6-拓哉の揺れる想い
6-拓哉の揺れる想い
6-Finder
「昨夜はすまなかったな!」
「まあ君も、日本でいろいろあったのだろう!」
「!!!・・!!・・!!」
「・・・!!!・・・!!」
「で、今回のクライアントは?」
「実は、ある日本の新人だが、実力のあるシンガーだ!」
やはり、・・・・・な!
・・・・昨夜・・・・あいつが、持っていた資料が目に入った。
ほんの一瞬見えたが、あれは間違いなかった。
ルミだ!!
それも、俺が撮った作品の一部だ!
まあ覚悟は出来ているが・・・・・・・
「それで、どんなPVを?」
「それは、君に任せる!」
「全て・・・を・・・・だ!」
「全て?・・・・・?」
「そうだ、君に全て任せるよ!」
「それで・・・良いのか?」
「まあ、それ以上の事は・・・」
「君には必要・・・あるかね?」
「そうか、そう言う事か!」
「!!!・・・・!!・・・!!」
「わかった、やろう!」
そう言って、二人は立ち上がり握手を・・・・・、
ガッチリとお互い硬く握り締めた。拓哉と、ストーンは。
これは、明らかに全て仕組まれた契約?・・・
依頼は、ある筋からの・・・それとも、俺の思い過ごしか・・・・
その姿を、ずっと固唾を呑んで見守っていた、マークは大きな声で
「よし、これで・・・最高の作品が出来る!」
「よし、・・・・よし!」
そんなマークの顔を尻目にストーンへ話し掛ける。
「で、・・・・曲と、詩 デモテープは?」
「あぁ・・・そこに入っている!」
さりげなく、ストーンは少し厚めのホルダーを、拓哉にずらして渡す。
袋を開け、中身を覗き込む。やはり・・・・
「実は、この写真・・・・!?」
「ああ、分っている・・・君が撮ったのだろう・・・!」
「そうだ・・・当然その事を知って・・・?」
「そう言う事になるな! 正直!」
「一つだけ質問がある・・?」
「何だね・・・それは!?」
「何処かのコネで俺を・・・使うのか?」
「いや、それはない、そんな事で俺は“YES!”とは言わない!」
「そうか、それならいい!」
「それじゃー、このデモ持って行ってくれ!」
「わかった・・・、で、期日は?」
「1週間でプロモのプロットを決めてくれ!」
「その後は、どうなる?」
「そうだな・・・・、君にアシスタントは任せる!」
「場所も、・・・な!」
「了解だ!」
「期日は、確実に守ってもらいたい。」
「予算は、マークに相談してくれ!」
「ちなみに、日本を使いたいが・・・・・・」
「それと、ニュージーランドも・・・!」
「OK! 全て君に任す!」
そう言って、ストーンは事務所を後にした。
拓哉は、袋を取り出し、懐かしげにルミの笑う顔を見入る。
すると、曲が聞きたくなり、シャローンの待つ別室に移動した。
「拓哉! どうだった!?」
シャローンが心配そうに話しかける。
「ああ、話は決まった! よ!」
そんなけなげな瞳で拓哉を見つめるシャローンの仕草に、
堪らない位に、愛おしさを感じる拓哉。
「よかった! 拓哉心配したよ!」
「どうして!・・・・・・俺は、もう大人だぞ!」
「そうね、拓哉・・・昨夜の海で・・・・!」
「海で・・・ナンダ・・・うん?」
自然と・・・・・シャローンが拓哉の胸に飛び込み、
少し瞳が潤んでいるように見える。
「どうした! 俺がそんなに・・・心配か?」
「ううん、そんな事ないよ!」
当然、今回の仕事の内容を察しているシャローン、心配なのも十分に分る。
なにせ、プロモの内容は、ルミの音楽を引き立てる事、
おそらく拓哉の心が、自分から離れるのが、隙間が空くのが怖いのだろう。
そんな、シャローンの心をしっかり理解している拓哉。
シャローンの近づいてきたほのかに香る甘いコロンを感じながら、
美しく輝く髪を撫でてあげる。
そうかれこれ、10分以上も・・・・・
そして、落ち着いた頃、拓哉は備え付けのオーデオセットに、
ルミのデモテープをセットした。
二人でしんみりとした曲から始まるバラードを聴きながら、
シャローン眼に涙をためて、拓哉を見上げる。
すると、拓哉の瞳にも微かに光るものが・・・・・
そっと、聞き入る拓哉・・・・
シャローン、そんな拓哉の心にバリアーが張られたような感じが・・・・
言いたい、何か拓哉に・・・・・でもそれは・・・出来そうもない
あっ・・・拓哉が遠くなる・・・・拓哉の体が光の加減で見づらい・・・
特に、シャローンには・・・・・
どうなる・・・この雰囲気は・・・・・
- - Finder-TV-CF 6 Fin Finder-TV-CF - -




