表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/72

9-拓哉 ピンチ、撮影続行なるか?

9-拓哉 ピンチ、撮影続行なるか?


二人はお互いに過去のことを少ずつ喋りだした。

ルミは家庭が複雑で、かなり早く自立してしまい、一人暮らしをしていた。

 しかし、決してお金に困るようなことはなかった。

親からかなりの仕送りがあったからだ。

彼女の家は、一流会社の一人娘。


 彼女の家の使用人の依頼で、何度も何度も説得されたが、拒み続けていた。

彼女自身、決して非行に走るようなことはなかったが、家に寄り付かなかった。

彼女は、自分自身で真剣に考えて、良いこと悪いことはきちんと判断出来ていた。

 拓哉と会ったのは、家族の関係者、

いわゆる使用人にしつこく家に帰るように迫られていた。

そのことが嫌になり、少しヤケを起こしていた所だった。


{ルミは、何かを企み、眼がぎらぎらと輝いている事に、拓哉は気づいていない}


 そして軽い気持ちで拓哉の勧誘に賛同した。

拓哉も自分がカメラマンで、ある程度売れてきた事が、

ルミをうまく勧誘することが出来たと、偶然に感謝した。

そして、その事が決して間違っていなかった事を実感

ルミにその事を話した。なぜかルミはうわのそら!

何かの悪戯でめぐり合ったのか、何か目に見えない何かが・・・・、

拓哉の心の中で思っているようだ。


{ルミの企みは、彼女の心の中でますます拡大していく}


まんざら、ルミも心の中に無かったわけではない、自信がある。

 拓哉は、そんな事をある程度想像しつつ、

拓哉の腕時計は、どんどん進んでいく。


 そして次の日を刻んだその時・・・・


ルミが、突然拓哉に、抱きついて来た。本気モード

ルミに拓哉は押しつぶされるように、後ろに倒された。

ルミが、覆いかぶさるように拓哉の唇を奪った。本気で

さすがの拓哉も、もう抵抗するすべを失った。

今度は、拓哉のほうからルミにキスをする。

・・・・・静かに山のトキは過ぎて行く ゆっくりと・・・・

 

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎


 

 ルミが、拓哉の膝枕で、かすかに寝息を立てたのを見計らって、

拓哉はルミの寝ている部屋を後にした。

 

 拓哉はマスターに前もって借りていた毛布を被り、

食堂の近くの椅子を並べて眠入った。

夜明けまでのほんの僅かな時間を、


 それは突然の事だった。

2台の高級車が連ねて、車山の駐車場にやって来た。

中から出て来たのは、ロマンスグレーの初老の紳士、

40代半ばのいかにも切れ者、やり手といった感じの男、

そして、二人の中年紳士がその後に、

ひときわハイセンスな、30歳前後のキャリアウーマンが、

このコロンボックルヒュッテにやって来た。


扉をあけていきなり、誰に言うでもなく、大きな声で!

「ここに北沢ルミという名前の人間がいるはずだ。」

「ここに呼んでもらいたい。」


「失礼ですけれど、どなた様ですか?」

ロッジの若い女性が驚きの眼で、聞き返す。

「私は北沢ルミの父だ。」

ロッジの中は緊張モード あわててその女性は奥に走る!


