10-さあ、拓哉 撮影再開
10-さあ、拓哉 撮影再開
「拓哉、気にしなくていいわ」
「今、私電話する!!」
「上手く説得するから!」
そう言ってルミは、携帯をハンドバックから取り出し、隠れリストを開き、
液晶画面で父のラインにあわせ、プッシュした。
ルミの携帯は特別仕様なのか、ここでは携帯使えないはずだが?
話の詳細は拓哉には聞こえなかった。
時折大きな声で叫んだり、無言が続いていたり、
かなりもめている様子が伺える。
二度切られ、向こうからの発信も何度かあった。
父親とは別の人と話している様子だ。
携帯をパタンと閉じる音がして、拓哉の下に走りよってきた。
笑顔で拓哉を見つめ、いきなり拓哉に抱きついた。
「大丈夫よ」
拓哉にとって全く不可解なことで、何がどうなっているのか、
さっぱりわからない。
「どうなってんだぁ-」
「沙霧さんがね・・・、心配しないで撮影をこのまま続けろと、言ってくれたの?」
「沙霧さん、て・・・?」
「あー、さっき一緒に来た綺麗な人!」
「そう・・・」
「その沙霧さんがね・・・」
「いろいろと、処理しないといけない事がある様だけど、
うまい解決策を見つけたのだと思うわ。」
「とにかくがんばって、撮影を続けてほしいという事が、パパたちの意見だったわ。」
「所で、ルミの携帯、特別仕様?」
「そうかも? パパから間接的に渡されたの。」
「でも、この場所 普通の電波でも大丈夫みたい!」
「おい、なんだ 携帯つながるのか?」
きつねにつままれたような感じで、拓哉は撮影クルーのチーフに、
携帯から電話を入れた。
携帯のことも、そして先程の事も
「訳が分からない、だけども撮影続けられることになったから、集まってくれ。」
「本当なのか?」
「本当だ!」
「とにかく来てくれ」
戻ってきた撮影クルーは、拓哉に詰め寄った。
「一体どうなってるんだ、何が起こったんだ。」
「費用はどうなる?」
「その点は心配しなくて大丈夫そうだ?」
「ルミが、父親とその会社の人間と解決策見つけたらしい?」
「わかった、拓哉がそこまで言うなら、もう俺は何も言うことはない。」
「それではあと30分したら、撮影を開始しよう」
「それで今日はどこで撮影する?」
「そうだなぁ、白樺湖に行ってみようか?」
「OK、では俺らは先に行っている」
「わかった。我々もすぐ行く」
そして拓哉とルミは、スカイラインGTRに乗って白樺湖畔の、
大きなレストランに向かった。
車を、駐車場にとめ、車を降りて、二人は一行と合流した。
拓哉は近くのスワンボートを目指した。
「このボートでどうだ?」
「いいだろ、それでは、それにあった衣装、メイク、スタンバイしてくれ。」
その一言で、一斉にみんなが動き出した。
ルミにようやく笑顔が見えた。
そして拓哉に、それ以上の満面の笑みで微笑み返した。
別のスタッフは、二人乗りのスワンボートを2台オーダーした。
「1番きれいなやつを、・・・」と、言って。
レイクサイドの係員も、そのことをわきまえていて、
「1番きれいなのですね、はいわかりました。」
係員もこれから、何が始まるということを、よくわかっているはずだ。
この白樺湖レイクサイドの、宣伝になることは重々承知の上での対応だろう。
「今日は、天候が快晴に近く全体に顔の表情がフラットになる。」
「サングラスなど、小物等の装備を少し多めに使おう」
拓哉はスタイリストに注文をつけた。
当然そのことはスタイリストも、理解していたという、頷きが返ってきた。
1台のスワンボートに、まずルミを乗せた。
景色は、遠方からなだらかな車山の稜線に、彼女のスワンボートの真っ白なボディ。
エメラルドグリーンの、メルヘンチックな七部袖のブラウス、
ピンクを基調としたパンツルックを、引き立たせる構成で。
にっこり微笑むルミに向け、拓哉はファインダー越しにシャッター切った。
パシャ、パシャと軽快な音を立てて・・・。
拓哉は、遠景からの撮影から始まり、別なスワンに乗り込む。
湖上からセミロング、下からのアップで 一応けじめをつける。
そして、衣装チェンジ。
今度はフレアーのスカートを主体にして、乙女チックなコーディネート、
リゾートを満喫する可憐な乙女を撮る。
おおよそ5パターのテーマをおよそ2時間掛けて
午前の内容は、ほぼ撮りきった。
撮影は順調に進んで、一行は昼食をとることにした。
昼食は拓哉が、蓼科の方にある、蕎麦屋を推薦する。
この辺で、最高の蕎麦を食べさせてくれる店を知っているからと。
