27 ルミ 過去の悲しい思い出と拓哉への思いが蘇る・・・・
27 ルミ 過去の悲しい思い出と拓哉への思いが蘇る・・・・
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拓哉はルミの分のコーヒーも持って、談話室の椅子に移動した。
ルミはぐっと距離を近づけて、隣に・・・・
膝がくっ付くぐらいに近いに座って・・・・
「シャローンに何か変わった事あるの?」
「・・・・・・・!」
「来る時・・・・医者と話していたでしょ!」
「難しそうな顔して・・・・・・」
「そんな事は・・・・無いさ!」
拓哉の言葉が重い!
シャローンの身に、何か相当な事が起こっているに違いない!
ルミがさらに突っ込んで聞く!
「嘘・・・!」
「・・・・・・・」
「ねぇ・・・話して!」
「・・・・そう・・あの時の沙霧さんの様に・・・・」
「プライバシーに関する事! シャローンの?」
「・・・・・だから・・・違うって・・・」
ルミは、少し悲しい目をして・・・・
そのまま黙り込んだと思ったら、目から大粒の涙が溢れて・・・
談話室のフロアーに雫となって落ちる!
ポトリ・・・・ポトリと2滴・・・3滴と・・・・・
そして,その涙を拭こうとせずに、続けた!
「そう・・・私には話してくれないの!」
「他人だから・・・」
そのまま体を起こし飛び出して行った。
「・・・・・・・待てよ!」
「待て・・・・ルミ!」
談話室を飛び出したルミは、屋上に駆け上がった!
その後を追う拓哉・・・・追う様にして走り出す!
そして、追いついてルミを後ろから抱きしめる!
ルミはその手を払おうと肩を揺する。
その力は本気で振り払うつもりは無さそうだ!
拓哉,今まで以上にきつく抱きしめる!
そして、ルミを振り返らせて・・・・・・
向い合ってだき寄せる。
それを待っていたかの様に、ルミは拓哉に身を寄せる。
自然とルミの唇が、拓哉の唇を覆う!
我慢していたルミの気持ちが爆発する!
あの時のように・・・・
シャローンは良い人、そして拓哉とお似合い!
そう決めて、ルミはずっと耐えて、耐えて・・・・
我慢して来た。
それが二人にとって,拓哉にとって良い事だと信じて・・・・
でも・・・それはルミの本心では無い!
好きなのだ! 心から愛しているのだ、拓哉を!
もう・・・離したくない,拓哉を!
抱き合い、キスをしたまま時が流れる!
夜空には上弦の月が、二人を照らす!
その月に照らされて,二人の姿が・・・・
愛する恋人そのもの・・・・
誰が見てもそう思うだろう・・・
それは、待ち続けた愛を・・・
やっと見つけた深い愛を愛惜しむ様に・・・
拓哉も・・・何時かこんな風になる事を・・・・
予感していたのかもしれない!
揺れ動く拓哉の心・・・・
それは、月に雲がかかり明るくなったり暗くなったり・・・
拓哉の心は,シャローンを思う気持ちと,ルミを思う気持ちが、
月にかかる雲のように揺れ動いている。
ルミを抱きしめながら・・・ルミにキスをしながらも、
その思いが交互に揺れ動く!
いいえ,今はルミを抱いているのだから、
ルミの気持ちの方が大きいに違いない。
拓哉もあの時の悲惨な情景が思い起こされて来ている。
”いや、俺は、二人の心を・・・もてあそんだのかもしれない!?”
”写真のために俺は、二人の心を踏みにじった!”
”拓哉は踏みにじってなんか、いないよ!”
”悪いのは、ルミよ、拓哉の心わかってあげられないで・・・!”
”もうよそう、二人が攻めてもきっと沙霧喜ばないよ!”
”沙霧が自分の体を賭けてでも、ルミを助けに行ったの、わかる気がする!”
あの嵐の中、拓哉は両手を広げ、ルミを優しく包み込むように抱き、
ルミの髪をゆっくり、ゆっくりと撫でるように・・・、
何度も、まるで幼い子供をあやすように、ずっとそうしていた。
今も・・・・そうしている・・・・
シャローンは、何処となく沙霧を髣髴させる。
と、言うよりまるで髪の毛を栗色にしたらまるで、・・・・・。
まるで、そこに沙霧がいるような錯覚にとらわれてしまった。
髪こそ違うが、沙霧に瓜二つ、体の震えが止まらない。
「ねぇ・・・・拓哉!?」
「・・・・なんだ・・・・い!」
「あの時・・・・そう、沙霧さんの追悼コンサートの時!」
「・・・・・・」
「あの時,拓哉聞いていてくれたの?」
「・・・・・・あぁ!」
「何処で・・・・」
そんな話の中で・・・・ルミは・・・・
ルミの眼に・・・・シャローンの姿を捉えてしまった!
「・・・・シャローン!」
「えっ!」
拓哉は振り返る!
そこには・・・・・
いつの間にか、シャローンがその抱き合う二人を、じっと見ていた。
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