妹の物語...3
ーーーー
あーうん、目立ちすぎた
いや、アタシって静かで乙女なキャラを作ってたのに...
え?そんなことないって?まあいいじゃない
今の時間は朝の会が終わり一時間目の始まるまでの少しの間、まあ休み時間だ、ちなみにこの時間十分ある
そして教室の中には2つのグループができていた
1つ目はお兄ちゃんもとい美少女エリスを質問攻めにしている男子グループ、そんでもってもう1つはというとアタシを質問攻めにしているグループだ
はっきりいってウザい
あのね、アタシは今期一番盛り上がっているアニメの原作小説のチェックで忙しいんだから
ハァーほんっっっとウザいっ!
これもすべてお兄ちゃんのせいだ...
そもそもどうやって学校に入学したの!?
それにその制服どうしたの!?なんで1日で用意できるの!?
それと住民登録どうしたの!?
ほかにもなんで首飾り外さないの!?そんなに大事なの?
あとチラッて見えたけど、なぜ剣を装備してんの!?それ法律的にダメでしょ!
まあ、せめてものすくいといえば隠してるってとこなんだけど、あれ結構バレるよ!?バレバレだよ!
あっ!ほら!1人気付いたし!......うわー、顔が青白くなってく...アイツは確か臆病者で知られている奥津 評太だったっけ?
《キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン》
お、チャイムが鳴ったな、さあ群がる蟻どもめさっさと散らんか
あ、蟻っていうのはまあ言わなくても解ると思うけど...アタシに群がってた生徒ね
それと話全てを華麗に無視してやった、アタシだっていろいろ聞きたいよ!三時間くらいみっちりと!
一時間目は英語だった
あとこれは余談なんだけど、お兄ちゃん全然理解できていなかったらしい
おい、大丈夫か?もと高3よ
ーーーー
事件か起きた
いやそれはもう特大の事件が
そのせいで今お兄ちゃんの前にほとんどの生徒と、全ての先生、それに加えなんかデカイ銃を持った自衛隊?みたいな...いや違うな、明らかにゴツい外国人の兵隊さんが集まっていた
共通する点は皆が恐怖を顔に表しているということだ...それもお兄ちゃんに向けての恐怖を.........
そしてお兄ちゃんは...とても辛そうな、悲しそうな、そして―――覚悟を決めた...そんな顔をしていた
こうなってしまったのは...十分前の事が原因だ.........
おそらくこれは回避する事は不可能ではなかったのかもしれない、多大な犠牲さえ払えば.................。
―――十分前―――
「おーい!一緒にかーえろっ♪」
放課後お兄ちゃんがアタシの椅子の上に立って突然そんなことを言い出した
いや、なぜに椅子に立ってるし?
「ああ、そこ疑問だよね。なんでかって言うとやっぱり背が低いからだよ...もーちょい欲しかった......。」
え、なに心読んだの?!ん!?え!?まじ!?
「うん、マジだよ」
うっわーこれモノホンだ...
「ちなみに精神操作の魔法は私だけしか使えないよ、私が作ったからね...そう、全てはエリ神だけを倒すため!!!」
お兄ちゃんが大声風の小声で言った
しかし、精神操作とかできるんだ...ちょっと恐いな
「んで、嫌なら読まないけど?」
はっきりいって嫌だ
「ん、そか、確かにやられていいもんじゃないしね...んでいっしょに帰ろ」
「いや、いっしょってのはムリかな...園芸部に用事あるから......」
「うん、知ってた」
「ほんと?」
「よーするに、用事が終わったらってこと」
「あー、そーゆーことか、それならOK」
知ってたって事は......いつから心覗いてた!?
「んじゃ行くか」
「え?」
「園芸部のとこ」
「なんで?」
「そりゃあ手伝う以外に何がある?」
「あー、そうね、確かに...じゃあ手伝ってもらうか!」
「そうと決まればさっそく行くか♪」
「そうね」
アタシは返事をして荷物をまとめて屋上へ続く階段を、お兄ちゃんといっしょに登り始める
ちなみにこの高校は屋上に畑があり、園芸部の主な活動場所になっている
ギィィと音をたてドアを開けた先にはお世辞にも広いとはいえない...しかしそこそこの規模の家庭農園程の畑が広がっている
「そーいえばどうゆう用事なんだ?」
「わかんないの?」
「まあ......そこまで便利じゃないんだよ、あれはおおざっぱにしか解らない」
ふーんとうなずき答える
「貸してもらってるのよ、畑の一部を」
「どーしてそんな?簡単には借りられないんじゃないのか?」
「いや、去年から、使いたい人は顧問に伝えれば貸してくれるのよ、まあ貸して欲しいって物好きはぜんぜんいないけど...」
「なるほどね、んでカエデはなにつくってんだ?」
「ん?ああそれなら...ほら、もうほとんど残ってないけどトマトだよ」
すでに目の前まで迫ったマイゾーンに生えてるトマトを指差しながら答える
しかしちっこいなー、お兄ちゃんみたいに...
《ギィィ...バタン》
ほえ?んー、あ、部長だわ
「多分部長が来たんだと思う、あいさつぐらいしとこうよ」
トマトをつまみ食いしていた......つまみ食いしてたの!?気づかなかったよ!?
とりあえずトマトをつまみ食いしていたお兄ちゃんを引っ張ってドアの方へ連れてく
ドアの前にはやはり部長がいた
ちなみにお兄ちゃんは背中側の襟首を掴んでいるためこのままでは部長を見ることすらできない
仕方なく持ち上げアタシの前に立たせる
「この人は園芸部部長の竜崎亮太先輩です。ちなみにこの人留年しているんですよ」
「あ、ども、竜崎亮太です、まあ気軽にりょうくんって呼んでください...まあ確かに留年してますけどね......ただちょっと酷くない!?初対面の娘にその説明っ!?」
..................................。
ん?お兄ちゃん?どーしたの?