少し足を伸ばして、蓼科の方に30分ほど行った所に、
とっておきの最高の蕎麦屋がある。
「以前来たときに、非常にうまかった。」
と、拓哉は旨い事をアピール。
「OK、それではみんなで、そこに行こう。」
一行は連なって湖畔を後にした。
「拓哉、そんなにおいしい蕎麦が食べられるの!」
「そうだなぁ・・・」
「この辺は本場だからな」
「俺が知っている蕎麦屋では、あそこがいちばんいいんだぁー」
「それでは期待しちゃおう・・・」
「おお、期待していいよ!」
「食べすぎるなよ・・・」
「拓哉じゃないもの、そんなに食べないわ」
「しかし、ルミはうまいもの知っているからなぁ・・・」
「でも拓哉も、かなりの食通じゃん、・・・」
「それ、言えてる かもな・・・」
「お互い様ね!」
午後の撮影も順調に進み、白樺湖での撮影がほぼ終わりかけていた。
そんな時、事件が起こった。
OKサインが出て、それぞれのスタッフが片づけの準備をしていて、
スタッフがスワンボートや湖から離れている時だった。
「きゃー・・・」
という悲鳴の後に、ザブーンという水しぶきが起こり、
みんな一斉にそちらの方を向いた。
ルミがボートから離れようとした時にバランスを崩して、
湖の中に背中から落ちていったのだった。
拓哉はその瞬間を見ていた。
というより、ファインダー越しに、彼女がゆっくりと落ちていく姿を、
秒間15コマのシャッターを切り続けていた。
それは、スローモーションで、背中から落ちていく彼女の姿が
拓哉の頭の中で、動画の ワンカットとして収められた。
湖はさほど深くないが、彼女は全身ずぶぬれになった。
そのずぶぬれの格好で、少し湖を泳ぐ格好をしながら、岸に近づいてきて。
岸に近づきながら、ずぶ濡れになった上半身を大げさに左右に動かしながら、
拓哉をにらみつけた。
またそのずぶ濡れのルミが、とてもセクシーで、
拓哉は性懲りも無くシャッターを切り続けていた。
「どうして助けてくれないの?」
「・・・・」
「見て笑っているだけじゃない・・・!」
「すまない、カメラ越に見てた!」
「カメラなんか放り投げて、私を助けにきてよ!」
「・・・・」
「冷たいー・・・」
「私よりカメラの方が、大切なのでしょ?」
「ごめん・・・」
「俺の写真家魂が、ファインダーに映る、スクープを見逃せなかったんだよ」
「スクープ・・・!? なんでー、なんで私が落ちるのがスクープなの」
「写真家って、そんなもんなんだよ」
「特別なことが起こると、自然にシャッターを切ってしまう」
「・・・・・・・・ひどい!」
「それに、落ちても、みんなが救ってくれることが分かっていたし・・・」
「命にかかわるような重大なシーンではなかっただろう」
「それはそうだけど…」
「でも本当に申し訳なかった」
「いつかこの埋め合わせをするよ」
「わかったわ、それでは許してあげる !!」
「拓哉に一つ大きな貸しができたということで良いのね?」
湖の中から、スタッフの手を借りて、ずぶぬれになった体で出てきた。
周りの人間が、タオルをルミに掛けてあげ、近くのホテルに彼女を連れて行き、
用意された部屋にルミをエスコートした。
部屋に入り、ルミはバスルームに急ぐ、ずぶ濡れの服を急いで脱ぐ。
ブラジャーのフックを外す、するとグラビアアイドルのトップモデルと、
決して引けをとらない見事で美しいバストが露になる。
「どうして私、こんな目にあわなければならないの?」
「拓哉のバカ・・、バカ・・」
と、つぶやきながら、パンティも急いで脱ぐ、次いでシャワーを浴びながら昨夜、
・・いや今朝、拓哉に襲いかかるようにして奪った唇。
自分でも、あれほど積極的な行動が出来る事など想像していなかった。
ルミから積極的にキス奪うように・・・、その後拓哉に逆に唇を覆われた。
とろけるような感覚で夢の世界に誘われ、いつの間にか陶酔の世界に引き込まれた。
拓哉の腕枕でおでこを優しくなでられ、
えりあしからゆっくりとふくよかな胸へと、
拓哉の滑らかで華麗な細く長い指先で、
優しくなでられ陶酔の世界に引き込まれた。
熱くほてらされた柔肌を今、おのれの手で触れ、
今朝の感覚が呼び覚まされ、一人恥らうルミ。
あの時、不覚にもルミは拓哉の腕枕の中で眠ってしまい、
その後のことはルミ自身覚えていない。
目覚めたとき、拓哉は、となりにいなかった。
Cap-10 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami




