嘘吐きの告白。
一回目は普通だった気がする。
「君が好きです。付き合って下さい。」
「断りまーす。」
小学生のころから付き合いのある幼馴染みは『ただの幼馴染み』としか思えなくて、わたしはあっさりと断った。
けれどここからが本番だった。
顔を合わせるたびに言われる言葉。
「君が好き。」
何回言ったら気が済むの?
何回断られても諦めないんだね。
ある意味ストーカー行為じゃないか?
まあいいか、そのうち諦めるだろう。
そう思っていた時期が私にもあった。
十回目―――
「君はどんな人が好きかな、僕は君が好き。」
「あんたとは正反対のタイプがいいかな。」
二十回目―――
「君の好きな曲は何かな、僕は君と同じ曲が好きだよ。」
「失恋ソングが大好きだね。」
三十回目―――
「おはよう、今日もやっぱり可愛い君が好きです。」
「おはよう、今日もやっぱりしつこいね君は。」
四十回目―――
「これで40回目だけど…未だに君が好き。」
「数えてたのか、だが断る。」
しつこくないか?
いい加減にしつこくないか?
あんたが一途だってことは十分に分かったよ。
もうこうなったら、いつまで言うのか数えてやろう。
五十回目―――
「今日もいい天気だね、好きです。」
六十回目―――
「お大事に。だけど風邪を引いてる君も好きです。」
七十回目―――
「ドラマの再放送を思わず見逃しちゃうくらいに君が好き。」
八十回目―――
「コーンポタージュの上に浮かんでるパセリみたいな君が好き。」
そろそろ意味不明になってきてるんだけど…大丈夫?
そう言ってやったら、君は笑ってこう言った。
「意味不明になっちゃうくらいに君が好きです。」
いやいや、そのセリフも意味不明だから。
それはクリスマスのこと。
街中で偶然彼と遭遇した。
イルミネーションみたいに目を輝かせた彼は、九十九回目の言葉を言う。
「君が好き。」
「これが好き納めだよ。」とかやっぱり意味不明なことを口走り、彼は走っていった。
その二日後に君が死んでしまうなんて、このときは思ってもみなかった。
交通事故で頭を打っての即死だった。
「即死がせめてもの救い。」だなんてやめてよ。
なんの慰めにもならないから。
最後に会ったクリスマス、走る彼の後ろ姿。
そのとき思った言葉を、ちゃんと伝えれば良かった。
それから六日ほどが経った元日の今日。
わたし宛に届いた年賀状の中に、彼からの年賀状もあった。
下手くそなイラストで、けれど手書きで…下手くそな彼の文字。
『あけましておめでとう。今年もやっぱり君が好き。これで百回目です!百一回目は次に会ったときに言うね。』
「―――嘘吐き。」
百一回目なんて、ないくせに。
わたしが君と同じ言葉を百回繰り返したって、君にはもう届かない。
それでも私は言うんだろうな、これからもずっと。
「わたしも、君の事が好きでした。」