3-ルミ初めてのカメラテスト
3-ルミ初めてのカメラテスト
スタジオは、超一流のカメラマンが使う所なので、
さすがの拓哉も少し緊張する。
スタジオの中に入ると、いつものスタッフが二人を待ち受けていた。
拓哉のアシスタントの池田が、何か意味ありげに近づいて来て、
「かなり、御ゆっくりですね!!」と、耳元でささやく。
奥に進むと、ほかのスタッフの目が一斉に二人に注がれる。
「・・・・・」
拓哉は無言で、スタッフ達に軽く会釈をしながら、
「今日はスタジオでのカメラテストだけで・・・・・・」
と、中にいるチーフスタッフの二宮に話しかける。
「わかりました!」
ではさっと・・・・軽く、行きましょう!
「新しいモデルさんですかぁ・・・?」
それは・・・・解っていての質問だ!
二人の登場・・・・特にルミに多くの視線が集中する。
「そうです!」
「さすがだね・・・・・!」
「今日から僕の “メインモデル” として働いてもらいます!」
「例の・・・、あの雑誌のグラビアに、メインとして使おうと思っているのです。」
「拓哉・・・・は、なかなか見る目があるな、相変わらず!」
「さすがだよ・・・!」
「で・・・・、彼女の名前は」と、二宮が問いかけてくる。
「北沢ルミさん!!」
「北沢ルミですー・・・・」
「・・・・ヨロシク!」
「この仕事始めて・・・?」
「・・・はい、初めてです!」
「君はモノおじしないね!」
「じつは、もう拓哉さんに・・・・・」
「えー ???」二宮が、唖然とした表情
「いっぱい・・・・・ちゃっ、たんです!」
「何十回も・・・」
「・・・?・?・・・」
「それで・・・、カメラに、慣れちゃったんです。」
「アー、びっくりした!!!」
「もう、・・・・と、思っちゃったよ!」
ルミの小悪魔的な話術に翻弄される二宮、完全にルミのペース
「そう、・・・それは良かった!」
拓哉、急に話しに入り込み
「おい、・・・何が良かった、だよ・・二宮!」
「・・・・」二宮は、片目をつぶり、拓哉に愛想笑い。
「では、はじめますか?」
「はい、お願いしますー・・・」
拓哉は何か少し不機嫌そうに、スタッフをにらみつけてから、
ルミに向かって、
「ではルミさん、あの照明の下に移動してくれる・・・?」
「はーい」拓哉に、熱視線 スコティッシュフォールドの瞳で
「・・・・」
「そう、そこ・・・ね!」
「いいですね。」
「はい、そこで止まって!」
「そうです、そこでまっすぐ正面向いて!」
「オイ・・・二宮、レフだ」
「何、もたもたやってん、だ!」
「下からゆっくり、なめるように、そう・・・もっと右!」
アップライトの影を和らげるためにレフでコントロールする。
OKと拓哉は頷く。
「こんなもんでいいですかぁ。」
「はいOKです。」
「沢田、カメラ・・・」と言って右手を伸ばす。
彼女を2メートル位の位置から、下から上に煽るように撮り始める。
ルミの、魅惑的なボデーラインが、
ファインダー越しに よりいっそう輝く キラ キラ で!!!
少しずつ右に動いて、
「はい、目線こっち!」
「そう 少し、にっこり笑って。」
「はーい」「いいよーう・・」
カシャカシャカシャ・・・・カシャカシャカシャ およそ20回以上の連射
「いい・・・いいよー」
「最高だね!」
拓哉は少しずつ距離を縮めて・・・・、
少しずつ距離が縮まり、ルミとの距離50センチ
真剣に拓哉は、ファインダーを覗いている。
ファインダー越しに、彼女の目と拓哉の目が合う。
一眼レフでは、モデルの目線がレンズに合うと、
ファインダーを覗いている眼が、モデルに見える。
今まさしく、レンズ越しに、彼女と拓哉は・・・・・・
アイ コンタクトを行っている状態。
シャッターを切るたびに、彼女の表情が柔らかくなって来る。
ある限界を過ぎると、
モデルの多くはレンズ越しに見る瞳に、恋を感じてしてしまう。
ある種の錯覚に陥るというか、魔法にかかってしまう・・・。
言い方によっては、" 彼女を目で・・・・、イカセる " と言っても良い。
” 擬似恋愛現象 ” を起こす。
彼女が完全に、レンズを通して、そのレンズの相手に恋して、感じてしまうのだ。
“もうー好きにして・・・!!”
