2人のクリスマス in 2017ver。
┌(┌'ω')┐<ゆきのの百合スマス記念
┌(┌'ω')┐<10年後のゆきのの
イルミネーション達が激しく自己主張する、クリスマスイブの夜。私は、メールと辺りを見比べながらお目当ての人を探す。………………えーと、…………ツリーの下ぁ!?定番スポットすぎて探せないよ………………。
そんなことをボヤきながら探すと、待ち人はすぐに見つかった。…………けど、なんか怪しい。
「おーい、雪乃ー!!」
あ、走ってきた。………………うわっ!?
「バ、バカ望乃夏!?あんな大声で名前呼ばないでよ!!」
人目もはばからず、私の襟を持って詰め寄る雪乃。………………ぐ、ぐるじっ………………
「…………あ、ご、ごめん………………」
泡を吹きかけた私を見て、雪乃が慌てて手を離す。………………し、死ぬかと思った………………。
「………………ま、とりあえずここを離れましょ。………………話は後よ。」
そのままスタスタと歩いていく雪乃。………………もう、こういう所は10年経っても変わらないんだから。
「待ってよ雪乃っ。」
スタスタと歩いていく雪乃を必死で追いかける。…………こ、コンパスは私の方が長いはずなのに………………。
雪乃に付いていくと、やがて大通りに出る。
「…………ここね。」
雪乃が足を止めたのは、お高そうなイタリア料理店の前。
「ハァ、ハァ………………。や、やっと追いついた………………」
「もう、遅いわよ望乃夏。」
「ゆ、雪乃が早すぎるんだって………………」
荒い息を整えながら言うと、少しだけ雪乃が膨れる。
「………………まぁ、『向こう』ではそんなにのんびりしてられないもの。」
「だろうねぇ。」
そんなことを話しながら、お店の中に入る。
「すみません、予約していたすみも…………じゃなかった、白峰ですけど。」
「はい、こちらの席になります。」
2人がけの席に案内されると、コートを脱いで腰掛ける。それを見て雪乃も、コートを脱いでかけていたサングラスを外す。
「………………大丈夫なの?お店の中は薄暗いけど、サングラス外しちゃって。」
「いいのよ。これかけたままだと望乃夏のことよく見えないし………………それに、プライベートで外を出歩く時は四六時中かけてろって言われても面倒くさいもん。」
「ハハハ、全日本選手は辛いね。」
……………………雪乃は悩んだ末、卒業前からかけられていた実業団の誘いを受けて就職、今は北の方でチームに在籍してエーススパイカーを務めてる。オリンピック候補にもリスト入りしてる、という噂も聞いたことがある。
「………………からかわないでよ。それに望乃夏こそ……………………早く『白峰』の名前に慣れなさい。」
「うーん、気をつけては居るんだけど………………」
そして、私――――『墨森』 望乃夏は、『白峰』望乃夏になった。
「………………でも、ほんとに良かったの?私の方の名前で。」
「………………うん。これで、良かった。………………実家の呪縛から、きっぱりと逃れられて、さ。」
私は高校を卒業した後、実家と離縁して薬学部に進学、学費も稼ぎながら猛勉強して、なんとか一昨年卒業して……………………雪乃の、お嫁さんになった。今は近くの薬局に務めながらアパートで一人暮らししつつ、お金を貯めては雪乃の試合の応援に行く生活をしてる。
「………………しっかし、高そうだねぇこのお店。」
「大丈夫よ、これぐらいなら私が払ってあげるから。」
と、雪乃がクレジットカードを取り出す。
「ふぇー、さすが雪乃。お金持ちー。」
「ちゃ、茶化さないで………………望乃夏に全部払わせるよ?」
「そ、それは勘弁………………」
………………次の応援のためにめっちゃ節約生活してるのに………………
「………………冗談よ。」
その時、ちょうど良く料理とワインが運ばれてくる。
「………………望乃夏。」
「………………うん。」
「「クリスマスに、乾杯。」」
私が料理を食べ進める一方で、雪乃はワインの量が増えていく。
「雪乃、飲み過ぎないでね?」
「…………大丈夫よ、私強いから。」
「………………んもう、雪乃はお酒に飲まれやすいんだから。この前の同窓会だってクラスの子を飲み潰した挙句に自分もトイレにこもっちゃったじゃない。」
「あ、あれは砂塚さんが仕掛けてきたからで………………」
「はいはい、ワインはそこまで。」
雪乃の前からボトルを取り上げると、雪乃は名残惜しそうにボトルを眺める。
「………………そう言えばさ、この前雪乃が出てるテレビ見たよ。………………フフ、ガチガチに緊張してたね。」
「そ、そんなの見なくていいから/////……………………そ、そう言えば文化は最近どうしてるの?」
あ、誤魔化した。
「ああ、安栗さん?この前見に行ったけど、まぁ、すごかったよ…………。」
そして私の元・好敵手にして友人である安栗 文化さんはと言うと………………現在3児のママさんである。
「………………まさかママになるなんて………………」
「………………卒業式の時の一件で完全に吹っ切れたらしいわ。あれでいて文化は面倒見がいいのよ?………………まぁその分スケベだけど。」
「ハハ、それは子供たちにも遺伝してるみたいだよ………………」
「…………一体文化は何を教えこんでるのかしら?」
私は、すっかり肝っ玉母さんになった友人の姿を思い浮かべる。………………でもお腹に赤ちゃんを抱いたままトラクター運転するのは見てて怖いからやめて欲しいんだけど。
「今年生まれた子にはユキノって付けようとしたらしいよ?もちろん止めたけど。」
「グッジョブ望乃夏。」
そんなことを話していると、料理はすぐに空になる。
「………………これでもう、お別れか。」
「………………名残惜しいけど、ね。」
お会計を済ませると、お店の前で雪乃と向き合う。
「………………それじゃあ、次は二月の試合の時ね。」
「そうね。」
どっちからとも無く、身体を寄せる。もう何百回、何千回目なのか分からないその動作を、私達は淀みなくこなす。
今夜の雪乃は、ちょっとお酒臭かった。
「………………じゃあ、ね。」
と、立ち去ろうとする私の手を、雪乃が握る。
「………………実は、明日も休みなの。………………それに今戻っても新幹線乗れないし………………望乃夏、………………飲みすぎちゃったから、泊めて?」
「………………雪乃、最初っからそのつもりだったんでしょ?」
「………………ふふ、あたり。」
「………………そう言うと思った。」
「………………お布団、一つしかないんだよねぇ。」
………………まぁ、一つあれば私達は充分なんだけど。
「…………大丈夫よ、だって私達だもん。………………汚しちゃったら新しいの買ってあげるわね。」
「よ、汚す前提なの………………?」
………………明日も仕事だし、けっこう気に入ってるんだけどなぁ。
「………………程々に、ね?」
すると、雪乃はニヤニヤしながら言う。
「………………あら?私は『吐いちゃったりして』汚したらって意味だったんだけど、望乃夏は何を想像してたのかしら?」
「………………な、なんでもありません………………。」
そんなこんなで、雪乃を私の家に連れて帰った。
………………なお、お布団をダメにしたのは私の方だった。
正直これが最終話でもいいんですよねぇ