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5-無邪気なルミ に 拓哉は

5-無邪気なルミ に 拓哉は


クライアントの撮影場所の希望は、軽井沢が第一候補だったが、

拓哉の一言でまず、霧ヶ峰で行うことになった。

 その後は軽井沢、軽井沢でも旧軽井沢。

撮影場所の、霧ヶ峰は広々とした美しい高原。

 用意された衣装はおよそ、50種類。


その衣装を見て、拓哉は第一候補に霧ヶ峰を指定した。

拓哉の信州の知識は完璧だ。

 「おそらく、そこでマッチする。 確実に!」

 と、クライアントに断言した。

他のクルーも、拓哉の言葉を信じて納得し、OKサインを出した。

 それが今現在、中央高速を走っているわけ・・・・だ!


 撮影クルーは、諏訪インターでおりR299号を走る。

そして、150号を過ぎ、ビーナスラインを通って、霧ヶ峰に到着した。

一行は、駐車場にたどり着いて、歓声をあげた。


「さすが、拓哉一押しの場所だね!」

どこからとも無く、賛同の声が聞こえてくる。

 美しい大自然に囲まれ、碧、碧空、どこまでも続く緑の草原、

空の青さと大地の緑が融合する、ロマンチックスペース。


最高の場所。 ゆっくり、のんびりと、・・・・

心のゆとりが出来るような、気持ちにさせてくれる。

「素敵なとこね!」

「こんな所・・、あったんだ!」

「空気がおいしいわ!」

彼女の独り言が続く。


のんびりと楽しく散歩したり、寝転んだり、

つい、みんなで走り出したくなるようなスペース! 空間!

 そんな場所として、拓哉が霧ヶ峰高原を選択した。


 拓哉・・・まずは! 彼女をリフトに乗せることにした!

 「うわー、リフト、素敵・・・」

「楽しそう・・・・!?」

「大自然の中での観覧車だわ!」

「わくわくするー!!」

「ねえ、拓哉といっしょに乗るんでしょー!?」


相変わらず、一人ではしゃいでいる。

その彼女を、半ば強制的にスタッフ達は、ワンボックスカーで、

彼女の衣装替えを行った。

“軽快な服装で、黄色いパーカーを、

そして、オフホワイトのパンツルックで、”

“やや明るめのバーミリオンピンクのスニーカー 女の娘らしく、”

“エバーグリーンとカーマイン(レッド)のチェック柄のスカーフを彼女の首に、“

“手には小さなポーチ、”

“今はやりの薄型のデジカメを首に掛けて、”

てきぱきと、指示が次々と出される。


「さあ・・・ルミちゃん、リフトに乗って!」

リフトに飛び乗った彼女は、はしゃぎまくる。

 本当に楽しそうだ。

拓哉は、リフトに乗っているところを、隣でシャッターを切る。


「少し、撮りづらいなぁ・・」

「うれしい・・・」

会話はまるで、かみ合わない!

ルミの心はすでに山頂へ

はしゃぐ顔に、こぼれるような笑顔!

“何故か、夢見る乙女心”

“碧い空、白い雲、” “紫外線ピカピカのまぶしい太陽” 

“あたり一面、緑でしきつめられた、絨毯!”


緩やかな勾配の緑、ところどころにピンク、ホワイト、バイオレット、

イエロー等の花が、あたり一面に咲き誇っている。

(ハクサンフウロウ、カラマツソウ、ノアザミ、ニッコウキスゲ、エーデルワイス等)

東京からやってきて、すべてを忘れさせてくれるようなロケーション。

 その感覚は、ルミだけでなく! だれもが、わくわくさせられてしまう。


きっと君の心が解放される、

みんな気持ちが大きくなる、

おおらかな雰囲気になれる、

体の隅々にオゾンの栄養を、

大きく背伸びで骨に栄養を、


 女の娘はきっと、そう思うに違いない。 

いや、女の娘だけではない、生物全てに、・・・だ!

と、拓哉は確信している。

 それが、この場所での大きな目的だ!

うまーい、甘ぁーい、

うまい、甘い 空気が、オゾンが・・・

何処かの国で缶の中に、その場所の空気を缶詰にして、売っている国があった。

この場所の空気も缶詰にして持ち帰りたい。


突然冷たい風が吹いて来て、雲に覆われた。

みるみるうちに、あたり一面が灰色の世界になってしまった。

あーという間に、天候が変わり、大粒の雨が降り出してきた。

みんなを、あわてさせてしまう山の天候!


でも・・・・ 拓哉は気にせずに、彼女の撮影をし続ける。

雨が降ったからと言って、山の季節で驚いていては仕事にならない。

「すぐにやむさ!・・・・あの空を見れば分かる!」


でも・・・・彼女は微笑んで、リフトから降りて、

少し歩き出す。

さすがに、彼女は根性が座っていると、つくづく思った。

スタッフ達は雨が降って・・・・・、あわてているが、

ルミは動じる様子など微塵も見せない。


 デコボコした山道をゆっくりと指示された通りに歩いていく。

2番目のリフトに向かう。

 狭い山道の両サイドで、たくさんの花たちが、見て!と

咲き誇る!

 ルミの目が・・・・瞳が・・・・輝く!

まるで・・・別人のよう・・・・・

都会の空気に汚れたルミの体全体を覆い・・・・洗うように、

オゾンいっぱいの空気が洗浄する!


2番目のリフトは勾配がかなりきつい。

ここでは、リフトがフードで隠されてしまった。

 撮影は難しい!

仕方なく、そのフードの中に、二人はなんとか一緒に入り、

そこでも撮影を行う。

 すぐに拓哉はファインダーから目を離してしまった。

撮影条件が悪すぎる。


どうも拓哉は、気まずそうだ、近すぎる、囲まれた!

