21-上戸ルミ 沙霧のために
21-上戸ルミ 沙霧のために
拓哉は、大きな決心をした!
もう・・・・言わなければ!
「実はね、ルミ!」
「沙霧さんの過去!」
「大変な痛ましい事件があったんだ!」
「事件って!」
「うん、彼女ぎりぎりで、生きていたんだ!」
「どういう事?」
「彼女、HIVだったんだ!」
「え、HIV って、エイズの事?」
「そう、エイズだ!」
「どうして!」
「彼女、黒人に強姦されたんだ!」
「えっ、うそ・・・!」
「うそじゃないよ、本当の事だよ!」
「ギリギリいっぱいの体力を振り絞って、沙霧は誰にも悟られないように・・・」
「定期的にアメリカに帰って、検診と、たくさんのHIVの薬をもらいに、だ・・」
「普段われわれに悟られないように、必死で生きていたんだ!」
「それで、私を探しに・・・・」
「そうだ・・・!」
「おそらく沙霧にとって、ルミは己の命より、ルミの命の方が大切だったんだ!」
「うぅー・・・」
「うそ・・・・」
「何て馬鹿な・・・私!」
両手を顔に覆い、嗚咽を繰り返すルミ!
泣き崩れるルミ、己の一時的な感情で・・・・・
何と言う事だ、そんな状況を知らないで、
私のために命を懸けて、自分を犠牲にして、私を探しに・・・・
また思い出したように泣き崩れる・・・・
「バカ、バカ、ルミのバカ・・・どうして・・・・私・・・!!!」
どんなに自分が浅はかなのだろう、何と言うことだ、
拓哉はきっと探しに来てくれる、必ず。強い信念で。
自分を、振り向かしたくって・・・・。 愚かな事を・・・
自分は何と浅はかなのだろう、今までこんな自分ありえない、
自分が許せない、許せない・・・
こんな自分はかつて無かった、ちやほやされ、いい気になっていた事もあった。
男なんて、笑顔を振りまいたり、少し優しく接したりするだけで、
みんな私のことを、神のごとくに振舞ってくれた。
そんな生活が当たり前だと思っていた。
しかし、拓哉は違った、全然違った!
今までの自分とは、まるで正反対の立場だ。
決して私を見ても普通に接する、いや、それ以下かも知れない。
そんな異性、始めての経験だった。
自分からアプローチしたり、恋焦がれたり、拓哉の事を考えて眠れなかったり、
そんな事今までの自分に決してない感覚だ。
一種の追っかけに似ているのかな。嫉妬したり・・・
なのに、沙霧さん自らも探しに来てくれるなんて、ルミは不甲斐なさでいっぱいだ。
沙霧さん、そんな状態で生きていたなんて、切なさ過ぎる、悲しすぎる!
沙霧さん本当にごめんなさい。
沙霧さんが、そんなぎりぎりの状態で生きていたなんて・・・、
自分の幼稚さにほとほと嫌気がさす。
そして今、沙霧さんはもうこの世にいない。
何で、あの人を・・・死なせてしまったのだ。
私が殺したも同然、私が殺した・・
また目に涙が大粒の涙が・・・
沙霧さんに嫉妬した自分、あさはかな自分己に恥じる。
でもあの時、拓哉はあんなに沙霧さんに親密に・・・・。
今考えると、沙霧さん、拓哉に重大な事、相談していたのだ。
もっと拓哉の事、信じてあげれば・・・、
あの時拓哉さんに、問い詰めた自分、かなり切羽詰まって・・・・
問い詰めて、どんな話をしたか、聞いても、はぐらかされた。
それは立場が逆なら、必ずそうしていただろう。
自分をせめても責めきれない。本当に沙霧さんごめんなさい。
拭いても、拭いても止まらない涙、ルミはもう涙を拭わない。
全部私の身体から涙も、血液も、そして、
身体も解けてしまえばいい!!
と、・・・・心からそう思った!
拓哉は沙霧の話を続ける、
あの晩、今まで誰にも打ち明けた事がなかった事、
そして、そのどん底の時、優しい手を、差し伸べてくれたのが、
長谷川さんだった事。
沙霧はその時、彼に身も心も惹かれてしまった。
が、しかし既に長谷川さんは結婚していた。
始めは、誰もがうらやむような理想のカップルだった、
そんな幸せな、時間はさほど長くは続かなかった。
そう、そんな彼にも大きな試練が襲った。
それは、一瞬の出来事だった。
彼女の奥さんが突然、交通事故で亡くなったのだ。
幸い子供さんは無事で、その子供さんは彼女の両親に引き取られた。
彼の話では、何とか立ち直り、
彼女たちは幸せに暮らしているようだ。アメリカで。
「そう、そんな事があったの!」
「長谷川さん辛かったでしょうね!」
「それに沙霧さんも・・・!」
「何も知らないで、本当にごめんなさい!」
また、深々と頭を下げるルミ
「気にするな!」
「悪いのは俺の方だ」
「もしかすると、俺は、・・俺は、2人に大きな心の傷を・・・・」
「そんな事無いわ!」
「おそらく沙霧さん・・・・やっと、心から愛するひと・・・」
「本当に愛する事を・・・知った・・・かも!?」
「もしかすると、沙霧さん、天空の世界で天使になって・・・あなたを・・・」
「独り占めに出来ている・・・」
「そうなって・・・ほしい!」
「いや、俺は、二人の心を・・・もてあそんだのかもしれない?」
「写真のために俺は、二人の心を踏みにじった!」
「拓哉は踏みにじってなんか、いないよ!」
「悪いのは、ルミよ、拓哉の心わかってあげられないで・・・!」
「もうよそう、二人が攻めてもきっと沙霧喜ばないよ!」
「沙霧が自分の体を賭けてでも、ルミを助けに行ったの、わかる気がする!」
「そうだ!」
「ルミ元気になったら、沙霧のために歌ってくれないか?」
「うん、歌う、歌わせて、お願い!」
「よし、約束だよ!」
Cap-21 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami




