4-翻弄される拓哉
4-翻弄される拓哉
それから3日後、拓哉は、北沢ルミの携帯に電話する。
「実はね・・・、急に仕事が入って・・・」
「その仕事に、君を使おうと思って・・・」
「・・・・えっ ・・・・」
「避暑地での、”着こなしファッション” をこれから大々的に・・・」
「売って行こうと言う、服装の写真を撮る事になった!!」
「フランスのある大手メーカーが、作品を試作してね」
「それを201X年の春夏で発表することになった!」
「・・・・・・」
「至急その作品で、モデル撮影してほしい」と、依頼が来た。
そして、北沢ルミにモデルの初仕事として、どうか?!」
「・・・と言うスポンサーがあってね・・・・。」
「大手の広告代理店を通して、ルミを名指しで来たんだ!」
「・・・・!!・・・」
「どうして君なのかって?」
「それはね、あの日のカメラテスト・・・・」
「・・・偶然君を見ていたらしいんだ!」
「場所は軽井沢、特に旧軽井沢」
「それと、広々とした高原みたいな場所で、撮影を行なってほしいという依頼だ!」
拓哉は、一方的に話し続ける。
ルミは、ただ聞き役で・・・・・
「オレ的には、信州の高原で撮りたいと思っている」
「君どうだろう」
ようやく、彼女が話しに入って・・・・・、
その第一声が!
「どうして・・・?」
「急に・・・」
「初めは都内で、って言ってた、・・じゃん・・・!」
「・・・・・・あぁ!」
「チャンスだ! “ルミ” これから君を迎えに行くよ!!」
一方的に決め付けてしまって今まさにOFFボタンを押す寸前・・・・
「えー・・・うそ、う・・・!!」
しばらく考えて、 およそ2.5秒の後
「わかったわ・・・」
「よし! 決まり、だ!」
「1週間から10日の予定でいてくれる?」
ルミは、あまり乗り気ではない・・・・、というより唖然・・・
そんなことお構いなく、拓哉は彼女の家に向かった。
電話で指定された場所へ、彼女の家に直にいけないらしい。
彼の運転する、スカイラインGTRで!!
出張する同行者は、拓哉のアシスタントの二宮、沢田、ヘヤーデザイナー、
メーキャップアーチスト、スタイリスト、そしてメーカーの広告担当のジミー佐伯。
広告担当のジミーは、かなり男前である。ハーフだ。
ハーフはメチャクチャ良い所と、その逆がある。
彼は前者の方だろう。
日本語は少し、たどたどしい。
しかし、かなりのきれ者ということは、少し会話しただけで分かる。
撮影スタッフ一行は、首都高から中央高速で向かった。
スタッフの車は2台、1台は機材、衣装等を積んでいる。
それに拓哉の車がスカイラインGTR。
拓哉の車の助手席には、もちろんルミが座っている。
ルミを車に乗せ、一言。
「そろそろ免許証、返してもらえる?」
ルミは、黙ってそれを返した。
その後、拓哉は殆ど車に集中。
ルミは、拓哉が迎えに来てくれた時とは、テンションがまるで別!
かなり乗ってきている。
拓哉の顔と雰囲気に完全に呑まれてしまった。
それなのに、拓哉はつれない!
ふつう・・・男は、隣に魅力的な女性がいると、
何とか気を引こうと、やたら多弁になる。
しかし、拓哉はハンドルに思いを込めて・・・、
GTRに語りかける様に。
恋人の肩をやさしく抱くように、ハンドルを握る、
ゆったりと、スマートに、楽しそうに運転している。
まるで、隣に女性がいるのを忘れてしまったかの様に!
ルミは、今までの男性と違うので、少し困惑気味。
“こんなに可愛い娘が隣にいるのに!”
昨夜から、衣装ダンスの中身をほとんど引っ張り出して、
ベッドに並べ、考え抜いた衣装。
彼女の抜群のプロポーションを強調するような、
素晴らしいラインが強調され、
しかも、上品と言うより華麗な服装。
そのセンスは、彼女の持って生まれた、天の才かもしれない。
彼女のふくよかで整った胸の谷間も、許される範囲の、ぎりぎりまで露出!
スカートもかなり短め!
ウエスト25センチの所で、3段になったフレアスカートで!
そして、たまに脚を組み替える時、ちらりと見える太もも!
“メチャクチャ・・・男心をくすぐる!” はず!!
しかし、決して俗っぽい、いやらしさは感じさせない。
“拓哉に、とても脚が綺麗だと褒められたこともあって、
スカート選びは厳選に行ったのに!!”
