32-拓哉決断を迫られる!
32-拓哉決断を迫られる!
それは、あわただしい出発だった。
ルミが数少ない写真誌のスケジュールもすっぽかして、
ルミと佐藤友美はニューヨークへ飛び立ってしまった。
日本の芸能界では、いま上戸ルミは注目の的。
彼女の行動を追うやからが、後を絶たない。
すぐに彼女がニューヨークに飛び立った事は、
マスコミ連中に知れ渡った。
そして、後を追うようにしてマスコミもニューヨークへ。
当然ニューヨークには、日本のマスコミには支社がある。
そのためルミの行動は筒抜け。
ルミの恋人といわれる、写真家木村拓哉を追いかけてやって来た事は、
マスコミでは当然の事実として、芸能関係の新聞、雑誌に何度も取り上げられた。
さすがにニューヨークでは紙面に載ることは無いが、
ルミの動向を追う記者の姿は、
“一体彼女は誰・・?” “日本の有名な芸能人?”と、見る人も多い。
当然、木村拓哉の住んでいる家にも、記者たちが押しかける。
あるものは、あの超有名な同姓同名の、木村拓哉と勘違いする、一幕もある。
その写真家木村拓哉が、シャローンと言う絶世の美女と、
同棲しているという噂もルミの耳に入って来る。
ルミは、そんな噂を気にしてか、なかなか拓哉に会うのを躊躇っている。
取り巻きの記者たちが、それとなく耳に入れる話の内容に戸惑いが・・・
「ルミ・・・・!」
「ここまで来て拓哉に会わないつもり?」
「・・・・・・・」
友美がルミの戸惑いを見透かすように、ルミに決断を迫るような言葉を、
何度も投げかける。
「でも・・・」
「何が、でもよ・・!」
「今・・・、拓哉・・・」
「いい人が居るみたいだし・・・・」
「何言ってるの!!」
「ルミ・・・・!! 貴方は何のために N.Y.に来たの?」
「・・・・そうだけど・・・!」
「あなたは・・・、拓哉無しではいられないのでしょ?」
「うん・・・!!」
「だったら、会いなさい!」
「そして、貴方の気持ちをきちんと伝えなさい!!」
暫く考えて「うん、会うわ!!」
「そうと決まったら、すぐに行きましょう!!」
「でも、何処へ・・・?」
「安心しなさい・・!」
「調べてもらったの・・・!」
「知り合いに・・・!」
「さすが、友美! 有難う、本当に!!」
「で、何処へ」
「黙ってついてきなさい!!」
そういって、ルミと友美はシャローンの家に電話して、
2人の行き先を聞いた。
当然ルミの事は知っていたので、躊躇無く教えてくれた。
ブロードウエイでは合えなかったが、二人が食事をしている場所では、
上手く同じ場所で落ち合えた、友美とルミ・・・・、
彼らの少し離れたところで、事の始終を観察していた。
そのときのルミの心情は、只者ではなかった。
シャローンの、積極的な拓哉へのアプローチ!
そして、高価な拓哉の年のワインを、シャローンが奮発。
楽しそうな2人の会話(当然会話の内容はわからないが)
ルミは、拓哉との初めて、食事に誘われたときの情景がルミの脳裏に、
鮮明にフラシュバックされて来る。
ルミの、大きなスコティッシュフォールドの瞳から、
大粒の涙がとめどなく流れる。
何と残酷な光景だろう、当然友美は事の次第はわからない、
だがルミがとても悲しんでいる事は、はっきりとわかる。
ルミ、たまらなくその場所を飛び出ようとしたが、
友美が懸命に止めた。
「ルミ、行っちゃだめ!!」
「・・・・うん・・・!!」
「こんな事で負けてはだめ!」
「拓哉は、彼女の境遇に同情しているのよ!!」
「同情で・・・あんなに・・・仲むつまじく・・・・!!」
「同情だけでは、無いにしても、拓哉・・・・寂しいのよ!!」
「寂しいから・・・・、沙霧さんに似ているから・・・・」
「・・・うん・・・彼、今慰めてくれる人なら・・・・」
「慰めてくれる人なら誰でも・・・・」
「誰でもいいの・・・?」
「そんな事無いと思うけど・・・!!」
「どうして、ルミでは・・・・だめなの???」
「それは・・・・」
言葉に詰まる友美・・・・、
2人の周りに静寂が・・・・
そして、2人はレストランをまるで新婚カップルの様に、
寄り添うように出て行った。
タクシーを止め、二人はセントラルパークへ、
そして2人の愛のセレナーデを2人の体で表現され、
見せ付けられ、挙句の果てには高級ホテルへ向かった二人。
ホテルまで、宥め透かされるように友美に連れまわされ、
完全に失意のルミ。
さすがに、ルミ達は同じホテルには泊まらなかった。
ルミの強烈な反対で!
もう帰ると言い出すルミを、なだめすかし翌日の夜、
友美は嫌がるルミを連れて、拓哉の間借りしている家に向かった。
離れの拓哉の間借りしている、玄関を友美はノックする。
昨夜の疲れか拓哉は眠い目をこすりドアを開けた。
「あの、始めまして、ルミの親友の佐藤友美です!」
「あっ、はい!」
少し見覚えのある女性に軽く会釈して
「あの、実は・・・」
そう言って、ルミを前に押し出す。
「あっ・・・、暫く・・・! 元気だった?」
「えぇ・・・ 何とか・・・」
「そうか・・・・、よかった!」
「で、どうしてここへ!!??」
「何言ってるの、散々探したんだから!!!」
友美が変わりに大きな声で、怒りをこめて・・・・!
「ルミがどんなに寂しい思いをしたか・・・・!」
「拓哉さん、ご存知・・・!!」
まくし立てるように、友美がルミの今までの鬱憤をぶちまける。
「申し訳ない!」
「謝る・・・!」
「この通りだ・・!!」
と、言って拓哉深々とルミに頭を下げる。
「拓哉さん、あなたはもうルミの事・・・・、何とも思っていないの?」
「いや・・・・そんな事は・・・」
「じゃーどうして・・・!」
「ルミの前から姿を消したの!?」
「それは・・・!!!」
「・・・!・・・!」
思いっきり拓哉を見つめて詰め寄るルミと友美
「上手く言葉にならないが・・・!」
「沙霧が死んで・・・」
「沙霧さんの育ったN.Yへ・・・・来たの?」
「そう・・・なんだ・・!!」
「そして、・・・・・!」
「そして!・・・・」
「そして、自分を見つめなおして・・・」
「新しい恋人を見つけた・・・!!」
「そういうわけじゃぁ・・・・」
「現実に、シャローンさんと言う若い美人の・・・恋人を!」
「違う・・・シャローンは・・・」
「シャローンさんは・・・・恋人ではないのですか?」
「・・・!!・・・」言葉に詰まる拓哉
Cap-32 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami




