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18-拓哉ルミを探しに・・・

18-拓哉ルミを探しに・・・


長谷川さんも気分転換で、近くを散歩するといって出たが・・・・・

「おい、二宮 長谷川さんは?」

 「はい、長谷川さんもいません!!」

「誰か二人の事、知っている奴はいるか?」

全員に問いかけるも、みんな無言、

 二人とも、ふらっと出かけたようで、みんな気にも留めなかったらしい。


 沙霧が拓哉の傍に寄って来て、目線を合わすもお互い無言。

二人とも原因が何だかわかっているようで、交わす言葉さえない。

痺れを切らしたように沙霧が

「あの・・・!」

「あのー・・・・!」

ほぼ同時に拓哉の言葉が、無常に重なり、木霊こだまする。


 その時、いきなり天候が、おかしくなって来た。

雲がものすごい勢いで動く!

雨雲だ、本当に山の天候は怖い。

一瞬の内に大きく変化してしまう。


拓哉、沙霧、共に一斉に携帯から情報を得る。

携帯の天気情報を見つめ、苦渋の顔をする。

 雲は暫らく切れそうも無い。

雨量はさほど多くないとの、情報だが、この山頂は別格だ。


「気象図から風も出てきそうよ!」沙霧が隣で呟く。

「事態は緊急を要する!」

「みんなを集めてくれ!」

拓哉が叫ぶ。


 拓哉は昔この美ヶ原高原で台風の時、

旅館の宿泊者を探して、かなり危ない目にあっていた。

 と、言うか、かけがえの無い人を失っている。


あのときの事が、走馬灯のように蘇る。

まさか、まさか、あの時とは違う、絶対に違う。違う。


 天候は予想以上に急変、捜索に出た人間からも、いい知らせはない。

事態はどんどん悪いほうに、・・・・・・

風も強くなり、雨も強く、あたり一面薄暗い大きな雲で覆われ、夕方に近い状態!


 大きな不安を感じた拓哉は、女将に装具を借りて探しに出かける。

出かけに、女将から、励ますように・・・・

「大丈夫あなたならきっと・・・」

「はい、絶対に!!」 

「以前のような事にはしません・・・絶対に!」

 「そうね、あなたなら大丈夫! ・・・ね!」

 近くに沙霧も寄り添い、うなずく。

「おねがいね!」


 拓哉は強い風と雨の中を出て行く。

じっと見つめる沙霧とスタッフ・・・

それに女将の目も・・・


 台風状態、それ以上かもしれない! 

拓哉は強い風と雨の中を出て行った。

ルミは一体どこに行ってしまったのだろう。


この雨の中、びしょ濡れになってしまって、体も冷え切っている事だろう。

早く探さないと、彼女の命が危ない・・・・ 

“早まるな ルミ! よ!”

出かけた時は薄着なはずだ。


彼女は、自分から、去っていってしまったのだろうか?

拓哉は、悔やんでならない。

彼女の気持ち、ある程度は気付いていたのに・・・・、

“ルミ・・・・惨めにさせてしまったなら 、後でいくらでも怒れ!!”


 今まで彼女は振られた事など、決してないだろう。

拓哉の気持ちは不安でいっぱい。

早く探さないと・・・・・・、

“不安が拓哉の心を押しつぶす”

 

降りしきる雨の中、台風のような強い風で、

時々吹き飛ばされてしまうような事もある・・・・ 

 “何処にいるー、  ルミ よ・・”


視界も非常に悪い、10メートル先が風雨で見えない。

ちょっと足を踏みはずせば、谷底へまっしぐら。


 拓哉にとって、この場所は、熟知している! はずだが・・・?

あの時の嵐の時も、かなり危ない目に遭遇していた。

あの時は、やっとのことで、見つけることが出来た!


 しかし、体が冷え切って、彼女を自分の体で暖めても、

そう、彼女の服を脱がせ、自分の体とじかに合わせ、

体温を送り込んでも、彼女はもう戻らなかったそう・・・


決して、・・・、・・・・・、

決して、元に戻るようなことは無かった。

健気な女心をわかってあげることができずに・・・・、

“もう二度と、繰り返すな、過去の過ちを!”


彼女を死に至らせしめてしまった! 二度と帰らぬ貴方に!


 悔やんでも、悔やんでも、悔やみ切れない思いが、

今も心の底に残っている。

 今度だけは、決してそのようなことをさせないと、強い決意で、

真剣に捜索を続けている。


 危険な箇所を重点的に、捜索することにする、特に崖の近く。

彼女の足では、そう遠くまでは行けないだろう。


 彼女は、どんな思いで・・・・目的で、この場所を去ったのか・・・、

一人静かに、この山を下り、姿を消そうと、考えていたのか、

 はたまた、死んでしまいたい! 

なんて思っていたとしたら? 

捜索の仕方がまるで違う!


 今の拓哉にとって、どちらが、可能性が高いのか、不安である。

拓哉の心の中では、おそらく

 “ここで命を絶とう” 、

等という気持ちは持っていないと思う。

 思いたい!


 しかし、全くそうでないと、思うことも考えられる。


 気分転換に 付近を散策、道に迷い帰れなくなった。

少しは拓哉を心配させてみたい・・・・、

“探しに来て・・・・”

“拓哉 !!”

そうであっても、今は命の危険にさらされている。


 また、長谷川さんも行方不明になっている。


 沙霧からの連絡が、携帯に、届く。

「捜索隊、手配します!」

「そうですね!」

「ガッ、ガッ ガー ガッ」携帯に風の音が入り込む。

「何人ぐらいで!」

「40人程頼もうと思います!」

「社長には、」


 「連絡しました、ヘリもチャーターしたそうです?」

「当然かな!」

捜索隊を手配したいという。

とにかく、彼女は、掛け替えの無い、重要な人物なのだ。


 沙霧の申し入れは、断るわけにもいかず、いや、むしろ必要である。

沙霧は、分かったと、彼女も、最大限の努力を惜しまない。


 なせる力を最大限に利用することになった。

“社長の、厳命だ”

 やることは、当然、派手に、なる。

ヘリもチャーターして・・・・・、

捜索隊も、40人態勢で・・・・、

これからこの山に、向かって来るということだ!


 沙霧にとって、彼女は、いちばん大切人なのだ。

社長に、何と申し開きをしたら良いか・・・、

“日ごろ温厚な社長が、険しい!“

“当然だ!”


それでも、沙霧に絶大な信頼を置いているせいか、・・・・

沙霧に対しては、それ程きつく当たらない、

それが、沙霧にとってつらい!


 沙霧の心の中には、もしもの時は、“沙霧は、自分の命も・・・・”、


 全精力を捧げて、ルミを探す事が、

彼女のこれからの、一番大切な事だ。

 今の沙霧にとって、自分の命よりルミの命のほうが絶対に重要、

どんな事があっても助けなければ、密かに決意を固める。


 そして、沙霧もルミの捜索に出かける決心をした。

今の沙霧の体力を考えると、自殺行為に等しい。

 かろうじて、生きている身体なのに・・・・・・、


自分の健康状態を返り見ずに!


Cap-18 ファインダー越しに恋して  Fin

          

See you later     Nozomi Asami


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