28-ルミ拓哉のいるニューヨークへ!
28-ルミ拓哉のいるニューヨークへ!
ルミのCD、特別に宣伝したわけではなかった!
しかし、アルバムを製作している事が業界関係者に知れ渡り、
始めの20万枚はあっという間に完売してしまった。
週間チャートでこんなに売れる曲は最近非常に珍しい。
当然TV、マスコミから出演以来が殺到するがルミは丁重に断った。
コンサートの依頼も次から次へと来るが、それも断る!
何せ当人殆ど家から出ない!
そのため写真誌も現在の写真が全然ないのだ!
みんな、あの追悼コンサートに来た人たちが、
一番最近の生の顔を見たのが最後だ。
中には、ゴースト説も飛び交った。
しかしそんな事は当人、まったくお構いなし。
あえて、有名になりたいとか、お金が欲しいとかと言った欲がないので、
マスコミや、芸能業界は手の打ちようがなく、
ほとほと困り果てているのが現状だ。
そんな業界事情をよそに、ルミは拓哉に対する募る想いを、
歌に専念して、なおも曲を作り続けている。
会う友達と言ったら佐藤友美ただ一人。
彼女と会って演奏や作曲を自分の家で行っているので、
音源はルミの家にしか無い。
ファーストアルバムを増やす相談に、
レコード会社の人間がやって来る。
今回は50万枚だ!
これで70万枚になる。
そしてTVの出演依頼や、
雑誌の依頼も来るが丁重に断る。
アルバムの写真は、当然拓哉の許可を撮っていないので、
その写真は使えない。
結果として、3カット程以前拓哉の下で働いていた、
二宮が撮った。
ルミの拓哉ヘの想いは、益々募る一方だ。
友美が、演奏を止めて休憩している時など、
じっと、東の空を見続けている。
何故か切ない・・・・
それを・・・
見ているのが・・・
もうそんな、ルミを見かねて友美は、ルミに決断を迫った。
「ルミ、貴方行きなさい!」
「何処へ・・・?」
「知ってるくせに! この・・・・オバカサン!!
「決まってるでしょ!」
「だから、何処へ!?」
もう・・・・じれったい・・・ルミのお惚けさん!!
「貴方を見ていると、私の方が切なくなるわ!」
「言わせるの・・・! ニューヨークでしょ!」
「ニューヨーク!」
「あそこは、私が行っては、いけないのよ!」
「何、言ってるの!」
「行きなさい!!」
「でも、・・・?」
「でも、何よ・・・!」
「怖いの ・・・よ!」
「何故怖いの?」
「もし、私が、ニューヨークに行って・・・・!」
「拓哉に会って・・・、何て言えばいいの?」
もう、この純情娘、イライラするわよ! もう・・・・
「あんた、ばかねぇ!」
「“好きです、愛してます!”」
「“拓哉がいないと私の人生、生きる意味が無いのです!”」
「こんな風に、貴方の気持ち素直に伝えればいいのよ!」
「でも、怖いわ!」
「何故怖いの?」
「だって・・・・! だって、そんな事言って・・・・」
「拓哉さんに嫌われたら・・・」
「もう、ルミのバカ・・・・!!」
「バカ・・・よ!」
「今までに、どんな事があったか知らないけれど・・・」
「拓哉さんの好きな人は、もういないのでしょ!」
「そうだけど・・・」
「あー、じれったい!」
「あんた、何時からそんなに弱気になったの?」
「・・・・うん・・・!」
「昔のあんたは・・・、こうだと思ったら・・・」
「まっしぐら・・・・、だったでしょ!」
「まったく・・・、ルミったら・・・」
「本当に好きな人だと何も出来ないの!・・・・ルミったら・・もう!」
「・・・・?」
眼に大きな涙をいっぱい溜めて、俯いたまま無言のルミ。
乙女心と言うものは、本当にわからない。
今まであんなに好き放題に、男性に対して積極的だったルミが、
本当に心から愛する人には、何も出来なくなってしまうのだろうか?
そう考えると、ルミは完全に拓哉の虜になってしまったのだろう。
何も出来ない一羽のひ弱な小鳥のように・・・・
あまりにも惨めなルミに見かねた友美が、
救いの手を出す羽目になった。
「ルミ、私も一緒にニューヨークに行くわ!」
「えっ、・・・」
なぜか、頬の涙を拭いもせずに、驚いたように友美をじっと見つめる。
「行こう、ルミ!?」
「行って、貴方の今の気持ち拓哉に思いっきりぶつけなさい!」
「拓哉の胸に飛び込みなさい!」
「でも・・・・!」
まだ不安の表情で、友美を見つめる。
友美は、ルミの身体を抱き寄せて、
「行くの!!」
「そうしないと貴方、ルミではなくなってしまうわ!?」
「わかった!? 行くの!」
「私が一緒に行ってあげる!」
そう言って、もう一度ルミの身体をきつく抱きしめた。
暫らくして、やっとルミが友美の目を見て
「うん、行く、拓哉のもとへ!」
Cap-28 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami




