パーティを追放されて餞別にもらった『呪われた盾』を装備したら女の子になった件
「パーティから抜けてほしい、だと……?」
「ああ、君のようなどんくさい奴は不要だ」
――それが、ルアンに対するパーティメンバー達の答えだった。
回復魔法を扱える男は、滅多にいない。
ルアンはそんな稀少な存在であった。体力的にも自信のあったルアンは、盾役も兼ねる回復薬として重宝されていた――始めの頃は。
パーティが成長してくると、ルアンの回復力に不満が出始めてしまったのだ。
回復魔法が使えると言っても、才能があるわけではない。
ルアンは回復もできる盾役という優秀な存在から、だんだんと中途半端な存在となってしまっていたのだ。
盾役も、他の者で代用できるし、それなら回復に優れた者を連れて行った方がいい――ルアンも理解していたことだ。
だからこそ、ルアンは強く出ることもできずにパーティを抜けることになる。
もちろん、不平不満がないわけではない。だが、それを言ったところで、ルアンの実力が伴わないことは事実だった。
「……はあ」
ため息をつきながら、ルアンは帰路につく。
餞別代りだと渡されたのは、ダンジョンで拾った『盾』であった。
回復役と盾役を兼任するルアンにとっては本来嬉しい分け前であるはずだが――先ほどこの盾を鑑定してもらい、とある事実を知ってしまう。
……この盾は呪われているのだ。
「呪いの盾、かぁ……」
禍々しく黒い盾を横目に、ルアンは考える。
《冒険者》になってからすでに五年――だが、未だにDランクという位置から成長できていない。
ようやく落ち着けるパーティに入れたかと思ったが、正直言ってしまえば自分の能力に限界を感じているのも事実だった。
せめて回復役か盾役のどちらかに特化できれば……そう思っても、ルアンには才能がない。
もちろん、強くなる努力はした。
だが、剣技は凡人以下で、盾のスキルは平凡なものばかり。
回復魔法もどれだけ頑張っても、女性の回復役には遠く及ばない。……男は、回復役には向いていないのかもしれない。
「女だったら……何て言うのも変な話だな」
自嘲気味にルアンは笑う。
自分が女の子になったからと言って、回復魔法が強くなるとも限らない。
それに、なれるわけもないしなりたいとも思わない。
「……どうせ未来もないのなら、ヤケクソだ」
半ば自暴自棄になりつつあったルアンは、自らの意思で選別代わりに受け取った盾を装備する。
呪われた装備は、運が良ければ呪いの効果が弱いままに強くなれる可能性もある。
だが、その呪いを解除するためには莫大なお金がかかる――だから、自ら好んで装備する者は少ない。
むしろ、呪いによって回復魔法が使えなくなるような事態だってある……けれど、ルアンはそこまで考えることはなかった。
半ば衝動的に盾を装備する。
装備した瞬間から、ルアンにも呪いの効果が付与されるはずだ。
「……何か、身体が熱いな……」
少し嫌な予感がする。
すぐに呪いの効果だと理解して、我に返ったルアンは盾を外した。
だが――一度装備してしまった時点で呪いの効果はルアンに影響を及ぼしている。
ルアンの身体の熱さは全身をめぐると、やがて何事もなかったかのようにクールダウンしていった。
今更後悔しても遅いが、ルアンの身体に呪いの影響が回ったのだろう。
「……特に変化は、なさそうだが――ん?」
早々に、ルアンはその変化を理解した。
声がやけに高い――まるで、子供の頃に戻ったようだ。
まさかと思い、ルアンは洗面所へと向かう。
……呪いの効果で子供になってしまう。それは、あり得ない話ではなかった。
場合によっては赤ん坊にまで戻ってしまうなんていう話まで聞いたこともある。
恐る恐る鏡の前に立ったルアンは、その姿を見て目を見開く。
「は……はああああっ!? こ、これって……!」
子供になる方が、まだマシだったのかもしれない。
あるいは、先ほどルアンが考えてしまったからなのか――まさに、一つのあり得ないことが現実となってしまった。
「もしかして、『女の子』になってる、のか……?」
髪は伸びて、顔立ちも可愛らしい少女そのもの。
胸は少しだけ膨らんで、股間にあるべき感覚がない――まさに、女の子そのものである。
呪われた装備の効果で、ルアンは女の子になってしまったのだ。
「こんなことって、あるのか……」
呆然と立ち尽くすほかないルアン――だが、これこそがルアンの冒険者としての、覚醒の日であった。
呪われた盾の名は《ガラディル》。絶対的な守護の結界を張ることができ、少女となったルアンの回復魔法は、普通の回復魔法よりも圧倒的に高い能力に目覚める。
少女となってようやく、最強の回復と盾の両刀冒険者となったのだ。
最近TSネタ考えてないなと思ったので追放物と合わせて考えてみました。
このあとの展開は呪いの盾で完璧な壁役と圧倒的な回復魔法で需要がMAXになった主人公が最強パーティに誘われるまでソロでお試しにダンジョンに籠ったりする感じになる気がします。




