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文化の年越し。―文化

元日特別編:安栗 文化の年末をお送りします。

………………はぁ、もう年末かぁ。

私はため息をつく。いや、別に帰省するのが嫌なわけじゃない。ないん、だけど………………

「ねーたんねーたん、えほんよんでー」

「文姉っ、こっちの魚コゲてるっ!?」

「姉ちゃーん、テレビのリモコン知らない?」

「ねーたーん」

「文姉っ!?」

「ね〜ちゃーん........」

………………ぷちん。

「だぁぁぁぁもう!!お前ら少しは静かにしろっ!!」

………………こんな風になるから、あんまり実家帰りたくないんだよ…………。

「あーもうっ!!明梨っ、コンロの火を消して無事なのを取り出せっ!風、リモコンはミカンの籠の陰だっ、薫、絵本なら寝る前に読んでやるっ、以上!!」

「ふ、文姉…………なんで怒ってるの?」

「怒ってないからな!?」


……………………全く、いつになったらこいつらは私に全部頼らなくなるんだ………………?

「お疲れ、文姉。」

すぐ下の妹、明梨(あかり)が私の前にお茶を運んでくる。

「…………おーう、さんきゅ。」

コタツに足を突っ込んでぐでーっとする私は、籠からミカンを取り上げては剥いて、横に寝っ転がる一番下の弟、(かおる)に一切れずつ食べさせる。………………しかしまぁ、3連続で女だったから男の名前用意してなかったってのもなかなかに酷い話ではあるよな、うん。

「………………姉ちゃん、私にもミカン…………」

横の布団がもぞもぞと動いて、三番目の妹の(ふう)が顔を出す。

「………………無精過ぎるだろ、コタツから出て自分で取れ。」

「………………やだ、寒いもん。一日ここにいる。」

それだけ言うと、またコタツへと潜っていく。

「………………はぁ、どうしてまあこうも性格の違う4姉弟なんだろなぁ。」

長女の私―――安栗 文化は、4人を見渡して呟いた。

「そ、それと、文姉………………洗濯物干してて見つけたんだけど、これ…………」

と、明梨がモジモジしながら背中から何かを取り出…………って、

「それ私のブラじゃないかっ!!」

「………………文姉、いつからこんな大人っぽいのを………………」

「ねーたまおとななのー?すごーい」

「はいはい、薫はおめめつぶってようねー?」

風がすかさず薫を隔離する。

「……………………別にいいだろ、あたしだってもう16だし。」

「………私だってそんなにないのに。」

明梨が自分の胸をふにふにする。

「………………まぁ明梨は遅生まれだしな、うん。それより勉強は大丈夫なのか?星花って案外きついぞ?」

自分のことは棚に上げて、明梨にハッパをかける。

「………………まぁ、今のとこは五分五分。………………でも、文姉と一緒に星花なんて、家に負担が…………」

「そこは心配すんなって。………………去年な、あたしも親父に同じ事を言ったらな、ゲンコツ食らったよ。………………余計な心配はすんな、お前ら全員、…………おっと、薫は別だぞ………………星花を卒業させるぐらい訳ない、って親父が言ってた。………………ったく、腰痛めてるくせにカッコだけつけやがって。」

上辺だけ毒づいて、隣で少しお眠な薫を撫でる。

「…………そんな訳で、心配しなくても大丈夫だ。安心して受験しろ。何ならあたしが試験問題を盗んできてやるからさ。」

「いやそんなことしたら文姉退学になるよ!?」

「………………冗談だって。ったく、融通効かない所はうちの雪乃と一緒なんだから………………。」

その時、私の携帯が鳴る。………………うん、誰だ?

「お、雪乃か。………………ふぅん、向こうも実家帰ってるのか。………………って、まじかよ………………」

添付された写真を開くと、そこには雪乃と一緒に写る私のライバル―――墨森ちゃんの姿。…………へぇ、一緒に帰省、ねぇ………………。

「文姉、誰その人?」

「………………私の友達。………………そうだなぁ、明梨、お前と似たような奴らだから春休みになったら連れてきてやるよ。」

「えっ、せ、星花の先輩方をっ!?」

「………………あのー、ここにも現役星花生がいるんですが。」

………………だめだ、聞いちゃいねぇ。

………………そうか、雪乃はうまくやってるみたいだな。

その時、私の袖を薫がくいくいと引っ張る。

「ねーたま、おなかすいた。」

「おっ、そうだな。じゃあごはんにするかっ。」

立ち上がって晩御飯の支度をする。

「明梨、父さん達呼んでこい。」

………………まぁ、たまには家に帰るのも悪くは無いか。

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