プロローグのプロローグ
とあるボウリング場の、とあるレーンの前にて。
「どうもみなさん初めましてっ!私はキラッキラでピッチピチの高校三年生!空森明日香です!」
突然下から勢いよく登場して派手にポーズを決めた明日香は、そのまま一人語りを続ける。
「これから本作品のプロローグが始まりますがぁ~、………なんとっ!一番最初に登場しておいて、私は本作品の主人公ではあ・り・ま・せーーーん!そう!脇役なのです!バイプレーヤーなのです!!助演女優賞なのです!!!………じゃあなんでここに登場してるんだって?」
………。
「知るかぁあああっボケぇえぇっ!私のほうが教えてほしいよおおおっ!なんで私が主人公じゃないんだよおおおおっ!絶ぇっ対ぃっ私を主人公にしたほうが絶っ………………(一息入れてから)………………対に面白い作品になるって決まってるのにいいいいぃ!もうっ!な・ん・で・な・ん・だ・よぅ!な・ん・で・な・ん・で・よぅ!うぎゃあああああああああああああああああ!!ぷんすか」
レーン前のアプローチで、母親に欲しい物を買ってもらえず駄々をこねる幼児のようにジタバタと暴れ回る明日香。まるで漫画のワンシーンのようにホコリが舞い上がり、飛び跳ねるボウリングボールやらボウリングピンやらは普通に危ない。それでも明日香のスカートの中のその先が一切見えないのは今世紀最大の謎である。
ちなみに「ぷんすか」とは、あまりの怒りに頭から湯気が噴き出す明日香………の脳内イメージに最適なオノマトペである。
「………。ま、今さら騒いでもどうにもならないしぃ、そもそもボウリングはそんなに詳しくないしぃ、こういう役回りがあるだけありがたいと思ってぇ、誠心誠意ぃ、意気揚々ぅ、全身全霊でぇ、頑張っていかせていただきたいとぉぅ、思いますよぅ」
暴れ疲れてアプローチ上で横になったまま、すねた顔で床に転がったボールを指でいじくり回しながら愚痴るように語っていた。
そんなことをしているとどこからか明日香に対して指示があるようで、視線をそちらに移す。
「ううん?ええっ?もう本編に行けって?うっさいなぁ~………うぎゃっ?!」
どこかからボウリングピンが飛んできて明日香の臀部にクリーンヒットした。
「いったーい!もうわかったわよ!じゃあぁ、しょうがないんで本編いきますよぉぅ」
アプローチ上でやる気なく横になったままの明日香が臀部を手で擦りながら、こちらへ顔を向けた。
「それではプロローグぅうぅ~………………………どう」ぞ、を言う前に場面はプロローグへ。