周りのスタッフもその事を察してか無言で・・・・・、

後ろに乗っている一行が、

「しょうがないよ!」と言ったジェスチャーを送る。


しかし、いきなり拓哉は、

“バシャバシャとシャッターを切り始めた。” 

“ストロボが、ポッ、ポッ、と光り続ける” 

撮れる写真のフォーカスは、ほとんど顔だけになってしまう!

ストロボの一直線の強烈な光がルミを平面に・・・

単純に・・・・フラットな画像をレンズに送り、

0101の羅列を単純にしてしまう!

二人のゴンドラの中で、拓哉は、はなおもシャッターを切り続ける。


ゴンドラが終点に着いた。

拓哉が、ルミの手を取りエスコートする。

 「ありがとう!」 

いまそれだけ言うのが精一杯のルミ

泣いている・・・・感激して・・・・自然に!

この大自然に!!

 そして・・・・拓哉にも!


そう、そのとき、ルミは拓哉に手をつかまれ 

“ルミの心は、何処かへ飛んで行ってしまった”

“今までの人生で、こんなこと初めて!” 


 男と手を繋ぐことなど、決して初めてではない。

キスもそれなりに・・・・、それ以上のことも当然経験している。

“でも、今の感覚は何なのだ!!”  

“これは、ひょっとして・・・” 

“恋なのかも・・・”

“アッ、どこかで聞いたせりふ!

いや違う 歌詞の一部か タイトルだろう。”


「なに、ボーと してる!!」

急に現実にもどされ、あたふたしている。

 “拓哉、先ほどの車の中の仕返しといった感じで、今度は俺が優位に立つぞ!!“

「ごめんなさい」 それが精一杯・・・

今、ルミは中学生が初恋で “単語” しか言えない状態だ。


拓哉に手を惹かれながら、山頂に向かって、

ごつごつした大小の火山岩の間を、引っ張られるように登っていく。

 完全に女の子状態!!


追い討ちを掛けられるように、拓哉から。

「ボーっとしていると転んで、麓まで、真っ逆さまだぞ!」

「はい、御免なさい。」

ちぐはぐな返事、それもがんばって答えた結果だ

やっとのことで頂上にたどり着いた。


するといきなりルミが

「ワー・・、ステキ・・・、 最高・・・・」

あたり一面、360度のパノラマ、さえぎるものは何も無い。

 とんがった2000メートル以上の山々の、

はるか彼方の町の風景が、雲のフレアーで下界を遮断!

ルミの目が輝き、目に星が入った感じで。

今度ははしゃぐ様に、

「すごい、すごすぎる!」

先ほどの、どきどき感は何処へやら・・・、

 

いつの間にか、拓哉とがっちりと結ばれていた手は、離れていた。

どちらが離したのかは、今となっては問題外なのだろう。

 “拓哉の魔力もこの大自然にはかなわないのだろう?”

ねえ、すごい、すごいとルミは、平坦の少ない岩場を、小走りに走り回る。

 すると、呼吸が苦しくなり、いきなりしゃがみ込んでしまった。


拓哉が近づいて!

「おばかさん だなー」

「・・・・・・」

「ここをどこだと思っている?」

「標高2000メートルの山の上だぞ」

「空気が薄くて、地上とはまるで違うぞ!」

 「そうか・・・」

「私ってバカだねー」

「学生時代、ハイキングとか山登りしたこと無いのか?」

 「うん・・・」少女の答えだ!


少し寂しそうに下を向いて答える。

「両親が、“そんな所、行かなくていいと”、一方的に断ってしまったみたい!」

「そのころの私、両親の言われるまま素直に生きて来たわ!」

「今では、それがいやになり、親から離れて暮らしているわ。」


後続からヘアメイク、アーチストやメイクさん衣装担当の人たちが、

やっと追いついてくる。

ここで、衣装を変えることにした。

車山の頂上付近でスタッフが集まって輪を作る。

その中で素早く行った。

その様子を見ている人達は、何事がおこったかと不思議そうに見ている。


当然、完全防備で外側から見えないようにする。

しかし、衣装替えはともかく、メイクや化粧直しは大変だ。

ルミは文句を言いたそうな感じだが、あえて我慢していた。

おそらく、この大自然が彼女を、おおらかな気持ちにしたのだろう。

衣装替えとメイクが終わり、拓哉は改めて、撮影を開始した。


「寒いかぁ・・」

「少しね!」

「早めに撮っちゃうね!」

「笑って・・・」

「・・・・・・」

「ダメだよ! 堅い、さっきと全然違う!」

「・・・・だって!」

「誰が、彼女を抱きしめてやれ!」

メイクの彼女がルミを抱きしめるようにした。


「いやぁ・・・・」

「女の子なんて嫌、拓哉が抱いて」

「ねえ、お願い」

周りの雰囲気を察して、拓哉はしょうがなく、ルミを抱くことにした。

「ずいぶんな・・・・、わがままだなぁー!」

そう言いながら、拓哉はルミを抱きしめた。

 「うわー、あったかい!」

 「拓哉、もっと強く抱いて」

「・・・・」

 「まだ寒い、寒いんだもん!!」

「わかったよ、こうか!?」

 「わあー、嬉しい」

「おい、何のつもりだい、お前を暖めるために抱いているんだぞ。」

 「わかってるもん・・・」


「そろそろ、暖かくなっただろう!」

そう言って、拓哉はルミから離れた。

 「ねえもう少し!」

「甘ったれるな!!」

 「ケチ! 拓哉のケチ!!」

そう言いながらも・・・・・

ルミはあきらめて、拓哉から離れた。


Cap-5 ファインダー越しに恋して  Fin

          

See you later     Nozomi Asami



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