“どうにでもなっちゃって!!”
と、言うような感覚だ。
心なしルミの瞳に涙が・・・
体全体から発散される、ハイセンスな色気・・・
なんとなく、ピンキーな空気があたり一面に・・・
今スタジオでは、フイルムはほとんど使わない。デジタル処理だ。
今撮られたカメラから、パソコンに映像を映して、
(最新の機種ではダイレクトにPCに画像が飛ぶ)
俗にいう、カメラテストを行なっている。
その道の専門家からOKのサインが出た。
拓哉がつぶやく、「今日はこの辺で良いでしょう!」
「お疲れ様!」
「お疲れ様です!!」と、みんなに挨拶して、
拓哉と北沢ルミはスタジオを後にした。
「どう疲れた?」
「少しね・・・!」
「ずいぶん、いっぱい人がいるのね。」
「そうだね・・・・」
「スタジオの中では、役割分担で、大勢の人が一人のために協力する。」
「そして、一つの作品を作るのだよ。」
まさしく、チームワークだ。
感心して聞き入るルミ、そして、
「想像以上にすごいので、驚いちゃった!」
「ところで君、いまどこに住んでいるの・・・?」
「ぇ・・・!」
「送って行こうか?」
「大丈夫です、電車で帰ります!」
「そう、 じゃあ気をつけてね!」少し残念そうな拓哉
「あーそうだ、連絡先聞いてなかったね?」
北沢ルミは、彼に連絡先を書いたメモを渡した、03・5・・・。
「えっ、家電!」
「だってぇ・・・」
「やっぱ俺まだ信用ないのかな?」
「もー、う・・・」
もじもじしながら暫く躊躇 “ドウシヨー”
かなり前向きに、心は動いていても、
携帯番号はさすがに、まだ教えてくれようとしない。
そして拓哉とどめの一言・・・
「急いでいるとき、連絡するのに!!」
「携帯番号必要だけど・・・メアドも・・・!?」
「教えてもらえる?」
渋々、携帯を取り出し、拓哉に見せた。
「はい、でも、男の人に携帯番号めったに教えないのよ!」
「へぇ、意外と硬いんだ・・・」
「勿論よ・・!」
やった、とばかりに、拓哉は自分の携帯を出して入力した。
しかし、拓哉女の娘の携帯番号やメール、こんなに苦労した事まずない。
「それじゃぁ一週間後に朝9時に連絡するよ。」
「多分、野外での撮影になると思うよ!」
「わかりました。」
と彼女は返事をして、二人はスタジオを後にした。
近くのカフェに入り、コーヒーを頼む。
「キリマン、・・・・ ルミは?」
「ブルマン!」と、ルミ
自分の好みの銘柄をさりげなく店員に注文する。
「コーヒーも好きなんだね?」
と、拓哉は、ルミの飲食物の拘りに感心する。
運ばれてきたコーヒーを飲みながら、拓哉はルミに話しかける。
「初め、少し大変だけど頑張ってね!」
「はい、頑張ります」
と、弾んだ声で拓哉をしっかり見つめて答えた。
どうやらルミにやる気が・・・・・
それは・・・・
ルミは、スコティッシュフォールドの瞳を・・・・・、
キラ キラと輝かせて・・・・
去っていった!
Cap-3 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami