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22-拓哉沙霧と最後の別れそして・・

22-拓哉沙霧と最後の別れそして・・


拓哉は両手を広げ、ルミを優しく包み込むように抱き、

ルミの髪をゆっくり、ゆっくりと撫でるように・・・、

何度も、まるで幼い子供をあやすように、ずっとそうしていた。


 沙霧の葬儀は、密葬に近く、社葬だがひっそりと、

社の幹部だけで行われた。

日本に、沙霧の親戚縁者はほとんどいない、

と言うか、わからないのが現状だ。


それと同時に、長谷川さんの葬儀もしめやかに行われた。


当然の事だろうが、アメリカから長谷川さんのもと奥様の、

母と娘二人が参列した。

別れた夫とは言え、決して嫌いでとか、不貞が原因ではないので、

もと妻の母ロザリオさんは、悲しみを懸命に堪えているのが良くわかる。


 娘達が成人するまで、かなりの養育費はきちんと送金されていた。

娘さん二人も、亡き父の遺影を前に、じっと佇み呆然と見つめ続け、泣き崩れていた。


 その姿は多くの人の涙を誘っていた。

しかし、こんな時に不謹慎かも知れないが、

二人の娘さんは、本当に可愛い盛り、と言うか美しい。

 彼女達のその俯いた姿がよりいっそう、だ。


 まるでハリウッドスターが二人そろったようだ。

上の子は20歳前後だろう。

喪に服す黒いワンピースに金髪の長い髪が何故か、

異常な色香を漂わせている。


何処となく沙霧を髣髴させる。

と、言うよりまるで髪の毛を栗色にしたらまるで、・・・・・。

下の子は16歳ぐらいだろう、地味な感じの、グレーのワンピース姿。


まだ、あどけなさの残る風貌だが、やはり美しい、

どちらかと言えば母親似だ。


 大体において、日本人とアメリカ人のハーフは、何故か二人のいいとこ取り、

とい言うよりそれ以上、格段に美形になる。

 もちろん例外もあるが・・・・


そんな風に観察していたのは拓哉、やはり、ファインダー感覚は健在、

葬儀に参加して喪に伏していたが、かなりの驚き、長谷川さんの家族が、

そろって献花をしている姿を見て、拓哉は大きな衝撃を受けた。

 

まるで、そこに沙霧がいるような錯覚にとらわれてしまった。

髪こそ違うが、沙霧に瓜二つ、体の震えが止まらない。


 ここ最近、酒にまみれて、ほとんどファインダーを覗くことも無い、

ましてカメラなど持ち歩く筈がない。

 その拓哉が両手でフレームを作り覗いている。


呑んだ暮れの、落ちぶれた腐った魚の目を毎日のようにしていた、

拓哉がまるで、生きた魚の目に変わった。

それは・・・、新しい拓哉が生まれるのだろうか・・・、

沙霧への想いが心の中でくすぶり続けているのだろう、

それとも・・・・、新たな拓哉誕生か?

 

隣にはルミが座っている、ルミもそんな拓哉の気持ち、

隣にいれば嫌でも気持ちが伝わって来る。ルミとしては、

うれしさと、悲しさが・・・・


少し、複雑、あれから拓哉とルミほとんど会っていない。

と言うより、拓哉 ほとんど行方知らず。

携帯にもでない。

メールでルミが連絡するも、

“イエス、ノー” の返事しか返ってこない。


ひとつだけ、拓哉の反応がいいのは、沙霧の為の追悼コンサートのことだけ


拓哉は、あの時の写真撮影の作品も、現在お蔵、決して、表に出そうとしない。

皮肉な事に、マスコミに乗った写真の、洋服と、ルミの事の問い合わせは、

殺到している。

ルミの会社の幹部も、拓哉の GO サインが無く、中座したまま、

服は既に量産体制に入っているのだが・・・


皮肉な事にもうひとつ、芸能界も敏感になっている。 

沙霧のために、ルミがコンサートを開く話は、何故かあらゆる所から・・・、

 どのようにして・・・、どういう情報からか・・・、

何らかの形で参加したいと、問い合わせが後を絶たない。


 関係者たちは、会場の変更を余儀なくされる事になった。

はじめ、200名ぐらいの会場を確保していた。 

 そのため、芸能関係者には殆ど知らせていない。

が、どうも、上戸ルミとしての名声が、そうはさせないらしい。


 噂が噂を呼び、あちこちの垣根を通り越して、オフレコが、

巷では大騒ぎらしい。

上戸ルミが、近くコンサートをすると言う噂が、どんどん広がり、

おそらく3000名以上の会場で無いと収集がつきそうもなくなった。


挙句の果てにはTVも入れろとの要望も・・・、

入場もはじめ無料でと考えていたが・・・、

 さすがのルミの社長も、そこまで太っ腹には出来ない。


まして、直接スポンサーを名乗るわけではないのだから・・・・。

何せ、会場の使用料、警備で、億の金が必要になる。

それに、あくまでも本人の意思で、沙霧さんへの追悼だから、

やりたいのだと・・・

決して己のためではないのだと・・・、

その意思は固い。


 そこで、苦肉の策として、沙霧さんの意思を尊重して、

長谷川さんの二人の娘と、奥さんの母であるシャローンさんへの、

感謝へのチャリテーとい言う事で、ルミは承諾した。


その話をしても、拓哉はまるで抜け殻状態だ、

これ程大げさになろうとは・・・、

拓哉は一言

「それならそれで、いいんじゃない!」で終わりだ。

相当拓哉の傷は深い、果たして拓哉の復活はあるのか?


北沢ルミ、いや上戸ルミのチャリテーコンサートの準備が着々と進む。

メインで動くのはルミの会社で、CMやキャッチコピー等で、

仕事していた大手の東欧堂、あらゆる所からオファーがあったが、

結局、社長の一言で決定。

 カメラワークや動画の撮影は、拓哉の同僚が担当、

それは、ルミのたっての願い。

 

 会場は、横浜のかなり大きな規模の会場に変更、

とにかく問い合わせの多さに、関係者はおおわらわ。


 ルミの、たっての希望で、バックバンドは出来るだけ少数でと言う事で

ギターに、ルミの親友で、気の合った女友達のギタリスト。

 ピアノはルミ自身、ベース、ドラム、そしてフルート トランペット等、

最小規模での演奏となる。


 曲はルミのオリジナル、好きなスタンダードジャズ、

それにビートルズの曲・・・・

予定では14曲 そしてアンコールに2曲

とっておきは、拓哉の為に書いた曲 それに今回の追悼で、

沙霧のために特別に1曲書き下ろした作品だ。

 

 その間も拓哉は、魂の抜け殻状態。

時折スタジオに足を運ぶが、ただボーっとして、

直ぐに出て行ってしまう。


 たまに車を駆って何処かに出かけているようだが?

誰も、行方は知らない。

ルミも、コンサートが忙しいのと、あの日以来ほとんど連絡が取れていない。

沙霧さんと、長谷川さんの葬儀以来、音信不通に近い状態だった。


Cap-22 ファインダー越しに恋して  Fin

          

See you later     Nozomi Asami


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