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第1幕'人間'

リクエスト

・・・いつからだろう。人を信じられなくなったのは。



・・・いつからだろう。誰かを恨むようになったのは。



物語はいつも突然で、空想のことでも、もしかしたら現実に起こってしまうのではないだろうか。



こんな悲劇は二度と起きてほしくない。だからこの物語を送ります。



どうか、どうか、この悲劇を・・・・・・繰り返さないで!



悲劇の始まりは、単純だった。夏休みが終わってすぐ、テストで悪い点を取ってきてしまった。と言っても平均点は85点。普通ならいい点だ。でもうちの親は、学校は違った。僕の通う中学校は進学校。良い高校に進んで、五大学に進学するのが目標であり、ノルマだった。母さんはとても頭がよかったし、父さんは一流の営業マンだった。そんな両親に見守られて、優しくまじめな子として育てられてきた。とても幸せだった。でもそれも2年前に父さんが死んでから変わってしまった。教育方針は今までと変わらなかったけど、母さんはより一層厳しくなり、90点以上が基本となって受験生になると、満足のいく点を取れなければ晩御飯を抜きにすると脅された。それが今日、現実となった・・・

「何よ!!このふざけた点数は!」

家に帰ってまず飛んできたのは、怒号と平手打ちだった。うちの学校では、テストの点数は親にメールで知らされる。迷惑な話だ。

「とにかく今夜は晩御飯抜きよ!!部屋にこもって勉強してなさい!」

言われるがままに、部屋に戻った僕は、まっすぐに勉強机に向かった。朝まで勉強する気はないけど、出来るところまでやろう。今度はいい点を取って、毎日仕事で疲れている母さんを喜ばせよう。どれだけ暴言や暴力があろうと、僕は母さんが好きだった。知っていた。母さんがいつも、真夜中に

「ごめんね。ごめんね・・」

と言って一人泣いていることを。たった一人の家族。これ以上悲しませないためにも、僕はしっかりとしなければならなかった。。



次の日、教室に入ると、加藤の双子が待ち構えていた。

「よーよー賢人ク―ン。昨日悪い点とったんだって?調子に乗ったんだな!」

弟の和彦が 馬鹿にしてきた。

「和彦―そんな風に言っちゃいけないよ。お母さんにもめっちゃくちゃ叱られたんだろうなぁ、おーおーかわいそうに・・・」

今度は兄の富彦が悲しそうな顔で慰めてきた。ま、当然馬鹿にしてるのはばればれだけど。こいつらは親が裕福で寄付金で入ってきたたいして頭もよくない奴らだ。陰では脳筋兄弟と呼ばれるほど力だけは強いけど。とにかく相手にするだけ無駄だと思って、

「お前らには関係ないだろ」

一言吐き捨てて通り過ぎようとすると、目の前に拳が飛んできた。

帰り道、奴らに殴られて腫れてしまった眼の痛みにうめきながら、心の中では双子に対しての悪口がぽんぽん生まれていた。というのも、殴られた後軽く脳震盪を起こし、友人に支えられながら保健室に行き、眼帯をつけてもらった後誰にやられたかを聞かれ、加藤の名前を出すと先生はため息をついて

「気をつけなさい。」

と一言言って、2時間目まで休んでいるように命じた。奴らの寄付金は膨大なもので、それを手放すまいと学校側は手を出せなくなっている。だからこんなことが起きる。それをフル活用するもんだから、尚質が悪い。そんな事を考えていると、生まれ続けていた悪口がいつの間にか口に出ていたようで、隣にいた拓也が「落ち着きなよ。」

と声をかけてきた。彼こそが、俺を保健室まで連れて行って、付き添ってくれた友人だった。

「つったって悔しいだろ。あいつらいつか見返してやる!・・・・ところでおれなんか変なこと言ってなかったか?」

と聞くと、少し意地悪そうな顔をして「さあね―」と返してきた。

「お、おいなんだそれ!教えろよ!」

家に帰ると予想通り最初に聞かれたのは眼帯のことだった。僕は正直に、ひとつ残らず行き先を話した。てっきり、母さんは優しい言葉をかけて慰めてくれるもんだと思ってた。でも返ってきたのは

「そんな点数しか取れないあなたが悪いんでしょ。」

「早くご飯にしましょ。冷めちゃうわ。」

の二言だけだった。それからは一言も会話もなく、次に母さんが発した言葉は

「勉強しなさい。」

いつも通りだった。なのに、この日だけは少し反感を覚えた気がした


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