11-拓哉、ルミとの関係?
11-拓哉、ルミとの関係?
あの時、拓哉とわたし、・・・いったいどうなったのだろう。
拓哉、私のこと抱いてくれたのだろうか? ルミの体に拓哉の・・・
かすかな記憶が、あれは、幻か、正夢か・・・
夢の中では確か1つになったはずなのに・・・
少し熱めのシャワーが、ふくよかな胸をリズミカルに打ちつける。
・・・・・ ふと、われに返り恥じらいを感じる。
冷えた体が少しずつ温まり、ルミはシャワーのノブを止めて、
シャワールームを出る。
全身が映し出される鏡の前に一糸まとわぬ姿で立ち、
おのれの均整の取れた姿に少し見惚れ、満足する。
“見て、拓哉、私・・・、結構いけているでしょう?”と少し自惚れる。
その時間は僅か15秒。ルミにとって10分以上の感覚だ。
ルミの記憶では、このふくよかなバストをたしか・・・・
空想なのか、現実だったのか?
ルミの思いは勝手に大きく広がって・・・そんなことを考えながら、
右手でバスタオルを取り、軽く拭き、胸の前でバスタオルの端を折り
体に密着させる。
別のタオルを取り、しなやかに流れるような美しい髪を拭く。
湖畔が一望出来る、窓際のソファーに深々と腰掛け、
右脚を左脚に乗せ足を組む。
冷えた体を温めようと、紅茶にブランデーを多目に注ぐ。
部屋の中から今落ちた湖をぼんやりと見つめている。
やっと一人になれた。 少し疲れを感じる。
ドアがノックされ、ルミはドア越しに用件を聞く。
女性スタッフが一歩踏み込み
“今日はこれで終わり!お疲れ様” という知らせをもたらせる。
ひそかに、拓哉の来室を期待していたルミは、
少し苛立ちと寂しさを込めて、女性スタッフを見つめ、
承知したことを、右手に持ったバスタオルを上に持ち上げて知らせて、
ドアを閉める。
ルミの心は少し苛立ち、不満の矛先を、どこに向けようか思案している。
自分の思いが、今まで殆ど達成されていたルミに、
以前のわがままさが、少し露見されてしまった。
“いけない、こんなルミは拓哉に嫌われる!”
そう思い、われに返り自制心を取り戻した。
しかし、なぜ拓哉が来てくれないのか、ルミは不満というか、
しさが広がった。
ルミの思いが通じたのか、それからおよそ1時間後、
拓哉はルミの部屋にやってきた。
ルミの部屋に再びノックの音、間違いなく拓哉だと確信した。
ドアをすばやく開け、入ってくるなり確かめもせず、抱きついてしまった。
抱き付かれた拓哉は、かなり驚いてしまった。
ルミは拓哉の言葉より一瞬早く胸元で叫んだ。
「遅い、遅い、おそい、・・・」
「バカ・・、バカ・・」
「オソイぞ・・」
「ルミ、俺じゃなかったらどうするつもりだったんだ?」
「絶対、ルミは拓哉だと確信していたもん」
「分かった、・・・ 分かったよ・・・」
「さっきはごめんよぉ」
二人は抱き合いながら、言葉を続けた。
「実はナー、そのー・・君が落ちる瞬間のシーン、写真集に使いたいんだけど?・・・」
「・・・!!・・??」
「勝手にすれば・・・」
まだ怒りは収まる様子は無い、だが拓哉にはそれなりに自身があった。
今までの長い経験で、必ず、出来あがった構成の中に入れて見ればきっと・・・。
「どうしてよ・・・?」
「ルミの恥じゃないの?」
「そんなことは無いよ!」
「実はネー、その時の君の顔。」
「特別だったよ!」
「どういう意味?」
「非常にチャーミングだったよ!」
「ハプニングといえばハプニングだが、あの時の君。」
「いちばん自然だったような気がする」
「跳んでいる感じがね!」
「なんか納得いかなーいぃ。」
「あー・・ 湖に落ちたからじゃないよ!!」
「まあ、今回の撮影の主旨とは少し離れているが・・・」
「変な感じだな!」
「別な、君が撮れた様な気がする」
「実は僕の単独的見解だが、同時進行で、君の写真集を撮る事にしたい!」
「それを、並行してやって行きしたいと思っている。」
「それって、ルミの写真集?」
「それ以上のこと考えている」
「どういう意味?」
「ルミの歌 おれ、感激したよ!!」
「それで?」
「おれに任してくれないか これからの事・・・」
「・・・・??」
ルミは少し不安な目で拓哉を見つめる。
そんなルミを、拓哉は一度きつく抱いてやり、ルミの右頬に、
しっかりとキスをしてから、ルミの反撃がゆるくなった頃に、ルミから体を離した。
一つは、今まで通りメーカーの指定されたような写真を撮ること。
そしてもう一つは、ルミの自然での写真を集めて、写真集にしたいと思っている。
それに動画も撮る。機材は急遽こちらに運ばしている。
「実は君のお父さんから、僕宛に特別な衣装が届いた。」
「その衣装は君が好きなように、我が娘を使って自由に使ってほしいと!」
添え書きがしてあり、私の元に届いたのだ。
そして、その衣装を使った作品は敢えて名前は出さなくてよく。