暫らく気まずい雰囲気が、当たり一面に広がった。


その声を聞いて、北沢ルミは慌ててやって来た。

「パパ、何いきなり・・・」

「おまえは何をやっているのか、分かっているのか?」

「何で・・・、写真を撮っているだけ!」

「フランスのメーカーから依頼を受けて、写真を撮っているんだろう?」

「ある人間から、情報が私にもたらされた。」

「それがなぜ、いけないの?」

「君はそのメーカーが、どこのメーカーだか知っているのか」

「・・・・」

「パパのやっている仕事、何だか知っているだろー?」

「そんなこと知らないわよ!!」


父は呆れた顔で

「私の会社でも、衣料品を扱っている事は知っているだろう」

「君は我が社の、ライバル会社のモデルになろうとしているのだ。」

 「・・・・!!」

「そんなことが、まかり通ると思っているのか?」

「社長の娘が、ライバル会社のモデルなんて・・・・」

「私の立場はどうなると思う。」

「こんなこと、普通に考えればわかることだろう?」

「今さら何言っているのよ・・・」

「パパは私のこと、好きにしなさいといったじゃない?」

しばらく無言・・・


そこへ拓哉が二人の話の中に入った。

「失礼します。」

「私が今回、彼女の撮影をやっている、木村拓哉と申します」

「君は、この娘が、私の娘だということを知っていたのか?」

「全然知りませんでした。」

「ただ、どこかの社長令嬢あたりぐらいには思っていましたが?」

「あなたがお父さんだという事を、知っていたのなら、

私は彼女を撮影に使いませんでした。」

・・・・・・

そこへ40歳代半ばの男が割って入った。

「早くこの撮影をやめてくれたまえ!」

「今までのかかった費用は、わが社が全額お支払いする。」

「ちょっと待ってください、そうは行きません。」


 今度はそこへルミが割って話しに入って来た!

「私はこの撮影絶対続けるわ!!」

「続けさせるわけにはいかない!」

「さあルミ、我々と一緒に帰るんだ。」

「いや!・・・行かないわ」

「私はあなたの言うことなんか、聞かないわ。絶対に」

と、父親に向って、キツイ調子で、吐き捨てるように、もう一度言った。

「絶対あなたの言う事なんか、聞かないわ」

「いつも私の、反対ばかりするのだから!」


「彼女はもう、ハタチすぎているのですから・・・。」

「彼女の意見を無視するわけにはいかないと思います。」

と二人の紳士に向って、静かな声で拓哉は落ち着いて話した。

 

そこへ、この場所には不向きな、六本木ビルの40階あたりの、

オフィスから飛び出したような、いかにも仕事が出来ると言った、

キャリアウーマンが急に口をはさんできた。


「社長どうでしょう、この企画うちの製品で続けるというのは・・・」

「ちょうど同じような企画を、私どもが今手掛けております。」

重役と思われる、もう一人の男が腕組みをして考え込んだ。

「それも悪くないな・・・・」

「バカ言わないで下さい。そんなこと出来ません。」

拓哉は激しく、大きな声で叫んだ。

「それは絶対、私は認めるわけにはいきません。」

 「一度契約を交わした相手に対して失礼です。」

「そして、絶対やってはいけないことです」


しばらく押し問答が続き、解決を見ないまま、人が集まってきたので、

「とにかく、撮影は直ぐに中止してくれ!」

と言い残して、社長以下3名はその場を後にした。


オフィスビルの、集団が出て行ったところに、昨日の撮影クルーが戻ってきた。

「どうしたんだ・・・、あの連中は何だ!」

「ルミの父親とその会社の連中・・・」

「それで何だって?」

「実は、ルミの父親はアパレル関係の社長だった」

「何だって・・・」

「拓哉、そのことを知っていたのか?」

「知りませんでした」

「知っていたらやりませんよ」

「で、これからどうする」

「私はやりたいと思っています。」

しかし君、このまま撮影続けた所で、その先 行き詰まるじゃないか?


またしばらくの沈黙が続き、突然、ルミが叫んだ。

「気にしないで撮影続けてください」

「私が父にちゃんと話します」「必ず説得します。」

「もし、許してくれなければ、私あの家を出ます。」

「父と縁を切ります。」

「そういう訳にもいかないだろう・・・」

また無言が続いた・・・・


 その様子を静観していた、広告代理店のスタッフが

「とにかく撮影は一度中止にしよう。」

「我々は拓哉・・・、お前の顔に免じて今日、1日ここで待機する。」

「いいか拓哉、お前の顔に免じてだ。」

「それまでに結論が出なければ、我々は帰る」

「これが我々の最大の譲歩だ」


「大変申し訳ない」

「至急なんとか手を打つ」

拓哉のその言葉を聞き、納得した形で撮影クルーは、

車山の駐車場のふもとに帰っていった。


  果たして今日中に、どのような解決策があるというのか、まるっきり見当がつかない。

拓哉は途方に暮れていた。


Cap-9 ファインダー越しに恋して  Fin

          

See you later     Nozomi Asami





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