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明梨と文化。その1

安栗 明梨のサンプル的な何か。

つづくよ。

........................はぁ。全く、姉さんも無茶言うよ................。

私................安栗 明梨は、机に突っ伏して頭上の話をやり過ごす。................憧れの星花に入れたのはいいけど、女子校ってこんなやかましいとこだったのか................。

「ねぇ安栗さんはどう思う?」

「え、私................?」

いきなり、私の方へと話の矛先が飛んでくる。................あー、えっと................

「................そういうのも、あり、なんじゃない?」

適当に相槌(あいづち)を打つと、話はまた別の方向へと飛んでいく。........................せ、せーふ................?

その時、頭上でチャイムが鳴る。

「んじゃそういう事でねー。」

と、私の席の周りに群がっていたクラスメイトは、銘々元の席へと散っていく。................つ、疲れた................。

結局その後も、休み時間の度にどこかしらに塊が出来てはチャイムと同時に散る、ということが繰り返される。その度に呼ばれないことを期待して突っ伏すけど、そう簡単に見逃してくれることなんて、そんなに無くて。

「安栗さん、どうしたの?体調悪いの?」

「........................あー、いつもの事だから、ほっといて................」

軽くあしらって追い返す。................常時腹パンされてる痛みなんて、毎月のことだから。

そんなこんなで授業をやり過ごすと、いつの間にかホームルームも終わって教室の人影も少なくなる。................さてと、私も帰るかな。

立ち上がろうと足に力を入れて................やっぱり止める。いや、止めさせられた。

(.......................強烈なのが来た................)

今までのが軽いジャブだとしたら、今のはトドメのボディーブロー。春も半ばなのに、冷や汗が流れる。咄嗟にポケットの中の携帯を掴んで、ある番号を呼び出す。思ったよりもすぐ繋がった。

「................教室、動けない................」

それだけ伝えると、すぐに電話が切れる。................少しして、タッタッタッと小気味よいリズムで廊下を走る音が聞こえてくる。足音はこの教室の前で止まって、ガラリと教室の後ろのドアを開けて入ってくる。

「................大丈夫か、明梨。」

「........................ふみ、ねぇ................」

................文姉(ふみねぇ)ーー安栗 文化は、私の様子を見るとそっと頭に手を置いた。

「................また薬飲み忘れたな?」

「................ちゃんと二錠飲んだもん。」

「んー................やっぱ効かなくなってるのか。耐性?っつーんだっけか、それが出来ちゃってんのかもな。今度墨森ちゃんに聞いてみる。................とりあえず、立てそうか?」

私は無言で首を振る。

「................わかった。腕借りるな。」

私の右肩に腕を入れて、立たせてくれる。体重を少しだけ預けると、空いた肩には私の荷物を持ってくれる。

「部屋の鍵は持ってるか?」

私はブレザーに目を落とす。

「................そうか。ならもうちょい頑張れ。」

と、私のことを励ましながら寮まで連れ帰ってくれる。

「................部屋あっためとく。」

と、私をトイレに置いて文姉は私の部屋へと走っていく。だるい体を引きずってなんとか『始末』をつけた頃、文姉が戻ってくる。

「................気分は?」

「................最悪。」

「................そうか。」

文姉に引きずられて部屋に戻ると、制服から着替えさせられて布団へ入らされる。

「................待ってろ、今温かいものでも買ってくる。」

制服をハンガーに通して文姉が言う。

「........................ありがと、文姉。」

「気にすんな。................それより、本気で具合悪い時は寝てろよ。お前それで何回倒れたか覚えてんのか?」

「........................ん、今度から、そうする................」

布団を目元まで引き上げて、文姉を見る。

「................毎回毎回同じこと言っては、次も倒れてる気がするんだけど?」

はぁ、とため息をつく文姉。................心配、かけて、ごめん................。

「................とにかく、大人しくしてろよ?」

それだけ言うと、文姉は部屋を出ていった。

........................また、文姉に迷惑かけちゃったな。

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