出された。けれど今ではどうだ。機械の用途が逆転している。
残った人間は、これを片づけなければいけない。
なにしろ、機械は無差別に人を殺すのだ。そんな危険なものを放っておくわけにはいかない。
そこで結成されたのが、機械抹消である。
機械抹消は、その名の通り、機械を破壊してまわる団体である。
世界にはびこる、間違った記憶を与えられた機械。それを根こそぎ潰してまわるのだ。
そうして、機械達は少しずつ減ってきてはいる。
しかしそれは、ほんの少し。世界中の機械の数を考えてみたら、人々の気は滅入るばかり。
不安とは、濃厚さを幾重にも増していくものである。土台無理な注文ではあるが悩む人々はこればかりつぶやく。
――いつ、地上に平和は訪れるのだろうか。