町外れの少年①
ハクはオルガと別れたあと町を夕暮れまでふらついていると国にきた商人がボロボロの馬車と並んで歩いているのを見つける。
その商人を見た数人もその商人にどうしたのかと聞く。
商人は疲れた顔で小さな声で答える。
「この国に来る途中の遺跡付近で襲われたんだ」
と肩を落とす。
国から少し離れた場所はいつくかの遺跡が点在しており、付近は何もなく平野が続く。
ハクはその話を聞いていたが風が吹いた際馬車から積み荷が数個乗っていることに気が付く。
「おじさん 馬車に積み荷が見えるんだけどそれは?」
と馬車を指さして言う。
商人は馬車に近づきカーテンを開ける
そこには数個の剣や弓などが置かれていた。
「武器の積み荷は盗られなかったのだが、特産品などの食べ物が全て盗られてしまってね」
そういう言いながらカーテンを閉めると向き直りハクの方をみる。
ハクは少し不思議そうな顔をしている。
「まさか一人の少年に積み荷を盗られるなんてね」
と商人が言うとハクはびっくりした顔をする。
「一人の少年・・・?盗賊じゃなくて?」
商人は呆れた顔をして答える。
「あぁ 一人の少年に積み荷を盗られたんだ」
と言うと商人はその時の状況を話始める。
昼過ぎに近くの遺跡を通りかかったとき道の真ん中に一人の少年が立っていることに気づいた。
商人は少年に声をかけると少年の後ろから黒い靄を纏ったモノが現れて
「食べ物をよこせ」
と馬車を襲ってきたと話す。
町の人達はコソコソと話すが一人が声を上げる
「その少年は月の兎じゃないのか?」
と声を上げた男は黒色のコートを着ており腰に剣を所持している。
首からタグをさげていることから狩人の一人であることがわかる。
商人や周りの人達は全く知らないという反応をする。
「月の兎 最近この国の周辺を襲っている盗賊だ。狩人の中でも最近話題になっているんだ」
と言うが商人はわからないと首を横に振る。
「それかわからないが早くどうにかしてほしいよ。これじゃあ帰るときも襲われるかもしれない」
と商人は再びため息をつく。
ハクはそれを聞くと
「俺がなんとかしようか?」
と商人に向かっていうが商人は不安そうにする。
「君みたいな子供が?まぁ何とかしてくれるなら誰でもいいんだけどね」
というとハクは任せてと少し笑う。
人々は話が終わるとそれぞれ別れていく。
ハクはもう日が暮れているからと一旦家に帰ることにした。
翌日朝早く起きたハクは商人が言っていた遺跡へと向かっていた。
日中の街道付近は魔物がいなく比較的安全に進むことができるからだ。
数十分走ると遺跡が見えてくる。
ハクが遺跡に着いて辺りを見渡していると数人の悲鳴が聞こえてくる。
ハクが悲鳴の声が聞こえた方へ行くと3人の男が倒れている。
3人はシャツに膝丈のズボンでよく見ると腕や足に歯形が数か所あり血が流れて苦しそうな声を上げている。
ハクは柱の陰に隠れてその男たちの向いている方に目をやると遺跡の柱の上に黒髪で黒のブラウスに膝丈のズボンで黒のブーツを履いている少年が座っているのに気が付く。
「お前らが何しに来たかしらねぇけどな お前らみたい雑魚に俺は負けねぇよ」
と少年が蔑んだ眼をする。
すると男たちはふらふら立ち上がると逃げるようにその場を後にしようとすると
青髪の男が低い声で
「この借りは必ず返す」
と少年を睨みつけながら走り去っていく。
ハクは男たちの姿が見えなくなると少年の前に出ていくと少年がハクに気付く。
「あぁ?なんだ今日はめんどくさいやつが多いな」
と欠伸をしながら近くにある柱の破片を手に取る。
するとその破片をハクめがけて投げるがハクは軽々しく避けると少年は柱の上から降りる。
「この辺りで商人たちを襲ってるのは君?」
と少年に問いかける。
少年は首を傾げると
「どうだろうな そんなのどうでもいいだろ?」
と右腕を横にやると手から少し黒い靄がでて少年の後ろから黒い靄を纏ったモノが現れる。
その姿は狼に似ており歯をむき出しにし目は赤くハクを睨みつけているように見える。
ハクは見たこともないモノにびっくりしていると少年が腕を前にやると
「ウルフ やってしまえ」
と黒い霧を纏ったモノ《ウルフ》に命令する。
するとハクに向かって走ってくる。
ウルフがハクに跳びかかるがすんでのところそれをかわす。
しかしウルフはすぐに振り返りハクを襲う。
ウルフはハクを押し倒し噛みつこうとするがハクは必死にそれを押さえる。
少年は欠伸をしながらそれをつまらなそうに見ていたが、ハクが数か所怪我するのを見ると
「ウルフ もういい」
と自分の元へ帰す。
ハクはボロボロになって倒れているがすぐに起き上がり少年のほうをみる。
「襲われてるのに何もしないなんてお前馬鹿なのか」
と呆れた顔をした少年をハクは見つめて
「俺 お前と友達になりたいんだ!」
というと少年は目を見開きびっくりしたあとに目覆い大笑いをし、お腹を抱える。
ハクがその様子を見ると少し顔を赤くして声を上げる。
「な、なにがそんなにおかしいんだよ!」
というとまだ笑いが止まらない少年は
「お前みたいなのが友達になりたい?初めてだわそんなバカみたいなことをいうやつ。笑いが止まらねえよ」
と笑いながら答える。
ハクは何がそんなに面白いのかわからずむすっとしていると
少年が一通り笑い終わるとハクをほうをみて
「俺は誰とも仲良くならない。諦めな」
というと振り返り手を振り歩いていく。
その姿を見たハクは
「また明日も来るから!絶対に!」
と大声で叫ぶが少年は遺跡の奥へと消えて行ってしまった。
ハクは服についた土を叩くと遺跡を後にした。