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終焉の怪物  作者: 愛姫
1/5

プロローグ

いつから、こうなったのだろう。

どこから、こうなったのだろう。

どうして、こうなったのだろう。

目の前の光景は、誰も予想などしていなかった。

わからない。私たちは今何を見ているのだろう。




「きゃあああああ!」

「助けてくれぇえ!!」

人々の悲鳴が四方八方からつんざく。

人々が逃げ惑うのは、あるものに追われるからだ。

「怪、物……」

口からこぼれた言葉が、その存在をしっかりと確認させた。

心臓がばくばくしているのがわかる。足が震えて止まらない。

怪物はドロドロとした泥の様な図体。人を飲み込むたびにその体は大きくなっていく。

一体であればまだこれほどに人々が四方八方駆け回らないだろう。まだ何とか打つ手があったのかもしれない。しかし、それは一体どころではなく、何体も現れたのだ。

「うわああああ!」

近くで断末魔が上がり、私はとっさにそれを見る。

怪物の手なのだろうか、それに捕まった男性が、ドロドロと怪物と同じように泥と化す。

呼吸が早くなる。

何が起きている。何が起きているんだ。

私はその怪物を背に走り出す。

どこに行けば良いのだろう。安全な場所など思いつかなかった。

ただ怪物を見つけては反対側へと走る。

怪物はドロドロとしたその手のようなものを何本も伸ばしてくる。それを見ると襲う意思があると取れた。

 勢いは早い。襲われる人間がほとんどだ。地に足を取られながらも、駆ける足は止めない。

 はっと目の前に移った光景に思わず足を止めてしまった。

 赤子が怪物に捕まって、父親らしき男性が怪物に登っている。

 駄目だ、怪物には触れられただけで、泥と化してしまうのに。

 早くなる呼吸。それでも目はしっかりとその光景を見てしまう。

「こんなの、夢だ。そうだ夢なんだ!」

 男性は叫んだ。

 そうか、夢ならこの光景に頷くことができる。夢。これは、

「ああああああ!」

 男性の悲鳴に再びそのほうを見る。

 赤子が泥に変わっていく。目が口が泥でドロドロと崩れていく。これは夢、夢なんだ。覚めろ!

「夢なら覚めてくれえええ!!」

 赤子であった塊に手を伸ばす男性の口がドロリと崩れていく。ボトリと音を立てて、怪物と同化していく。

 夢、なら、覚めて……っ。

 怪物の顔なんてどこにあるのか、そもそもあるのかすらわからないが、向きを変えたことはわかる。

 ゾクリと背筋に寒気が走る。

 私はまた息を飲んで走り出した。

 行き場はどこに、誰に助けを求めれば。

 走っても走っても光景はみな同じ。

 あの化け物はどこまで、何体いるんだ。

 たどり着いたのは自宅だった。安全だとは思わないが一番安心できるとしたらここしかない。

 荒くなった息を整え、寝室に入る。

 外はどうなっているのだろうか。家の中はどうもなかったけれど。

 恐る恐る閉じたカーテンを小さく開ける。目だけ出してきょろきょろと見渡すも何も見えない。ここまでは来ていないのか。

 いきなりの爆発音。驚いてカーテンを大きく開け、その方向を見る。

 瞬間、強い光が視界を奪い、瞼を閉じた瞬間に爆風がガラスを割り、私の体を浮かせた。抵抗することはできない。私は強く壁に体をぶつけて、意識を失った。

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