7-拓哉、日本の地へ
7-拓哉、日本の地へ
7-Finder
拓哉は、ルミの曲を何度も何度も聴いていた。
その曲の中には拓哉、当然知っている曲と知らない曲の、比率はほぼ半々だ。
ルミが、相当熱心に音楽に没頭しているのが解る。
その原因が自分にあるである事など、知る由も無いだろう。
拓哉自身、音楽に対してはそれ程自信がない。
1回じっくり聞いて、好きな曲そうでない曲ははっきり区別する。
早い話一度は聞くがその後の選択がはっきりしている。
しかし、ルミの曲は全部好きだ。
フィーリングが合うというか、心に触れられる、
そう・・・心に鋭く突き刺さる。
おそらく、拓哉の想像だが・・・・・
ルミは、あの高原での衝撃的な出会いに感激して、
その想いを曲に・・・・・、詩にぶつけている。
何せ、ルミは修学旅行等に行ったことが無かった。
あの車山の頂上まで、リフト、ケーブルこそ使ったが、
その後の徒歩で山頂までは自分の力で・・・、足で歩いた。
その事に、相当感動したルミの様子が今、拓哉の脳裏を過ぎる。
「拓哉・・・、素敵ね、彼女の唄!!」
決して、邪まな、気持ちで無い事は、
シャローンの眼を見れば良く解る。
「ああ、素晴らしい!」
「君も、そう思ってくれるか!」
「勿論よ!」
「ねえ、拓哉!」
シャローン最高の笑顔で・・・・
「なんだい?」
自愛のこもった優しい拓哉の眼で答えた。
「この作品の、P.V作成・・・日本に行くのでしょ?」
ちょっぴり、寂しげな瞳で拓哉の眼を見る。
「そうだな、おそらく、行かない訳には行かないだろう・・ね!?」
「拓哉、私も連れて行って・・くれる?」
相当の決心で、拓哉に甘く囁く。
「おい、何を言う、当たり前だろう・・・・」
「君で撮るのだから・・・!」
「エッ・・・・本当!?」
「わぁ・・・嬉しい、本当に私で・・・・」
まるで今回の撮影では、シャローンは外されるとでも思っていたのだろうか、
驚くほどの喜びで、思わず抱きつき、拓哉の頬から、首からありとあらゆる場所に、
キスの嵐・・・・・・
シャローン、全身で喜びを表した。
シャローン、相当拓哉に遠慮している様だ。
まるで昔の武士の妻のような控えめで、思慮深い気持ちが、
今、・・・・目の前にいるのがアメリカ人とは思えない、奥ゆかしさだ。
そんな、シャローンに拓哉は愛情の深さを感じ始めている。
拓哉はマークに一応スケジュールを話しでおいて、
日本と、ニュージーランドのチケットと、パスポートの手配を依頼した。
最近、拓哉は1人でアパートを借りて1人暮らしをしている。
そう何時までも、シャローンの家族の世話になっている訳には行かないだろう。
そして、拓哉、シャローンの家に行き祖母に、
シャローンの日本行きを認めてもらった。
しかし、そこで少し問題が生じた。
何と、妹のローラも行きたいと・・・・・
拓哉、躊躇せずにマークにその旨を伝えて、ローラも同行する事が決定した。
ローラ、大喜びで拓哉に抱きついて、キスをする。
照れる拓哉だった。
拓哉は、暫くぶりに日本の地を踏む事になった。
やはりそれなりの抵抗感もある。
機内では、拓哉を真ん中に両サイドをシャローン、ローラに挟まれて、
少しテレ気味の拓哉だった。
キャビンアテンダントは勿論、
成田空港に下り立った瞬間、過去が走馬灯のように蘇った。
良い事も、悪い事も・・・だ!
当然、出迎えなど期待していなかったが・・・・・、
何処で、どう情報を得たのか、
かつての拓哉の同僚が出迎えに来ていた。
「拓哉・・・、随分健康的になったな!」
黒く日に焼けた、健康的な拓哉を見て安心した様子だ。
「そう言う、お前、少しは上達したか?」
拓哉はいつも、仕事の事を第一に言う。
しかし、その言葉が一番拓哉らしくていいのだろう。
そして、みんなの注目は二人の女性だ。
勿論話には聞いているが、これ程までに、完成された美少女と、
美女の中間の二人に、大きなため息が出た。
噂以上のスーパー美女だ。
そして、誰かが・・・・狭霧さんに似ているという声も・・・
何処からとも無く・・・
その言葉を拓哉は聞き流した。
「先輩、長旅ごくろうでした!」
「何だよ、その言い方! まるで・・・・みたいじゃ、ねーか!?」
だがその言葉が、拓哉最高に嬉しかった様だ。
そして、あの時の想いで、記憶がフイルムが逆回転する様に蘇って来た。
やはり、悲しみが一番の様だ、狭霧を失った・・・
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