なかなかあいさつしないのでふとお兄ちゃんを見てしまった
そう、見たではなく見てしまったのだ
お兄ちゃんは最初眼を丸くして...そのあとにどんどん顔色が悪くなっていって......お兄ちゃんの表情は最初からとてつもない怒り、そして強大な恐怖をこめていた
眼はしっかりと部長に向けられていた、殺気のこもった目線で
「..................っ!なんで!...なんでテメェがここにいやがる!なんで呑気に暮らしている!...なんでだよ!?なんでヘラヘラと笑って学校にいるんだよ!?...このっ!人殺しが!...あんなことしといてなにが園芸部部長だっ!...テメェには殺人部とかだろ!...殺人部部長がテメェにはお似合いだっ!...この悪魔め...俺のトラウマめっ!......今頃でてきてなんなんだ!?また俺を殺そうってか!?...テメェのおかげでコッチは大迷惑だ」
お兄ちゃんは眼の色を変えて叫んだ、そして背中から剣を抜いた
そのまま雄叫びを上げ部長に飛びかかった
部長はというとこちらも恐怖と怒りを浮かべていた
まるで今の話が本当であるかのような...そんな表情を部長も浮かべていた
なんとか、部長は回避に成功する
「テメェっなんなんだよ!どこで知った!?このアマっ!......っ!!...おいっおいっ!おいおいおいおいっそっちは柵だぞっ」
お兄ちゃんは止まんなかった
いや、止まれなかった
突撃したあとそのまま柵にぶつか―――
―――落ちた....................。
構えていた剣が柵をスッパリと切り裂いてお兄ちゃんの身体は屋上から消えた
そして爆発、他生徒達が奇声を上げて遠ざかって行くのがわかる
アタシはなにが起きたのか一切解らなかった
震える足で柵に近づき下を見る
そこにはクレーターができていた
ちょうど何もなかったスペースにクレーターという、いささか学校には似合わない物ができていた
その中心部にお兄ちゃんが虚ろな眼を空に向けてただ恐ろしく見つめていた
しばらく呆けて...後ろで鳴ったブシュッという音に振り返る
腹から血を滝の様に流している部長がいた
そうして今の状況になる
お兄ちゃんは死にかけの部長を回復した、どうやら死んではいなかったらしい
お兄ちゃんは銃を突き付けられながらも喋り出した
「なんでなんだろうな.........俺はただの、そうだよ、ただの日常が欲しかったんだよ......こんな力なんて必要ない、俺はあの世界では一人だった...まあ仲間はいたけどな...肝心の家族なんてなかった...所詮家族愛に比べたら小さい物だ...............なあ、体育教師よ...昔みたいに怒ってくれないか?俺の仕出かした罪を...昔みたいにさ、昔の俺、関谷陽夏太に怒ったみたいに......それに数学の先生よ......また前のように勉強教えてくれよ...ほら、よく放課後教えてくれただろ?...英語担当の先生..........ごめんな...結局宿題出さなくて...俺は英語嫌いだったけどよ...頑張って教えてくれてありがとな...理科の先生も国語の先生もそれに社会の先生も......それと、担任の先生もさ、ありがうな、こんな俺のために進路について考えてくれて......ムダにしちまったよ...............校長の話長かったよなぁ...バカやって遊んでた頃が懐かしいんだよ.........でもほとんど覚えてない......ズズッ名前もほとんど忘れちまったよ...なんでだろうな.........グスッ......もうさ、俺の居場所はもうここには無いんだよ...もうここじゃないんだっ...グスッ......帰れないんだよ......もう遅いんだ...もう俺はこことは違う...違う世界の住人になっちまったんだ...帰るべき場所はここじゃないんだよ................ぅう...ぅぁああぁぁああああっ!」
最後らへんは泣いて、泣いて、泣き崩れた
先生達は、とても複雑な顔をしていた...いや、お兄ちゃんの話を信じて、生徒を救えない、救いたくてもどうしようもない、そんな顔をしていた。
しばらくお兄ちゃんは泣いていた
しばらくしてやっと泣き止み
「俺は.....帰ることにするよ...ここにいても...俺の居場所はないしな......もしいつかコッチの...コッチっていうか...まあ、俺が本来いるべき世界に来たときはとりあえずエリスっていう名前を、ロリコン国王に伝えればいいさ、喜んで案内してくれるよ、コッチの世界をさ.............................まあ、来れたらの話だけどな............あ、あと俺の父さん母さんに元気にやってるよって誰か伝えといてくれ...」
と少し悲しそうに言った
そしてアタシの方を向いて話しかけてくる
「カエデ、お前はこの世界で元気にやっていくんだぞ...名残惜しいけど......これ...ほらあげるから...じゃあまたな............」
拳大の大きさの包みをくれた
とにかくなんでもいいから、どんなことでもいいから伝えたかった
サヨナラでも、一緒に行きたいでも、ここに残ってでも、ただなにか伝えたかった
なのに、次の瞬間お兄ちゃんは.........エリスは...光の柱に飲み込まれ消えた...
もらった包みを握りしめアタシは、お兄ちゃんが来てから、初めて泣いた、初めてだ
今までのお兄ちゃんはお兄ちゃんであってもなんか違う感じだった
でも、最後のお兄ちゃんはアタシの兄、そう、陽夏太そのものだったから...
アタシは包みを握りしめかすれゆく光の柱を見つめ完全に消えるまで、光の欠片1つまで消えるのを見届けても、なき続けた......




