12-拓哉沙霧に好奇心いっぱい!
12-拓哉沙霧に好奇心いっぱい!
沙霧という人間はどれ程、会社に権限があるのだろうか?
相当に社長の信頼が大きいはずだ!!
ルミが、すっきりとした感じで、拓哉と沙霧の前に姿を現した。
写真集を創るに当たって、
「今までで、少し不足しているカットの撮影を、行わなければならないでしょう。」
「撮影場所として、このホテルのラウンジ、レストランで、行うのはどうでしょう。」
「そうですね。」
「うん、いいな!」
と、納得 同意した。
それでは、夕食を兼ねてこのホテルで、夜の撮影を行いましょう。
すると、沙霧はすかさず、ホテルのマネージャーに、
状況を説明して、撮影許可を取ってきた。
驚くほど、頭の回転の速い、そして、スーパーレディなのだろう。
打てば響くような、この機敏な行動は、今の花形であるIT産業で
目一杯活躍して来た事が、うかがい知れる。
拓哉にとって、素晴らしい味方ができた、と思ってよいだろう。
初めは、レストランで、食事を始めるシーンで、撮影を行った。
それ以降、あのスーパーレディが持参した、ハイセンスな衣服をコーディネートした。
見ていて、違いがわかる。
やはり、垢抜けた世界一流のセンスが光る。
メイクアップ・アーティストに出す指示も、テキパキとして、
ルミがより一層輝いて見える。
近くにいる他のスタッフも目をみはるばかりだ。
本当に、スキがない。 ルミが、ますます輝いて見える。
拓哉は、気をよくして、ファインダーを覗き、シャッターを軽快に切り続ける。
ハンディだが、かなり使えるHDビデオカメラも廻して、
動画の撮影も同時進行している。
沢田に指示して、動画は彼に任している。
彼は動画とパソコンについては、かなりデキル!
と、言うより凄い・・、メカには!
レストランで、食事をするカット、何故か一人の女性だけでは、物足りない。
雰囲気が盛り上がらない。 やはり、隣に彼が必要だ。
沙霧は当然のように、拓哉に向かって、
「あなたが一人2役をしたら良いでしょう?」
「どう言うことだい?」
「あなたが、彼女の向かい側に座って、仮の恋人ということにしたら?」
「あーそれ、良いかも・・・」
と、周りから一斉に声が発せられた。
「で・・・・、撮影は誰がするんだ?」
「あなたが指示すれば・・・、」拓哉はしばらく考えて
「わかった。」
「二宮、お前が撮れ!」
「はい」
「ハンディモニター カメラの右側、おれの目線で三脚にセットしろ!」
「この辺で?」
「違う! 違う!!」
「モニター、もう少し下だ。」
「よし、OK!」
「で、俺の衣装は・・・、」
「もちろん用意してありますよ。」
「さすがだね」 「全くあなたには、スキがない。」
「スキというよりも、抜かりがないということかな。」
「いえ、 すべて私の計算の上です。」
「恐れ入りました。」
「わかったら拓哉さん、早速着替えて来てください。」
はっきりとした調子で、沙霧に言われ拓哉はしばし唖然。
レストランの撮影も順調に終わり、その後、ラウンジに移動した。
そこでも、順調に撮影は終わった。
「二宮、沢田 モニターで、動画、静止画チェックしておけ。」
「了解」
「了解です!」
「OK ご苦労さんです。」
「本日の撮影は終わり。」
と、いう拓哉の声で、一斉にみんなが、off モードになった。
食事をする者、ラウンジでアルコールを飲む者、
それぞれ、自分の好きな場所に、移動した。
拓哉、ルミそれと、沙霧は、レストランの湖畔に面した一角を占有して、
食事を始めた。
すぐに、拓哉の選択した山梨産のワインもすでに1本はからとなり、
2本目も半分ぐらいは、空いてしまっている。
3人はお互いを見つめあい、確認するように、和やかな雰囲気で話している。
お互いに、たまにチクリとする探りを入れるような会話は見られる。
あくまでも彼女の本心が、今話している事と、違っていないことを、
拓哉は探っている様子だ。
もちろん、沙霧の方も、拓哉の本気度をチェックしていることは、
言葉の隅々からわかる。
ただ一人、ルミは、3人が、打ち解けて話している事が、うれしそうだ。
午前中にルミの父が来た時には、一瞬どうなるかと、気が気ではなかった。
そのさまは、拓哉だけではない、ルミもかなりこたえていた。
それが今このような状態になって・・・。
話の内容からして、沙霧は、自分の思惑通りに、動いているように見える。
拓哉にとって、それは少し悔しさもあるようだが、
今の段階では、これがいちばんベストなのだろう。
拓哉本人、自分の気持ちが不確定で、何か不思議な気持ち、
そのことは、自分自身の思考回路の矛盾だ。
ラウンジで、拓哉は沙霧と少し込みいった話をしていた。
ルミは二宮、沢田や、他のスタッフ達と楽しそうに話しをしている。
先ほど湖に落ちた時の事を“あーだ、こーだ”とグチる。
「あの時、みんな笑っていたでしょう?」
「・・・・いいえ!」と二宮
「笑っていませんよ!」殆んど同時に沢田のフォロー
「うそ言わないで・・・・!!」
「笑い声聞こえたわよ、湖の中で・・・」
「・・・・・!!・・・・・」
「どちらかというと、目が見開かれ、点になった状態で、みんな フリーズ していました。」
「拓哉を除いてね!」
「拓哉先輩は、別格ですよ!」
「自分がそうなっても、必要な被写体があれば撮っていますよ。」
「本当に!真面目なのかな?」
「でも冷たいよね!」
「本当に、夏でも冷たいですよね!」おどける二宮
「・・・・・違う、その冷たいじゃない!!」
「スイマセン、ペコリ!」実際ぺこりと、頭を下げて愛想笑い。
「実際冷たかったけどね!」
「でも、びしょ濡れのルミさんすごくセクシーでしたよ。」
「そう、ありがとう、私の事抱きたくなった?」
「えっ、・・・・・もちろん!」
「ありがとう!」
「もちろんです!」と遅れて沢田!