「君が自由に使ってほしいという事」
以上の様な内容が書かれていた。
すなわち、あのメーカーに対してきちんと撮影を行い、
その作品はあのメーカーに貢献できるような作品として発表して構わない。
そして、今回我が社が君に提供する衣装は、
君が我が娘の写真集として、この衣装を無償提供する。
そして出来あがった作品の中で、使った衣装に対する、
コメント、フォローは一切しなくて良いという事だ。
すなわち、拓哉に競争ブランドのメーカーに対して、
ルミをモデルとし使ってよい。
別な形で、ルミを題材に写真集を作成して欲しい。
他のことも君に任すと。
作成するに当たって、衣装はもちろん、出来る限りのフォローを行う用意がある。
押し付けではない。
それに、一人、出来るスタッフを、君に預ける。
又、その衣装提供先を敢えて写真集に乗せなくて良いという事だ。
すなわち、ルミは今契約しているブランドのモデルとして活躍してもよい。
しかし、それは1年限りの契約としくれ。
次の年からは、我が社のモデルとして契約をしてもらう。
その事で、両方のメーカー、そして、モデルの業界での筋を通すということは、
きちんとけりを着けた事になると思う。
それに、わが社は現在繊維メーカーとしての顔がメインだ、
これを期に、ファッション誌をあっと言わせるような企画がある。
これは、まだ2.3人しか知らない“トップシークレット”だ。
まず、なるべく早急に、今君が契約し手いるあのメーカーを傘下に入れる。
そう買収だ、悪くても業務提携。
そのブランドのもと、都会の若者を、あっといわせる企画を考えている。
おそらく、1年で、8億円規模の売り上げを見込む商権に発展するだろう。
当然今の内容は、拓哉君 他言無用だ。彼女がルミにその事を話させる。
以上の内容をかいつまんで、先ほど急遽合流した一人の女性。
その人こそが、そう、あのキャリアウーマンだ。
六本木ビルの40階あたりのオフィスから飛び出したような容姿の・・・
いかにも “仕事が私の生きがい” と、さらりと言ってしまう女性。
その名が、“ 秋川 沙霧 ”
そう、その沙霧が、急遽戻って来たのだった。
1年で8億円、 そんなことが本当に可能なのだろか 考えられない。
まじまじと、沙霧を拓哉は上から下まで、
いつものスカウトの目線で嘗め回すように見た。
さすがは、六本木ビルの40階に堂々と、キャリアウーマンとして働いている。
まさしく現代を象徴する最高の女性だ。
全く、スキのないヒルズガール(HG)だ。
秋川 沙霧は、拓哉それに、同行しているスタッフに以下の内容を、凛として語った。
「先ほどのような趣旨で、これから私も同行させていただきます。」
「全権を私に託されておりますので、何か困ったことがある場合は、私にご相談下さい。」
「どんな事でも、おっしゃってください。」
拓哉はしばらく、沙霧に見とれてしまった。
まじまじと見ると、スタイル抜群で、服装も一分の隙のない見事さだ。
完璧と言ってよい。
身長も、172センチぐらいはあるだろう。
まさしく、今欧米で活躍しているモデルそのものだ。
間違いなく、彼女は“海外でモデルの仕事を経験している”、と拓哉は確信した。
歩き方も、その片鱗がうかがえる。
だからと言って、ルミも決して引けをとらない。
彼女と比べ、身長が少し低いくらいだ。
ある意味で、拓哉は仕事がやりやすくなったと思われる。
その反面、また微妙な感じが生じることも懸念していた。
ルミも今回の仕事が、かなりスケールアップした事に歓迎して、
二つの仕事を同時進行して行く事を、秋川沙霧といっしょになって話した。
ルミは最初戸惑っていたが、自分の父親が便宜を図ってくれたことを感じ、納得した。
拓哉は、撮影クル-にも話した。
ライバル会社の雇った広告代理店の人にも、今回のいきさつで、
無理なことは重々承知の上、理解してもらうことになった。
広告代理店の方でも、このまま撮影が中止するようなことになってしま事は、
大打撃だからだ。
お互いの妥協点が見えた、と言った所だ。
全体像を見て、今の結論がいちばん良いと、判断したからだろう。
したがってこれからは、衣装は二つのメーカーの良い方を、使うことになる。
救われるのは、今回のライバル会社のデザイナーが、
この場所にやって来ていないことだ。
しかしこの場所でお互いのメーカーが、情報の盗み会いになってしまう可能性が高い。
いくぶんルミの父親のほうに、情報が流れてしまうことは否めない。
が、その辺は今ここにいる、切れものの沙霧がうまく配慮してくれることだろう。
そのくらいのことは、沙霧にとって、朝飯前のことだ。
今、沙霧の頭の中にはもっと壮大な構想が練られている。
Cap-11 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami




