白峰 雪乃の一日。―中(3)編
ゆきのんの誕生日終わったけどまだ続きますん
………………はぁ、疲れた………………
私は授業が終わると同時に机に突っ伏した。………………なんでこんなコト、授業で教えるのよ………………。
「………………お疲れ様………………」
憔悴しきった様子の砂塚さんが後ろから声をかけてくる。
「………………そっちも、お疲れ様…………」
げんなりとした様子で答える。
「………………この後の授業、まともに受けられるかしら………………」
「私も、今日は落ち着いて弓を引けそうにないわ…………はぁ。帰って総子でも撫でてようかしら。」
「…………一気に老け込まないでよ。」
ため息をつくと、砂塚さんの膨らみに目を向ける。
「………………何?」
「………………別に。」
………………女性ホルモン、ねぇ…………。
「………………ちょっと顔洗ってくるわ。頭も冷ましたいし。」
「………………なら私も行こうかしら。…………さっきから変なこと考えてばっかで疲れたし………………」
よろよろと砂塚さんも立ち上がる。その時に気がついたけど、他のクラスメイトも何人か机に突っ伏してて………………これ、まともに授業になるのかしら………………?
洗面台で顔を洗うと、少しだけ気持ちが落ち着いた。………………でも、変なのが思い浮かぶのだけは、まだ治んない。
「…………どうしたの?」
「…………いや、まだ落ち着けなくて………………。」
「………………そうよね………………。」
砂塚さんも、どこか落ち着かないのは同じみたいで。
「………………ねぇ、砂塚さんも、誰かとそういうことしてみたいって、思ったことある?」
「い、いきなり何を聞くのよ!?……………………そ、それは…………」
激高したかと思えば、すぐに言いよどむ。
「………………私が悪かったわ、ごめんなさい。今のは忘れて。」
頭を抱えて洗面所を出ると、
「あれ、雪乃………………」
「ฅ厂↩€*♪㌻㌫㌦→㌍Σ!?」
「ゆ、雪乃、それ何語………………?」
驚きすぎて、思わず言葉にできない何かが口から出る。
「どうしたのよ………………あら。」
砂塚さんが望乃夏を見て、事情を察したらしく「先に戻ってるわ」と足早に去っていく。ちょっと、一人(?)にしないで………………。
「…………の、望乃夏は、どうしたの?」
「いや、次の時間は保健体育なんだけどさ、何でも重要なこと教えるって言うから顔洗って目を覚まそうかと。」
「㌃㌶≒¥↑≒♭!←ωω∀µ灬ฅ㌦㌧㌘¾§!?」
「だからそれ何語………………?」
の、望乃夏もあの授業受けるの!?
「あの先生が重要なことって言うからには、何か面白いことかなぁ?雪乃、何か知ってる?」
「し、知らないわよ、そんなの…………」
「………………そう?なら、また後でね。」
ひらひらと手を振って洗面所に入っていく望乃夏。………………ど、どうしよう、望乃夏もあの授業を………………。
いや、もっと心配しなきゃいけないのが他にも居たわね………………。文化は一体、どんな反応するのかしら?………………文化は新しいことを覚えたら実践したくなる性格だから…………、やっぱり今日は練習休もうかしら………………。
席に戻ると、待ち構えていたかのように歩み寄ってくる人がいた。
「………………あの、白峰さん…………」
「………………何よ、長木屋さん。」
しかもクラス中の興味がこっちに向いてるし………………。
「………………その、今日の授業…………」
「………………ごめんなさい、まともに聞いてなかったわ。」
「………………そ、そう………………。」
少しだけ長木屋さんの声が明るくなる。………………な、何よ…………
「…………それで、さ…………白峰さんは同室の人と………………お、お付き合いしてるんだよな?………………それって、ど、どんな気分、なんだ?」
「………………気分、ね。そうね、今までは気にならなかったことがすごく気になって、正直疲れるわね。でも。」
一拍置いて、
「………………幸せよ。朝と夜は一緒に居られるもの。」
周りから微かに黄色い声が上がる。
「そ、そうだよな、うん!…………だけど、部屋まで一緒だと気遣いとか…………」
「私が逆にしてあげてるぐらいよ。一度寝たら突っついたって起きないし、朝だって私が起こしてあげてるし、制服だって脱いだらベッドの上にぽいぽい置いてるし、人の布団でも寝るし、もう気ままな猫一匹飼ってるようなものよ。………………でも、温かいから。」
「あーそれ分かるっ。毎朝のように起こしてあげないといけないし、お世話もしてあげないとだし、寝てる所にいきなりちゅー………………を…………」
あ、真っ赤になった。
「………………長木屋さーん?」
「ごめん今の忘れて。」
「………………まぁ、良いんじゃないの。………………そういうこと、してみたいなら。」
「な、なんでバレて………………ち、ちなみに、白峰さんは………………同じ部屋の子と………………し、したことあるの!?」
「………………………………耳貸して。」
近づいてきた耳に、そっと言う。
「……………………大失敗したけどね。」
長木屋さんがまた赤くなる。
「………………ともかく、自分のペースでやればいいんじゃないかしら?」
「………………はは、私達の方がお付き合いは長いのに逆にアドバイスされるとはね……………………ん、わかった。参考にする。」
そう言って、授業のチャイムと同時に長木屋さんは席に戻っていく。それを見て私も席に戻ると、砂塚さんが話しかけてきた。
「………………変わったわね、白峰さん。私の休学前とは大違い。…………少し丸くなったんじゃない?…………あ、性格の方。」
「あら、そうかしら?」
「前は『私に関わらないで』って感じの空気出してたのに。」
「あら、それはあなたも同じじゃない?」
「…………そ、そうかしら?」
その会話は、先生が入ってきたことで止まった。
………………人って、変わるのね。
ひじりんのイメージがだんだん壊れてく…………
一花様芝井てんて申し訳ありません