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 1時間くらい、ハンバーガーショップで時間を潰したあと、僕らはシネコンに戻り、鑑賞券を係員さんに見せて劇場内に入っていった。


 シネコンの中はとても綺麗だった。

 茶色の電球がところせましと散りばめられ、薄暗い光を放ち、なんだかムーディーな雰囲気を醸し出していた。

 僕は、テクテクと先を歩いていくハルの姿を見て『こういう場所は、女の子と行くところだよなぁ』とふと思った。


 

 僕らが見た映画は、アクション映画だった。何も考えないで見るのにはちょうど良い内容だった。

 いわゆる、外国のコミックヒーローの実写の映画で、所狭しとCGが贅沢に使われ、億単位の予算で映画を作ってます!というのがよく分かるような映画だった。最近のアメリカのキャラクター映画は、別のキャラクターがゲスト出演するというのが流行っているらしい(コラボ映画というのだろうか)。本作も、別の作品から、本作の主人公を助けるべく参戦していた(真の意味での友情出演)。

 ただ、僕的には『もう、誰が主人公の映画なのかよくわからないな……』と思ったし、もはやタイトルもあまり意味を成していないと思った。演じている俳優たちも、お金を積まれない限りやる気は出ないだろうなと思った。


 僕はあまり映画は映画館では見ないほうであるが、テレビでやっている映画はたまに見る。

 アメリカ人は、コミックヒーローは実写化するのに対して、日本人は、アニメーションとして作品を作る傾向にある。この辺もお国柄なのかと僕はいつも思う。


 

「田井中、俺ちょっとこれから用事あんだわ」

 不意に、彼から僕に告げられた。

 僕は時計を見た。16時を少し回った程度で、お母さんには19時くらいに帰ると言っていたから、解散時間としては少しだけ早い。


「なになに。デートかな」

 僕は、すぐに彼の用事に気がつく。


「そ、そんなんじゃないってぇ〜」

 彼は、口を尖がらせ口笛でも吹いているような表情になる。

 ただし、目が笑ってはいない。僕はすぐに嘘であると気がつく。


「まぁ、良いけど。じゃあ、僕は本屋にでも寄って帰るよ」

 僕は、手を上げて彼に挨拶をした。

「お。じゃ、また学校でな」



 宣言通り、シネコンの入っているショッピングセンターの8階にある本屋に向かった。

 特に読みたい文庫本があったわけでもないし、漫画や雑誌があったわけでもない。

 時々『何か無いかなぁ』と思いながら立ち寄る時がある。



 カメラ雑誌も良い。最近自分の使っているカメラの新型が出たから、きっと特集が組まれているに違いない。

 どんな画で取れるのか非常に気になるところだ。


 経済誌も嫌いじゃない。

 外国系の記事を集めた雑誌は特に好きで、『海外の人の考えを知ると、なんだか自分も外国人になった気分だ』と物思いにふけるのである。


 そんな本屋への妄想を膨らませてながらエスカレーターに乗っていた僕であったが、事態は一変する。

 

「あ」


 目の前に、紺色のジャケットとベージュのワンピースを着た女性が立っていた。

 僕が先ほど、触れてしまった女性である(断じて、やましい気持ちで触ってはいない。偶然である)


 幸い、エスカレーターから降りる姿はバレてはいなかった。

 ずっと、エスカレーター横のお洒落な化粧品売り場に夢中であったからだ。


 今がチャンスである。

 お洒落な化粧品に気をとられている間に後ろを、ひょいと抜け、本の森という名の本屋さんの中へと消えてしまえば良いのだ。


 僕は、なるべく音がしないように慎重にエスカレーターを降りた。

 エスカレーターの段差がなくなり、垂直なって降りる階へと僕を誘うその刹那、僕は軽くジャンプをして綺麗な着地を決めた。

 しかし、その【ジャンプ】が余計だったのか、残念ながらその女性に気づかれてしまった。

(僕としては、最善の注意を払った行動であったが、いかんせんモーションが大きかったらしい。モーションを盗む芸当ができないあたりにスキル不足を露呈してしまった)


「あなたは、さっきシネコンで私の手を触ってきた子ね」

 女性は、僕が触った左手を右手で隠し僕を汚らわしいものを見るかのような目で見る。


「誤解です。あなたの手が触れたくて僕は振り返ったわけではありません」

 僕は、真顔で言い返す。

 女性は、しばらく黙って僕の方を見る。

 そして、何か良いことを思いついたのか、時計を見て僕の方を見た。


「良いわ。許してあげる。そのかわり、ちょっと私に付き合いなさい」

 すると、その女性はスタスタと歩いてエスカレーターの方に向かって歩いた。

 その場に立ち尽くしている僕の方を振り返り、アイコンタクトで「早く来い」と訴えた。

 僕は渋々その女性についていくと、女性は登りエスカレーターに向かって歩いていった。



 そして、気がつけば僕はまた映画館の劇場内の入り口に立っていた。

 入り口の前に立つ、チケットのもぎりのお兄さんは僕を不思議な人物であるかのような眼差しで見ている。


 こうして、僕はまた映画を見る羽目になったのだった。

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