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終幕'証明'


立ち上がり、ホープの目の前に立つ。そして、再び話し始める。

「そうすると、幾つか疑問が生じる。

一、どちらにせよ天使は消えないはずなのに、なぜ災害が起きてしまうのか。

二、お前だけかもしれないが、なぜここまで宿り木に干渉してくるのか。

三、悪魔は人間界を見ることができない。ならばなぜ、天使がいなくなったことに気づけるのか!

それを全て正解に導く言葉が一個だけある。…堕天だ。天使が悪魔に生まれ変わること。

大方そのために必要な条件ってのが、人に失望するとか、どっかその辺だろ?だからお前はいいことだと思わせて俺を絶望するように仕向けた。堕天してこの地域に天使がいなくなったことを悪魔に伝えれば、めでたくここはドカーン!勝手に天使にされてこれからに人生を奪われたこの街に復讐できるって訳だ。」

目の前の天使が突然笑い出した。

「はははは!!そうだよその通りだよ!僕はこの街に復讐したかった。だから堕天をする!たった十歳で人生を終わらせやがったこの街にね!」

「あぁ。それは大層なこったまぁでも?ここで俺たちが死んで俺が天使になれば、お前の野望はあえなく潰えるって訳だ。」

僕は包丁を自分の首に突き立てる。

「リクエスト。これから一生、自害をするな。」

手が自動的に止まった。

「なぁ。お前天使になってどうするつもりだよ?きっと五十年後には同じ結末を迎えるだろう?

だったらいっそのこと壊せばいい。すべてを。」

「…確かに。でも、今ここに生きている人々の命を奪う理由にはならない。そんなたった一人の願望に左右される世界なんて、こっちから願い下げだよ。さて、もういいだろう?リクエスト。これから一生、リクエストという単語を発するな。」

天使の顔に焦りが浮かぶ。

「だ、だがお前はもう死ねないんだよ!もうすぐ堕天の準備も終わる!俺の価値だ!!」

俺は包丁を突き刺した。自分の胸ではなく、天使の胸に。

「契約。どちらかが死ねば、もう一方も死ぬ。だったっけか?あばよ。」

天使が僕の胸ぐらをつかむ。胸からは、とめどなく血が流れつづけている。

「ふざけるな!!俺は!俺は悪魔に成って、自由に生きるんだよ!!」

その言葉を最後に、電池の切れた人形のように、僕らの体は崩れ落ちた。

後日、警察の調べでは、女性の遺体のそばに、五十年前に行方不明とされていた、外国人の子供の遺体があったと言う。

今日も僕は、空から人間界を見ている。

あれから何日たったのかは、全く分からない。

いまとなっては、ホープの気持ちも、少しわかる気がする。

確かにここは退屈だ。悪魔の方が、よっぽどましなのかもしれない。

いままでぼくは、沢山の人を傷つけた。

償いになるとは思っていない。でも、見守らなくちゃいけないから。

五十年後、僕は誰かのもとに行くだろう。

その時は、しっかりと強い心を持った人に憑きたいな。

人ごとだと思った?もしかしたら、君の元へ行くかもしれないよ。



人は、いつか弱くなる。



それが他人によるものか、あるいは己か。



きっとそれに負けたとき、世界は廃れて行く。



最後になっちゃうけど、しっかりと伝わってたら嬉しいな。





「リクエスト。弱い心に負けないで。」

 

fin

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