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望乃夏の誕生日。―ホントの後編

あれから私は計画を練って、望乃夏の誕生日に備えた。

(2/7は土曜日................ちょうどその日は部活半日だし、私が起こさなきゃ望乃夏はお昼まで起きてこないし。................ふふ、完璧。)

噂のクレープスタンドにも足を運んで、土曜日もそこにいることは確かめた。後は望乃夏を連れてデートするだけ。ばっちぐー。

(........................さて、今日は金曜日................それにしても、望乃夏は自分の誕生日に気がついてるのかしら?)

私の誕生日はちゃんと祝ってくれたけど、望乃夏のことだから自分の誕生日なんて忘れてるかもしれない。........................あれ、望乃夏と言えば................

(........................そうだ、望乃夏に明日空いてるかどうか聞くの忘れてた!!)

一番大事なことを聞き忘れるなんて................やっぱりツメが甘かったわね。授業が終わったら早く聞きに行かないと........................。

「................峰さん?白峰さーん?」

「はっはい!?」

そんなことを考えてると、不意に先生から指名される。

「........................教科書のここの続き読んで、ってさっきからずっと言ってたんだけど?」

「す、すみません........................」

................えと、次は........

(このページのここからよ。)

と、横から小声でクラスメイトが教えてくれる。

「........................宮は奥の方にいと忍びておはしませど、ことごとしからぬ旅の御しつらひ、................」

なんて読み通していると、不意に教室の後ろの扉が開いて用務員さんが入ってくる。

「................すいません、白峰さんをお借りします。」

「................私?」

「................同室の子が保健室に担ぎ込まれたので、すぐに来てください。」

「望乃夏がっ!?」

表情を変えずに淡々と話す用務員さんにもどかしさを覚えつつも、椅子を蹴って立ち上がる。

「廊下は歩こう」なんて張り紙を何枚も横目にかすめながらやっと保健室にたどり着く。

「望乃夏っ!?」

ノックもせずに扉を開くと、部屋中の視線が私に集まる。

「静かに。寝てる人もいるんだから。」

保険医さんに注意されるけど、そんなのも構わずにキョロキョロと辺りを見回す。

「................おう、雪乃、こっち。」

「................文化。」

カーテンの隙間から顔だけ出した文化を見つけて、カーテンの中へと入る。その中には、文化や他の何人かと一緒に、ベッドに横たわる望乃夏の姿。

「................墨森ちゃん自体はそこまで大きなキズはない。ただすっ転んだ弾みに何人か巻き込んで................要するに、クラッシュした。」

「ど、どうして........................」

「................持久走してて、最後の方フラフラになって足がもつれたんだと思います。」

腕を押さえた子が説明する。その横には、足にガーゼを巻いた子も。

「その前からあたし達はグロッキーだったけど................一番最初に墨森さんが倒れてきて................」

「........................そう。」

布団の中に腕を差し込んで、望乃夏の手を握る。

(................冷たい。................待っててね、今私が温めてあげるから。)

「気を失ってるだけだからもう少しすれば起きるだろうって。........................あと、貧血もあるって。」

「................でしょうね。望乃夏は毎回『重い』って言ってたし................」

........................ごめんね、気づいてあげられなくて................。

文化達が出ていった後も、私は望乃夏の手を握ってた。しばらくして、望乃夏の目が開く。

「................あれ、ここは?」

「望乃夏っ........................もう、心配かけて................」

「ゆき、の........................?なんで................」

「バカッ、望乃夏が倒れたって聞いて飛んできたのよ................もう、心配、したん、だからっ................」

「................ごめん................そっか、走ってて気が遠くなったと思ったら........................」

「................辛いなら休めば良かったのに................」

「................それは、そうだけど........................あの二人とも走りきる約束したし................いや、ボクら3人っていっつもビリなの。だから体育の時はいっつもくっついてて................」

「................望乃夏、その話はあとでゆっくり聞くから................。まだ寝てなさい。」

そう言ってずり落ちた布団をかけ直してあげる。

「................しばらくは安静にしてないとダメね。................それにしても、最悪の誕生日になっちゃったわね。」

「えっ................」

「あっ................」

望乃夏は不思議そうな顔をした後、すぐに納得する。

「........................そっか、明日はボクの誕生日だったっけ........................すっかり忘れてた。」

「................やっぱり。望乃夏らしいっちゃらしいけど........................」

........................デート、したかったな。

むすーっとむくれる私のほっぺたを、望乃夏が優しくつんつんする。

「................雪乃がそんな顔するってことは、デートコースも全部考えてたんだね?」

「................バレちゃったならもう、しょうがないわね................実は、駅前に美味しいクレープスタンドがあるって聞いて、そこに望乃夏を連れてこうって思ってたの................望乃夏がクレープ好きって聞いたから................」

「................安栗さんだね、情報源は。」

無言で頷く。

「................ほんとは、オレンジのアイスクレープが一番好き。けど................雪乃と食べるんだったら、どんなのだって良いよ。黒コゲのはやだけど。」

「........................望乃夏................。」

手のひらをぎゅっと握る。

「................ね、ボクが復活したら今度は一緒に食べに行こ。」

「そうね。........................今日のところは私が買ってくるからそれで我慢してね?」

「あ、それなら........................あの二人、いや安栗さんも含めて三人か................にも買ってきてあげて。お金はボクが払うから................迷惑、かけちゃったし。」

「律儀ねぇ望乃夏。........................わかった、行ってくるわ。」


........................デートは出来なかったけど、こういうのも望乃夏らしくて................いい、かも?

P.S:望乃夏さんの誕生日じゃなくて前日譚になってしまったorz

補足説明①:ゆきのんが読まされていた教科書の文章は「源氏物語:夕霧」からの引用です。

補足説明②:望乃夏さんのカーテンの奥にいた二人はモブです。だけどモブ山モブ子ちゃん×2というのも可哀想なので

腕を押さえてた方が 岩村 早苗ちゃん、

足にガーゼの子が 八木 明子ちゃんとします。

そのうち本編でのののんと絡むかも?

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