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写真家木村拓哉は、アメリカで既に幾つかの仕事を開始していた。
始めは観光CMの写真をいくつか撮っていた。
モデルはもちろんシャローンだ。
しかし、それは決して拓哉の満足する仕事であるはずは無い。
沙霧を失った、途方も無い悲しみを少しずつでも、
薄めていく手段でしかない・・・・
だがそれにしても、沙霧とシャローンあまりにも似ている。
それは、時に酷であり・・・・それは、時に励みでもある・・・・
そう、言い切りたい・・・・・拓哉は!
拓哉がファインダー越しにシャローンを覗くと、ある時など
「おい、沙霧・・・目線・・こっち!」
「・・・!・・! えっ・・!?」
「あっ、しまった、またやった・・・・ごめん、ごめん!!」
「いいわよ、私・・狭霧さんで・・・!」
この様なこと事態が拓哉の本意ではない。
被写体を・・・・モデルの名前を間違えるなんて・・・
あり得ない! これまでの拓哉なら・・・・・
拓哉の心の葛藤を知るシャローン・・・・
茶目っ気たっぷりに振舞い、抜群のプロポーション、時に幼さ・・・・
時にはっとする色気、そんな素顔を何度も見せ付けられ・・・・
少しずつ拓哉のあの鋭い目線で、一瞬を刻み画像を・・・・・拓哉の世界に、
見る相手を引きずりこむテクニックが蘇って来ているようだ。
撮影場所は足で稼ぎ、何度も下見をして・・・・
そして、そこが人気の無い場所で、未被写体のロケーションを選んで撮影する。
しかし何時の間にか、多くの男性人が人何処からとも集まって、
そこは・・・・人だかりになる。
それは、最高のプロポーションのシャローンがにっこりと笑い、
優雅な動きをすると、フレッシュで、多くの若い男女の目を引く。
特に・・・・・男性の!!
「おい、あのモデル・・・誰?」
「あんな可愛い・・・・の見たこと・・・あるか!?」
「確かに・・・・・・スゲー、オンナだ!」
「おい、彼女・・・・まだ14、5じゃねーか?」
「いいや・・・・20歳近いんじゃ・・・・」
「何の撮影だ?」
「何処かで見た事あるような・・・・気がするけど・・・!?」
そんな話が、見学者たちから何処からとも無く湧き上がる。
そこは、拓哉抜け目が無い!
目立たぬように、そして自然にこの撮影の意味を、
CMが何だか解る様に上手に細工をする。
「そうか、ロスの海岸・・・暫く行ってないな!」
「あんな娘が泳いでいたら、俺も行こうかな!」
なんて言葉を誘導する巧みな演出を潜ます。
拓哉の、人の気持ちを上手くその気にさせる術だ!
今は、拓哉写真家木村拓哉として以外にもCF
TV-CF(テレビコマーシャル映像)に力を注いでいる。
拓哉の瞬間の感性を、テレビCMに流すCFが、
アメリカの人々に好感を得ている。
CDに挿入する映像や、アメリカの地方の企業からの以来が、
急増している。
スタッフは、今は現地調達だ!
日本に残した自分のスタッフも追々呼ぶつもりはあるつもりだが・・・・
「ハイ、シャローン、そこで・・・ゆっくり 歩く!」
「そう、笑って・・・いいよ!」
「そうだ・・・・・素晴らし・・・・」
「きれいだよ・・・・・・シャローン!!」
「・・・・・・・ん!」
「ストップ!」
「あのバック・・・・・・何とかならないのか?」
シャローンのはるか背景に、地元の族がオートバイを縦横無尽に、
走り回っているのが目に入った。
「おい、奴らに退くように話して来い!」
「はい・・!!」
現地で雇った撮影隊が、その場所に急ぎ足で駆け寄る。
だが素直に退こうとしそうも無い。
痺れを切らして拓哉が、小走りでそこに向かい
「おい、撮影中だ!」
「すまんが、退いてもらいたい!」
「ふざけんじゃ、ねえ! ここはおれたちのアゾビ場だ!」
「退いてくれ! 退け!」
拓哉段々声が荒く・・・
「お前らこそ、早く他の場所に行け!!」
「そうは、いかねえよ!」
相手の前に仁王立ち拓哉は、昔を思い出しかけて・・・
今にも一発触発・・・・・
「何だと、もう一度行ってみろ!」
「そうは、いかねえんだ!!」
拓哉、ぐっと堪えて・・・・・
「ここは、許可を取ってある!」
「そんなの関係ないぞ! ここは俺たちの土地だ!」
さらにヤバイ・・・・噴火寸前の場面だ!
すると、今までの事の成り行きを見ていた、地元の身長180センチ、
体重は75kgぐらいの、スマートな28歳位の一見軟そうな男が、
ゆっくりと前に出て・・・・・、
「おい、お前らさっさと帰れ!」
「何だ、貴様 ! やる気か!」
今度は相手を拓哉から、そのスマートな男に、敵意をむき出しにした。
すると突然、最後の奴が正面から右、左とパンチ、
それを軽くかわし、左手を持ち大きく後ろへ投げ飛ばした。
それは・・・・1つの瞬きの間に起こっていた!
圧倒的な実力差だ・・・・・・
その瞬時を見た親分格は、全てを悟った様だ!
奴らは何か捨て台詞を残して、何とかバイクに乗って逃げて行った。
そこへ、拓哉がそのスマートな男に近寄り、
「ありかとう! ごみ掃除を!」
「まあ、君なら手を出す事も無いと思ったが!」
「少し、暇をもてあましていたんでね!」
「そんな事無い、助かった! よ!」
素直に拓哉は礼を言う!
「ところで、君の名前・・・聞いてもいいかね?」
「ああ、僕は、ジェーン マーク・ジェーンだ!」
「よろしく!」
「僕は、拓哉 KIMURA TAKUYA だ!」
「よろしく!」
暫しの間が・・・・・・
「ところで、君は写真家だな!」
「そうだが! どうして?」
「君のCF撮影は、普通の動画からの人間とは感性が違う!」
「どう言う意味だ!?」
「まぁ、その話はこれが終わったらゆっくり話そう!」
「まあ・・・・いいが?」
拓哉少し気が進まない。だが助けられたから邪険にも出来ない。
「よし、決まりだ!」
「おれは、夕方この撮影が終る頃戻って来る。」
勝手に、そう言い残しジェーンはBWのワゴンタイプの車で行ってしまった。
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