望乃夏の誕生日。―後編
................うーん、クレープ................クレープ........................
望乃夏の好きなものは分かったけど、私はそういうの疎いし........................どこのお店が一番美味しいのかしら?
部屋に戻ってからもずっと考えてたけど、結局答えは出ずじまい。結局朝まで考えちゃって、少し寝不足気味のまま教室へと入る。
(................やっぱりこういうのは、誰かに聞いた方が早そうね................)
誰かいないかしら................と教室を見渡すと、後ろの席にいた砂塚さんと目が合った。
「................何?」
ちょっと不機嫌そうな声に一瞬だけ止めとこうかな、と思ったけど、折角だし........................
「................ね、ねぇ、砂塚さんって................甘いものとか、好き?」
「................いきなり何?................そうね、そこまで嫌いって訳じゃないわ。」
「そ、そう........................」
................聞く相手を間違えたかしら?
その時、教室の後ろの扉が開いてちっこい子が飛び込んできた。
「ひーじーりーちゃーん!!国語の教科書とか持ってなーい?ない?」
「飛び込んできて開口一番それ?...............はい、お昼までには返してよね?」
律儀にも机の中から一式取り出して押し付ける砂塚さん。................そ、そうだ................この流れなら。
「あ、あの................二人共、クレープって好き?」
「........................はぁ?」
砂塚さんが呆れたような声を出す。一方飛び込んできた子の方はといえば、
「えー、クレープって高いからそんなに食べたことないよー。でも聖ちゃんと食べに行くのも楽しそー。ねぇねぇ聖ちゃん今度食べに行かない?」
「はいはいその話はまた今度。それよりもうすぐHR始まるわよ。戻らなくていいの?」
そう言うと、その子はすたこらさっさと教室から出ていった。
「................で?何の話?」
「いや、その................クレープって好き?」
「その前よ。なんでそんな話を私に振るの?」
「........................じ、実は................」
私は砂塚さんに望乃夏の誕生日のことを打ち明ける。
「なるほどね........................。でもお生憎様、私はそういうのにあんまり興味ないから分からないわ。むしろこっちが教えて欲しいぐらい。」
「そう................」
................やっぱり砂塚さんじゃ分からないかぁ................
「ごめんなさいね、他の人を当たるわ。」
そう言って視線を外すと、もう一度辺りを見渡す。................そうね、長木屋さんならそういうの知ってるかも。席を立って机の前に立つと、眠そうな目を擦りながら長木屋さんが身体を起こす。
「................なに、白峰さん。」
「................ちょっと相談があるんだけど................クレープって、好き?」
その言葉に長木屋さんが飛び退く。
「ど、どうしてそれを!?」
「................いや、どうしたはこっちのセリフなんだけど................」
「........................へ?見てたわけじゃ、ないの................?」
「................何を勘違いしてるのか知らないけど、とりあえずクレープは好きかどうか教えてくれないかしら?」
「あー、まぁ................好きっちゃ好きだけど。」
良かった、まずは第一段階クリアね。
「その................この辺で美味しいクレープのお店、知らないかしら?」
「あ、ああ........................そこの駅前に移動販売のが来て、そこのは美味しいけど................」
「そう、ありがと。」
........なるほど、情報は手に入ったわ。満足して立ち去ろうとすると、
「................あ、あの................」
「あら、何?」
長木屋さんに呼び止められる。
「................その................私とクレープってやっぱり似合わないか?」
「どうしたのよ突然................。まぁ、私よりは似合うと思うわ。」
「そ、そう................?いや、実は................こないだ先輩と一緒に行ったんだけど........................................その、『有里紗ちゃんがクレープ食べてるのってかわいいね』って言われて........................や、やっぱり似合わないのかなって................」
「................それ、褒め言葉じゃないの?」
「そ、そう........................かな?」
................なんか、もどかしいわね................私と望乃夏が早すぎるのかもしれないけど................
「................とりあえず情報ありがと。それじゃあ長木屋さんの方も頑張りなさいね。」
「が、頑張れって................///」
更に赤くなった長木屋さんを尻目に、私は作戦を立てることにした。
実はまだ終わらないんだなこれが。
大遅刻はまだ続いちゃうんだなこれが。
P.S:借りたキャラの使い方が雑ですいません。




