12-Finder
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複数の人間から、思わぬ依頼と言うか、お願いと言うか嘆願が拓哉の下に来ている。
それは、容易に想像する事が出来た。
すなわち、うちに欲しい、モデル契約を願いたいと言う、プロダクション、
モデルクラブ、大手広告会社、化粧品メーカーだ。
その事は、ある程度予想できたが、これほどまでとは・・・・
実際、このイベント、IBC(インターナショナル・ビューテー・コレクション)
&ULC(上戸ルミ・コンサート)と名乗った、この一大イベントは相当な賑わいと、
世間を驚かせた。
そして、洋服、アクセサリー等の売り上げも史上空前お祭り騒ぎと、
話題を一気にさらった。
上戸ルミの歌は勿論だが、なんと言っても最大の話題は、
他のモデルを差し置いて、シャローンの美しさスタイルが、
それと妹のローラも話題をさらった。
とにかく、本当に拓哉が大忙し!
窓口の電話は鳴り止まない。
もう、拓哉受話器を投げ捨てたい雰囲気だ。
固定電話は、新しく雇った事務員に任せて拓哉その受話器から逃げたが、
何とどうして調べたのか拓哉の携帯にまでシャローンの話が・・・・
シャローン、ローラに対する反響に嬉しさと戸惑いが、
拓哉の心を騒がせる。
上戸ルミはもう既に歌手の風格が漂う。
あの時の試練、そう拓哉に振られた後、音楽に情熱を傾ける事に決め、
幾多の苦渋、悲しみ・・・・それが詩に、曲に反映したのだ。
そして、今年の紅白のオファーも内々で来たが、あっさり断った。
しかし、スポンサーである親、そしてその繊維・衣料メーカーは、
その決定に不満顔だ。
何せ絶好の宣伝チャンスなのだから・・・・
最近めっぽう多忙のルミ、拓哉と会えるチャンスが限られてしまった。
コンサートツアーの後、ゆっくり時間が取れたのも暫くぶりだ。
部屋には二人きり・・・・だ!
するとルミ、徐々に気持ちがあの時の状態に戻って来た。
拓哉の姿・・・・・声・・・・まなざしに・・・・
ルミは瞳から必死に念を送るような仕草を・・・・
しかし拓哉は視線を合わせない!
「拓哉さん・・・・段々遠くの方に行ってしまったみたい・・・!?」
甘えの混じった言葉だ。
本当に珍しい時間・・・・・ルミが見せる隙
・・・・隙だらけだ。
「ルミ・・・君こそ俺の手の届かない世界に行ってしまったよ!」
拓哉もぎこちない返し言葉だ。
「拓哉さん・・!・・・・!」
「何だ・・・・・」
「タクヤ・・・・・!!」
「だから何だよ・・・・!?」
「拓哉って・・・・言いたかっただけ・・・・!!」
「・・・・・・えっ!!」
何だかヤバイ雰囲気に・・・・・ルミは勿論今でも好きだ。
そして、拓哉も嫌いではない。
いや・・・、むしろ好きだ。
拓哉は、ルミのテレビから流れる歌声立ち姿に、
見とれる事もたびたびだ。
そんなルミが目の前で、拓哉の目の前にいる。
必死で平静を装う拓哉!
目線をそらす・・・拓哉!
「ねえ・・・拓哉!」
「・・・・・・・・!」
「お願い!・・・・拓哉!!」
「・・・!!・・・?」
「抱いて!!」
「・・・・抱きしめて!」
「昔みたいに、・・・・きゅっと・・・!」
「・・・・・!!」
「それだけで、いい! ギュッとしてくれるだけで良いの!!」
「お願い!」
ルミ一気にしゃべりだした。
機関銃のように言葉を・・・・
ライブステージで見せる、凛とした姿、イメージはまるで無い!
純な女の子が・・・そこにいる!
切なく訴える・・・・・ルミ
大歓声の中で観衆に手を振り、大人なルミの姿は何処へ
あれはあの中で自分を出して、音符が媒体で歌手上戸ルミを演じ、
ステージのカーテンと共に消えて無くなるのか・・・・
あのオーラ満点のルミの立ち姿は・・・・
ルミの必死の願いだ。
これまで我慢して、耐えて来たのがいっぺんに込み上げて、
涙が・・・ルミの・・・・瞳が・・・・
大きく可愛いい眼に涙が、
大粒の涙が零れ落ちる。
美しい涙だ。
拓哉やっと決心が付いた様で・・・・
拓哉黙って立ち上がり、ルミを立たせ抱擁する。
ルミ全体を包むように・・・
「うれしい・・・最高!」
「でも、もっときつく ギュッとして・・・・あの時みたいに!」
「・・・・!!」
もう覚悟を決めたように拓哉きつく抱きしめた。
暖かい、あの臭いだ・・・・優しい・・・とても品のある香りだ。
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