「でもさー・・・」
「まったく、拓哉ひどいよ、あんな時でもいっぱい撮っていたわ!」
「でも拓哉さん、ルミさんの事かなり心配していましたよ!」
ぬかりなく、二宮きっちり拓哉をフォロー、さすが拓哉ファミリーといった感じ。
「みんな、拓哉の事好きなんだね!」
「もちろんです」と、ほぼ二人同時に返事
すると、みんなそろって、大笑い。
「あっ、それとルミさん歌すごいですね。」
「感激しました」と、二宮
「本当、ありがとう。 サインでもする?」
「本当 す、か、 是非!」
「でも、僕ルミさんの事、知っていましたよ!!」
沢田は、むきになって続ける。
「何? お前、知っていたの?」
「何でおれたちに、言わなかったんだ?」
「何と無く、言ってはまずい様な雰囲気が・・・・ それに、自信が・・・・」
「もし、言ってしまったら、こんな風にはならなかった気が・・・・」
「そうかも、な!!」
「私もそう思うわ!」
「すごく新鮮で刺激だったわ!」
「初めてスタジオに行ったとき・・・。」
「みんなとの出会い、すごく感謝している。・・・の!」
みんなわいわいがやがや、話が続いている。
その場の雰囲気が盛り上がり、和やかにくつろいでいる。
だが、ルミは時折、笑いながらも、拓哉と狭霧の方を、ちらちら見ていた。
ラウンジの隅で、拓哉と沙霧は神妙に話をしている。
拓哉は沙霧に、
「秋川さんは、以前このような業界にいたことがありますよねー・・・?」
「・・・・!!・・・・」
「はい、自分もモデルとして、ヨーロッパで2年ほど・・・」
「そうでしょうね・・」納得の拓哉
「その後、体を壊してモデルをやめ、モデルを養成する方で・・・」
「そして、今の会社の部長で、今回私と同行した中の一人で、長谷川といいますが!」
「彼に、今の会社に入ることを勧められ、今現在は、このような仕事をしております。」
「今の私の仕事は、新製品のプロモーションを行っております。」
「そのような時、あなた達が偶然にも私どもの仕事と同じような事をしているのを、
私の部下がキャッチしました。」
「昨夜、ルミさんが地方局のテレビに、出演していると言う情報が入りました。」
「現在の状況を把握したわけです。」
「・・・・・・!」
「社長の娘をライバル会社がモデルとして使っていることを知り、
一大事と思い、急遽こちらにやってきたのです。」
「すると事態が急変し、ルミさんの今後のこと、気持ちも考慮しました。」
「突然なので我々はかなり驚きました。」
「一時はどうなるかと?・・・・・・」
「そして、会議を重ねた結果、あなたに仕事を任せてみようということになりました。」
結論として、「このような提案を、決定したわけです。」
「失礼ですが・・・・、」
「もちろんあなたの、過去のことは調べさせていただきました。」
「さすがですねー・・・」
「その結果、会社の方針は、あなたに一任することになりました。」
「それは大変光栄なことですが、すこし買いかぶりでは?」
「あなたの仕事ぶり、あなたの周りの人の意見、聞かせて頂きました。」
「その結果として、私どもは十分に私どもの意思を汲んで、
成し遂げて、いただけると確信しております。」
「それは・・それは・・・、」
「大変ありがたいことですが、私にもいくつかの要望があります。」
「それはどの様な事でしょうか?」
「出来上がった作品の構成レイアウトは、私にお任せいただきたいのですが・・・」
「もちろん、あなたにすべてを任せいたします!」
「それは大変嬉しいです。」
「しかし、上層部の方からイチヤモンがつかないのですね?」
「はい大丈夫です。」
「すべて私に一任されていますので!」
「ずいぶん、私を買って下さっているのですね。」
「実は、あなたの作品をすべて調べさせていただきました。」
「こんな短い時間に、そこまで出来るのですか?」
「私共の、情報網を甘く見ては困りますよ!」
「それは大変失礼いたしました。」
「それでは、私は全力を尽くして、彼女をモデルにして・・・。」
「良い作品を、作ることをお約束いたします。」
「期待しております、社長ともども・・・」
「あ、それと動画と、彼女の音楽活動も・・・・」
「そのように成りそうですね?」
「そちらの件で、お困りの事があればぜひ私に相談して下さい。」
「あ、有難いですね、少し心当たりがありますが・・・?」
「そうですね、・・・・ またその事は後ほど・・・」
「話はこのくらいで、少し、いかがでしょう」
と、言って拓哉は沙霧にブランデーを勧めた。
Cap-12 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami




