1-釣り上げたぞ・・スコティッシュフォールド?子悪魔な野良猫・・・?
写真家木村拓哉、これはと思う娘をスカウト。その娘をモデルとして撮影雑誌やCMに。写真家としてモデルのルミをクールに接するが、彼女の魅力に翻弄される。そして拓哉の心に恋心が・・・しかしその後大人の女性が現れ本気で愛を感じてしまう、そこで、モデルのルミとスパーレディー沙霧との間に・・
1-釣り上げたぞ、スコティッシュフォールド?子悪魔な野良猫・・・?
日曜日の昼少し前、穏やかな日、昨夜の仕事が長引き、少し寝不足気味。
軽く近くの“パーラー風の喫茶店”で、モーニング、かろうじて間に合った。
コーヒーと厚めのトーストをゆっくり食べた後、その店を出る。
拓哉はルート246号から、原宿界隈をゆっくりと歩いている。
ハッセルブラットを首にかけ、左手でボディを押さえて、
右手は常に、シャッターボタンに手をかけている。
若い女の娘を物色しながら・・・・。
“ウン・・ これはいけるぞ。” “ヨーシ・・・、決めた。”
思うや否や、拓哉はガードレールを飛び越えて反対側の歩道にまっしぐら。
わずか5秒間の早業で彼女の目の前に移動。
“しかし、なぜ?・・・確実に美脚なのに・・・・”
“わざと、脚を見せないのか?”
“そうか・・・、やたら近づいて来る、スカウトマンを欺くためなのか?”
“服装も、化粧もあえて地味に・・・ 回りを欺くように 周囲に溶け込んでいる。”
しかし、拓哉のファインダー越しの眼は確信する。
めったにいない、ハイレベルの娘だ。
“太目のジーンズの下は、抜群の美脚に違いない。”
“メイク、ベースの基礎はしっかりと抑えている。”
“しかし、わざと控えめに、目立たないように・・・”
“俺の眼に狂いはない!”
“かなりいけている。掘り出し物だ。”
“ファッションセンスも良い。”
“プロポーションも抜群。”
“ほとんど修正を加えることなく、いける・・・・”
「君、最高だね」「キマッテル ね!」
「・・・・」 彼女は、しばらく呆然と拓哉を見つめる。
「プロポーションもすばらしいよ・・・・!」
「撮らせてくれない?・・・・」
拓哉は、そう言いながらも、もうすでにシャッターを押し続けている。
5枚6枚・・・アッという間に10枚。
すでに人差し指でシャッターを押しては、親指で、くるくるとフイルムを巻きあげている。
どんなに澄まして、相手を無視しようとシャッターをバシャバシャ切られれば、
多くの女性は何らかの反応をする。
「エー・・・・」
「うそー・・・」 「何よー・・・」
「いいねー・・・」「そう、目線こっち・・・」
「勝手に・・・」 「撮らないでよ・・・」と、拓哉を睨みつける。
その間に、確実に銀塩フイルムに、映像が次々と刻み込まれていく。
彼女は、拓哉のペースに完全に ハマッテ しまっている。
彼女のスコティッシュフォールドの瞳は、もう拓哉にロックオン。
まず、拓哉が狙う女の子は、キャッチされたくてやって来るような娘は、
決して狙わない。
そんな娘は、すぐにわかってしまう。
拓哉の眼は誤魔化せない。
自意識過剰で、自分の主張ばかり。
わがままで、自分が一番と確信している。
愛機で良いなと思った娘をファインダーで覗き始めの頃、
拓哉は何度も痛い思いをしている。
いくらスタイルが良くても、そのような娘は決して手を出さない。
逆に、モーションを掛けてくる娘も数多くいる。
色目を使って・・・、
いかにも、・・・・・それを待っている
そんな娘は当然無視!
拓哉のターゲットは・・・
少し控えめ、
身なりに違和感なし、
奥ゆかしさがあり、
家柄の良さは風貌から
少し勝気な娘が 良い!!!
あくまで、表向きからの判断ではない。
拓哉の感性に ビビッ と来る娘!
しかし、たまに狙った娘は、すでにある大手のプロダクションに内定、
もしくは現在、養成中の子で、今まさにデビューしようという娘で 後の祭り。
そんなとき、拓哉は先を越されたと、地団太踏む。
それでも、どうしても欲しい娘は別の方法でアタックする事もある。
裏技、奥の手を使って・・・・
今まさに、拓哉は、この娘はいけると思って、
ファインダー越しに、最高の笑顔で、率直に話しかける。
「実は・・・君の体、・・・暫らく僕に預けてくれないか?」
「えー・・・・」 「どういう意味・・・?」
「実は、或る雑誌の特集で、君を使いたい!」
「“高層ビルで働く、今時のOLのファッション”」
「てな・・・タイトルで、少し君を撮りたいんだけど、どうかなぁ・・・・?」
「そんなこと言いながら、もう、既に撮ってる、じゃん・・・?」
「ずるい・・・わ!」
少し怒った顔で拓哉を見つめる。
「お願いします。」と、拓哉は彼女の肩に手を載せる。
「気安く触らないで!」と、少しむきになってその手を払いのける。
ルミは、“自分の心の中を見透かされている・・・・!”
それと、・・・彼女のプライドが傷つけられた気がして・・・・、
わざと怒った顔になる。
「怒った顔がまた画になるね!」「可愛いよ・・・!」
「・・・・・」
拓哉は、そこでまた、シャッターを切る。
彼女は拓哉をにらみつけ、半ばあきれ顔で、
「もー・・」と、少し怒って・・・・その後はにかむ。
もう撮られることに、さして大きな抵抗は見せていない。
そこが拓哉のねらい目だ。
「じつはこれ、カメラテスト・・・」
「現像して出来る、映像を見るための・・・」
しかし、俺が見た君の感じでは、まず間違いなく合格だ。
「もし時間があったら、近くに、僕がよく使うスタジオがあるんだけど・・・・」
「どう・・・?」
「危ないなぁ…変なとこ、連れていくんじゃないでしょうね。」
「どういう意味・・・!」
「僕はそんなことしないよ。」
「たまに変な人もいるけどね!」
「・・・・・・・・」
「グラビア撮影なんて言って、スタジオに連れ込んで・・・」
「ヌード撮影とか・・・」
「挙句の果てに、AVなんか取らされちゃたりして!」
「・・・・・・・!」
「そんな事もあるって聞くね・・・・」
「俺は・・・そんな卑怯なことしないよ…」
「・・・・うそ・・・・!」
「ははは、僕のことそんなに心配…?」
「確かに、君は心配だよねえ・・・」
「そう言う人も多いしねえ・・・・」
「・・・・??・・・」
「僕の眼を見て・・・」
「どう・・・」
「僕の眼、信じられないかなぁー・・・・・」
「あなたみたいな、少し、いけ面な奴が、危ないんだと思うけど・・・?」
「えー・・・・?」
「俺のこと、いけ面だと思ってくれているんだ…!」
「・・・・」
「それは嬉しいなぁー」
「本当に本当!・・・俺は・・・」
「俺はそんな危ない奴じゃないよ!」
マジな顔で彼女をじっと見つめる拓哉。
「・・・・・」
彼女は言葉に詰まる。
しばらく考えて
「なんか、証明できるものある?・・・・」
「残念ながら、俺は、フリーでやっているので・・・、」
拓哉は、名詞でも出してみようかと思うが、躊躇った。
「社員証なんて、紙っぴれ、ないんだよなぁ・・・!」
困った顔をして、しばらく考えて
「じゃあ、俺の免許証、君に預けるよ!」
と、言いながらジーパンの後ろポケットから、うす汚れたた財布を出して、
免許証を取り出し、彼女に免許証を手渡した。
「へぇー…・・・木村拓哉って言うんだ。」
「あの超有名な彼と、同じ名前なんだ。」
「そうなんだよなぁ・・・、どちらかというと、迷惑しているんだー。」
「ウソー・・・!!」
「ほら・・・・そんな目で・・・・見るだろう・・・・」
「でもやっぱ・・・・」
「得してるんじゃないの・・・?」
いやそうな素振りを見せる拓哉!
「わかったわ!」
「・・・・・ん!」
「あなたを半分信じることにするわ。」
「えー・・・半分なの!」
「当たり前よ!」
「あなたが、かなりいけてる男だから・・・!」
「それは、・・どう言う事・・・?」
「誉められているのかなぁ・・・!」
二人の会話は少し和やかになり、打ち解けた感じになった。
距離もぐっと近づいて・・・・・
これは、顔、スタイルだけでなく、頭脳も・・・
拓哉は確信した!
“コレハ、イケル” と!!
拓哉はタクシーを止めて、彼女を先にタクシーの中に座らせた。
「青山3丁目の STADIO弓玄」と、行き先を言った。
タクシーは黙って頷き、車を発進させた。
STADIO弓といえば 、超一流の所でめったな人は、利用することができない。
拓哉にとって、或る人物のお陰でコネクションが効いており、かなりの無理が効く。
「ところで、君の名前まだ聞いてなかったね?」
「・・・・」
「僕の方はもう知っているよね?」
「・・・・・そうね!」
躊躇しながら・・・
「私の名前は北沢ルミ!」
あまり名乗りたくないようだが、何か理由があるのか・・・・?
「で・・・・君は、今、何をしているの!」
「学生・・・・! それともOL?」
「ブー・・・内緒・・!」
「今日会って、初めてだから、それ以上は聞くの、やめようね!」
拓哉は車の中でも、ルミを撮り続けていた。
既にルミはもう既に、レンズ向けられることに、麻痺してしまっているようだ。
「ところで、お腹空かない・・・?」
時間は今おそらく、午後2時を過ぎた頃だろう。
「そうね、少しお腹すいたかしら…!」
「何が食べたい?」
「おいしいお肉が食べたいわ・・・!」
「じゃあ、ステーキ・・・それとも焼き肉、スキヤキ?」
「ステーキがいいな!!」
「OK!」
「運転手さん、それでは、六本木の“香里奈”に変更してくれる!」
タクシーの運転手は黙ってうなずいた。
「拓哉君、て・・・・、以外とおいしい所知っているのね!」
「・・・・・・・そうだね!」
「私も何度か行ったわ、あそこのステーキおいしいもんね!」
「ああ・・・・・・」
いつの間にか、拓哉君になっている!
彼女は一体・・・・
拓哉は、携帯から六本木の香里奈へ予約の電話を入れた。
この場所も拓哉は常連である。
彼はこの上なく、肉が好きなのだ。
拓哉は、ルミの物応じしない態度が気に入った。
それに、“拓哉君”だ・・・・
私の目に狂いはなかった。
ある程度、上流階級で、言いたいことははっきり言う。
もしかすると、何処かの社長令嬢・・・?
一般的に普通の娘は、
「何か食べたい物を?」と、聞くと、
少し、相手の顔を見ながら、見当違いのものを注文したりする。
たとえば、ラーメン、スパゲティ、ハンバーグ等、もしくは目いっぱい高級な料理。
その注文の後 大丈夫かなという目を、拓哉に向ける。
その点、ルミは全然気後れせずに、今食べたい物を素直に、拓哉の目を見て注文した。
今まで、拓哉は何度となく、このようなスカウトを繰り返して来た。
間違いなく、彼女は今までの中で最高だろう。
拓哉の表情には、自身が溢れていた。
Cap-1 ファインダー越しに恋して Fin
See you later Nozomi Asami