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20-拓哉、ルミと沙霧を発見で・・・

20-拓哉、ルミと沙霧を発見で・・・


幻覚なのか、確かに人影、雨にぬれ、風に打たれ・・・ 

確かに人影だ!

ほとんど、最後の力を振り絞って、前へ・・・・

「沙霧、ルミ、  沙霧、  ルミ」


そこに、いた・・・・・、 沙霧が! ルミが!

横を向いたルミに・・・、覆いかぶさるように

 そう、手を伸ばし抱きかかえるように 沙霧が!


既に力尽きた拓哉が、必死の形相で前に進む

やっと、二人の前に・・・・


声の限りに・・・声をふりしぼりながら、

「おい、沙霧!」 「ルミ!」

「ルミ!」 「沙霧!」

懸命に二人の意識を確認する拓哉、


なんと、沙霧はもう息をしていない!

続いてルミに顔を近づける、微かに息が・・・

すかさず、ルミの脈を診る!


 あっ、微かだが脈がある!

助かる! 助けられる! 必ず!


 息をしていないはずの沙霧が・・・、

なぜか沙霧の身体が熱い、熱い、

「沙霧、沙霧ぃ・・・」


 からだの中で、病原菌と戦っていた! 

つい先ほどまで・・・

 そんな沙霧の身体、火照った沙霧のからだから蒸気が上る。

魂が抜け出して行くように・・・・、

そう・・・ するすると、天に召されるように・・・・


 呆然とする拓哉、とめどなく流れ出る涙、

降りしきる雨に負けないくらいに・・・


しかし、今、拓哉は決断・・・


 拓哉は瞬時に如何すべきかを決断、ルミを助けなければ!

おそらく、沙霧はもう・・・

 即決 決断 苦渋の選択で・・・ そう、ルミを助けよう、

助けなければ・・・・ 沙霧のためにも、 そう、沙霧のためにも・・・

 

「ルミ!」「ルミ!」「ルミ!」

 抱きかかえ、ルミのブラウス、ブラも外し、

拓哉自身もぬれた上着をかなぐり捨て、

シャツも、そして直接ルミの身体を抱き寄せ、

身体を密着させる、風雨を遮る様にぴったりと、抱きしめる。


「ルミ、ルミ」

「ルミ、 ルミ」

 雨にぬれた頬をぬぐい、びしょびしょの髪を額から髪の先に拭う、

何度も、何度も 何度も・・・

 すると・・・・

ルミに反応が・・、拓哉の体温が・・・

ルミの冷えきった身体を徐々に暖めて

ついに、ルミの身体から反応が・・・


「・・・・ウン」

「・・・・!・・・!・・・」

「・・・・ウーン」

「おい、ルミ・・・ ルミ」

「・・・!!・・」

「あ、拓哉!」

「ルミ、ルミ、ルミィ」

溢れる涙で頷きながら

「ルミ!」


ルミの身体がつぶれてしまうくらいにきつく抱く、

力の限りに・・・

「拓哉・・・・!」

わっーと泣き出すルミ、

「タクヤー!」

「くるしいーよー、拓哉・・・」

「うん、うん」とやさしく頷く拓哉、少し力を緩める。

やっと安心の拓哉、少し我を取り戻す、すると

ルミの髪に草の臭いが、微かに・・・


リンスやシャンプーの香りなど、

とっくに流れ落ちてしまったのだろう。 

それが、なぜか懐かしい臭い、とっても懐かしい

むかし嗅いだ臭いだ、そうだ、あの時の・・・

 

 そのとたん、拓哉の体が震える、恐ろしい記憶が蘇る。

身体がぶるぶる、身震い・・・

 決死にその身震いを止め、嫌な過去と決別!


目の前のルミを、決してあのような忌まわしい事態には、

させないと、心に強く誓う。

しかし、拓哉も限界の域を超えていた、睡魔が、睡魔が拓哉を襲う。


 そんな状況で、今後は拓哉から体温をもらい、

少しだが元気を取り戻したルミ、運よく濡れが少ないポケットから、

携帯を取り出し電源をONにする。

 携帯は反応する、ルミは初めて“SOS”ボタンを押す、反応したようだ。

父親からもらった携帯、特殊機能と、GPS機能が反応 


なぜか耳慣れない音が出ている。

おそらく、この操作で現在地が正確に、ある場所に届けられる事だろう。

 ルミも、最後の仕事を成し遂げた事で安堵が広がり、

再び意識が遠のいていった。

かろうじて山頂に到着した捜索隊がルミの“SOS”をキャッチ

急遽その場所に向う!


 二人が意識を取り戻したのは、暖かいふっくらした布団の中。

拓哉、気付いて目覚めると第一声が

「ルミ、ルミは・・・」傍で見守っていた捜索隊の一人が

「大丈夫です!」と、優しく頷く

半ばあきらめの言葉で

「沙霧さんは?」聞かれた言葉にうつむきながら首を横に振る。

慈愛のこもった瞳で・・・


 隣で、少し遅れてルミが目を覚まし、

「拓哉は、拓哉さんは」と聞く

「大丈夫、元気です!」と頷く。

同じようにルミも続けて

「沙霧さんは?」と聞く、やはり首を横に振られる。



 その答えに二人は少し複雑な表情、拓哉の目に大粒の涙、

ルミも悲しみを堪えきれず、布団をかぶってすすり泣き。

 だんだんその声が大きくなる!

二人の周りには気をつかってか、誰もいない。

ホテルのツインのベッドで暫らくその状況が続く


 ルミもなき疲れたのか、暫らく静寂が続いた。

そこへ、優しい声で拓哉がポツリと、一言

「何故、一人で、出かけたの?」

出来るだけ優しく・・・

「・・・・・・」

「・・・少しね・・・」

「・・・・」無言のルミに黙って見つめる。

耐えかねたルミ、重い口を開く、


「だって・・・・、」

「何か急に寂しくなっちゃって!」

「拓哉がどっか、行ってしまいそうで!」

「ルミからどんどん離れて行くようで!」

「寂しくなっちゃったの!」

「ルミ、こんなの初めて、もう、私なんか・・・・」

「拓哉はもう、沙霧さんに夢中・・・」


一方的に今までの鬱憤を拓哉にぶつけるルミ、

涙が流れ落ちる、あの時の拓哉の様に・・・

 拓哉もその涙を、ルミを抱き寄せ、

その涙を拭って上げる、拓哉の唇でそっと・・・


「ごめんよ、ルミ」

 「・・・・・」

ルミから再び・・・枯れてないはずの涙が・・・・・


Cap-20 ファインダー越しに恋して  Fin

          

See you later     Nozomi Asami


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