町外れの少年②
ハクが町に着いた時には夕暮れになっていた。
ハクはゆっくり町を歩いているとサーシャが片手にバスケットを持って数種類の野菜を眺めていた。
「サーシャちゃんどうしたの?」
とハクが声をかけると野菜を手に取っていたサーシャが振り向く。
サーシャはハクに気が付くと首を傾けながら笑う。
「ハクちゃん…お父さんに野菜を買ってくるの頼まれたんだけどどれがいいのかわからなくて…」
と野菜を見比べながら言う。
ハクはサーシャの隣に行きサーシャの持っていた野菜を見て、並べられてる同じ種類の野菜を手に取り
「その野菜はこれがいいよ」
とサーシャに渡す。
ハクはサーシャがオルガから頼まれた野菜の良し悪しを説明しながら選んでいき、サーシャの頼まれた野菜を買い終わると
「ありがとうハクちゃん。いろいろ教えてくれて助かったよ」
と少し歩きながら話す。
ハクは町外れの少年の事を楽しそうに話した。
サーシャは楽しそうに話すハクを見て
「ハクちゃんはその子が気になるんだね」
とスキップしながらハクの前に出て目を見て笑う。
ハクは少し顔を赤くし手を頭に回して目を逸らす。
「気になるっていうか…あの少年の目はあの時の俺に似てるなって思ってさ、俺にはオルガさんやサーシャちゃんに町の人が助けてくれたけどあの少年にはそういう人がいなくて俺が少しでも助けられたらなってね」
と頬を搔きながら笑う。
サーシャはそれを聞くと手を後ろに回す。
「ハクちゃんなら大丈夫だよ。今日はありがとね。またね」
と言うと走って帰っていった。
ハクはサーシャの言葉を聞くと自信がついたのかいつもより楽しそうに走っていく。
夕日を背にしたハクは拳を上げて力強くジャンプするのであった。
翌朝ハクは少年のいる遺跡に走っていると丁度、町と遺跡の間の森で森に入っていく少年を見つける。
ハクは少年の後を追って森に入っていくと木の上で木の実や果実をとっている少年を発見し声をかける。
少年はハクに気が付くと木から降りて急ぎ足でハクから逃げていく。
「ちょっと なんで逃げるの!」
とハクは急いで少年を追いかける
少年はハクを無視してさらにスピードを上げ、木の根を潜り、ツタを使って移動していく。
ハクは必死に追いかけていくと少年が急に止まり
「なんでついてくるんだ!鬱陶しい」
とハクの胸に指を当てて怒鳴る。
ハクは嬉しそうにして
「やっと話してくれた!なんで無視するのさ」
と言うと少年はハクの顔をみて呆れた顔をし、右腕を横にしてウルフを出す。
少年がウルフに命令するとハクに襲い掛かる。
ハクはウルフをかわすがすぐに掴まってしまい少年はハクがウルフに掴まっているのを見ると歩いて離れていく。
しばらくするとハクを捕まえていたウルフが消えハクは立ち上げると少年が歩いて行った方に走っていく。
森を出たところで少年が歩いているのを見つけるとハクは少年の肩を軽く触る。
すると少年はびっくりして振り返り
「うわっ!なんだよお前ついてくるな!」
と言うと
「俺から逃げられると思った?無理無理」
とバカにするように笑う。
少年は笑っているハクを見て手を頭に当ててため息をつき遠ざけるのを諦めたのか
「もう勝手にしろ 俺は無視するからな」
と言う
「いいよ 俺が勝手についていくから」
とハクは腕を頭の後ろで組み足を組んで笑う。
少年は深くため息をつくと振り返り歩いていく。
「今日はもう夕暮れだから帰る。絶対についてくるなよ」
とハクを睨むと
「俺も帰るからついてかないよ。じゃあね」
というとハクは町に走っていく。
少年はそんなハクを見ると頭を掻きながら帰っていくのであった。
翌朝からハクは少年の後を毎日追いかけていき川で魚を取ったり、野原で動物を狩ったりしている少年を見つけては声をかけて、そんなことをしていると一週間が過ぎていた。
「なぁもうついてくるなよ!なんでお前は俺にかまうんだよ!一週間も無視ってるのについてきてさ、流石にうざいよお前」
とハクに向かって怒鳴るとハクは少し俯き手を握りしめる。
少年は振り返り歩いていくと
「ねぇ そんなに仲良くすることはダメなことなの?俺は君と仲良くしたい」
と少年の服を掴み悲しい声でつぶやく。
「お前にはわかんねぇよ。離せ」
と少年が声を低くして言う。
ハクが手を放すと少年は歩いていく。
少しすると
「わからなくても!寄り添うことはできる!」
とハクは大声で叫んで町へと走っていった。
少年は少し振り向き走っていくハクを見て
「わかんねぇよお前には」
と小さくつぶやくと向き直り歩いて行った。
ハクが町につくと辺りは薄暗くなっており町に明かりが点々とついており近くにある店は片づけを始めていた。
ハクは俯きながら歩いていると声をかけられる。
「おう ハクじゃねーかどうした?」
と野太い声が聞こえる。
ハクは声のした方を向くとオルガは心配そうにハクを見ており、ちょうど店に明かりを灯していたのか火を持っていた。
「なんでもないよオルガさん。ちょっと走り回って疲れただけ」
と笑いかけるがその顔は明るくなく空元気だ。
ハクはそういうとゆっくり歩いていく。
オルガは元気のないハクを見て首を傾げるがしばらく見た後店に入っていった。
ハクは家に着くとベッドに倒れこみシーツを握りしめ眠りにつくのであった。