望乃夏のメガネ―望乃夏(メガネの日記念)
「ふにゅう………………」
私は、横にあるはずの温もりと柔らかさを求めて手を伸ばす………………温もりはあったけど、柔らかさは掴めなかった。それで目を覚ます。………………あ、もう六時過ぎたんだ。
雪乃がいないのを残念に思いつつ、手探りで私の相棒を探す。…………あれ?
いつもより時間をかけて見つけたそれは、なんか歪んでて。………………あちゃー、寝返りうった時に潰しちゃったか。………………また直しに行かないとなぁ。でも今は………………とにかく眠いや。
雪乃の熱が残る方に身体を動かして、新たな温もりを求める。そしてそのまま二度寝した。
次に目を覚ましたのは8時ぐらい。伸びをして身体を起こすと、歪んだメガネを手に取って…………かけるのを止める。いいや、今は。
そのままベッドを降りると、テーブルにつく。えーと、コップは…………記憶とカンで手探りで探す。そこに、部屋のドアが開く。
「ふぅ、ただい…………まっ…………」
ん、雪乃かな?そっちを向いて、合わない焦点をじーっと合わせる。
「ひっ!?」
『雪乃?』は床に尻餅をついて後ずさる。あ、もうすぐ焦点合いそう。
「の、望乃夏、私が悪かったからっ…………そ、そんな睨まないでっ…………」
あ、やっぱり雪乃だ。目を凝らすのを止めると、雪乃が胸をなで下ろす。
「こ、怖かったわ…………眉間にすごいシワができてて、ゴゴゴゴって効果音が聞こえてきたわ…………」
「あはは、ごめん。………………メガネ壊しちゃってさ、よく見えないんだ。」
雪乃がビクっと震えたように見える。………………あれ?
「その…………ごめん、望乃夏。壊したのは私なの…………。」
………………………………へ?
「…………床に落ちてて…………好奇心から掛けてみたら、眩暈がして…………へたりこんだ瞬間、バキッと。」
「………………そう、だったんだ。」
「………………怒ってないの?」
「…………まぁ、床に落っこちてたんなら私のせいだし。下手したら踏んづけてもっと酷いことになってたかもしれないしさ。で………………雪乃。私のメガネを掛けて見た世界はどうだった?」
雪乃は少し戸惑ったあと、答える。
「…………最悪だったわ。全部が歪んで見えて、気持ち悪くなったわ。」
「だろうねぇ………………。でもね、それが無いと私はまっすぐ見えないの。今は雪乃は肌色の塊にしか見えないけど、これをかければ肌色の塊はぷにぷにしたクールな女の子だって分かるんだよ?」
「そ、そんな大切なものを…………。」
「うん、私にとっては大切。だから、直しに行くよ。…………その前に予備のメガネ探さないと。」
よっ、と立ち上がると、クローゼットをごそごそする。
「…………何してるの?雪乃にも付いてきてもらうかんね?」
┌(┌'ω')┐<まだつづくよ