なのに・・・・!・・・!
全く私に、興味を示すような目線はくれない。
断っておくが、普通の男が普通の状態で、
ルミみたいな娘が隣に座っていれば、100%くどく!
いや、どこかに車を止めて、抱きしめてしまいたくなる事間違いなしの、
惚れ惚れする可愛さだ!
“なのに、拓哉は車の運転に夢中!”
“いったい、拓哉ったらどういうつもりなのかしら?”
ルミと拓哉の名誉のために断っておく。
今、拓哉は車の運転に夢中、とにかく、運転大好きなのだ。
車以外にジェットも、そうエアーパイロットのライセンスも取得している、
ついでに、他にもいくつかあるそうだ。
たまに鈴鹿で、現役レーサーと遊び半分で、レースを行う。
もちろん勝てるわけないが、いい勝負をする。
ある現役レーサーの友人が
「どうだ、お前・・・出てみないか?」と、
半分冗談のような、本当の様な事を言われた事もある。
だからといって、公道では決して無謀な運転はしない。
隣に座っているルミは、拓哉の運転する姿を食い入るように見て、
交わす言葉もない。
かなり、ルミの自尊心は傷ついている。
しかし、拓哉の本心は、違っていた。
十分魅力を感じている!
いや、十分すぎるくらい感じているのだ!
“彼女は被写体、いい作品を撮るのだ”
今の自分自身が怖くて、車に集中しているのが本心だ。
“惚れ惚れするようないい女”と、心底思っているのだ。
その為、無言になる、そのことを知ってかしらずか、
いや、知っていないのだろう?
暫らく二人は無言で、車の前方の流れる景色を見続けている。
ルミは、“相変わらず、拓哉は何も語りかけてくれない。”
“私ってそんなに魅力なのかな?”心の中で呟く。
ルミは、バックから携帯を取り出し
フロントパネルを確認
ジャックにコードを挿す。
車内にさわやかな感じの曲が流れる。
“俺の車だよな・・・・どうして?”
拓哉は、それでも、ただひたすら運転のみ。
魅惑的なルミに見つめられ、ただ隣にいるだけでいい!!
といった感じ。
あの時、そう拓哉のGTRに乗り込んだ時、見つめられて、
ルミの顔が急接近したとき・・・・・、
拓哉はもう、ルミにノックアウトだったのだ!
ルミは、痺れを切らして、拓哉の膝の上に乗っている、
ニコンD300を手に取る。
拓哉にファインダーを向ける。
「運転好きなんだ?」
「そうだね・・・」
「楽しそうに運転しているもん!」
「まるで、自分の分身みたいだね。」
「そう言ってくれると、嬉しいよ」
「やきもち・・・、やいてしまうわ・・!!」
「隣に、こんな美人がいるのに・・・・・・!?」
相変わらず無言
まるっきり一方通行、痺れを切らし、ルミは拓哉を撮る。
まるで、自分が今まで撮影されていたように。
車内には拓哉の聞き覚えの無い曲が流れる。
“いい感じの曲!?!”
拓哉はだまってルミのすることを気にもせず、ハンドルを握っている。
そこへ拓哉の携帯が鳴った。
するとすかさず、拓哉の携帯をルミが拓哉の胸ポケットから取り出して・・・・・
「はい拓哉です!」
相手はびっくりして・・・
ルミの、いきなりの急接近に、拓哉もドキッとして、一瞬ブレーキを踏みそうになる。
「君は・・・」
「はい、拓哉の代理です。要件は!」
「“どっかで休憩するかって”、 聞いてくれる?」
ルミは、拓哉の返事も聞かずに、
「そうだね、いいね!」
と、茶目っ気たっぷりに、拓哉の口調をまねて、勝手に答える。
拓哉は苦笑い!
ルミに ”君にまかすよ” と、目で合図した。
「・・・? で、どこにするって?」
“ウン どうなってん、だ?” ”受話器の向こうで ???“
「韮崎ぃ・・」と、ルミが叫んだ。
「なぜ・・・?」
「あそこのインター、好きー」
「どうして・・・」
「内緒」
「まあ、いいか・・・」
「では、韮崎」
「OK」
そして、一向は韮崎で休憩することになった。
一行は車から降りて、中に入って行き、コーヒーを注文した。
ルミの、なぜ韮崎なのかは、みんなは聞かず、コーヒーを飲んで韮崎を後にした
Cap-4 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami