表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

10

 雨の日から、1週間が経った。


 あれから、あまり雨は降らなかった。

 あの女性は、一体何だったのだろうか。

 僕には少しだけ早すぎる体験だった気がする。



 また、あの女性を見送ってから、しばらく黒い影を見ていない。

 エスプレッソを頼んだ時は、あんなに腹を抱えて笑っていたのに、今となっては僕の前には姿を現さないのである。

 原因は不明である。ただ、いる時はなかなかウザったい感じであったのに、いざ居なくなるとなんだか寂しいものであった。


 

 僕は寝そべっていたベットから起きて、カーテンを開けた。

 それはそれは、綺麗な青空であった。

 今日の予定は栞とハルと3人で、美術館に行く予定である。僕らは、美術作品に興味のある意欲的な若者3人衆などではない。

 たまたま、社会科の授業で『街の建築物に行って感じること』という意味不明な課題が与えられてしまったから行くことになったのである。

(たぶん、住んでいる街をもっと詳しく知りましょう的な流れの課題であると僕は思っている)


 どうして、美術館を選んだのかといえば、おとといに3人で帰っている時に、ハルが言い出した言葉がきっかけだった。

「美術館っていったことある?」


 僕と栞は首を横に振った。

 首を横にふるだけでは飽き足らず、まったく興味なさそうな表情をおまけに加えた。

 僕らの息の合った動作に彼は、頭を一瞬抱えるものの、美術館に行きたいと諦めなかった。


 彼が行きたい理由は簡単で、別のクラスの、それはそれはかわいい女子の気を少しでもひきたいからである。

 その別のクラスのマドンナの趣味が、美術館めぐりであったのである。

 高校生で、美術館をめぐるのが趣味という時点で、少しだけ他の人とは違う点に惹かれたのだろうか。それとも、純粋に可愛いから惹かれたのだろうか。僕にはよくわからない。

 僕の知って居る限り、ハルはスポーツ万能、成績優秀ではあったが、美術の才能だけは無いと、個人的には思っている。美術だけでいえば、僕のほうが上であるといっても過言では無い。


 もっといえば、栞に至っては未だに描く人物像が、3歳児ばりの絵を描く。

 頭が大きくて、体が小さく、腕がよからぬ場所から生えているちょっとしたヒステリックな絵も、3歳児が書いたならば仕方がないなぁと思うものである。

 しかし、栞が描くと少しだけ心配になってくる。そして、自分の今後について一抹の不安を感じるのである。


「いやぁ、また失敗しちゃったよ」

 彼女が、人物画を書いた時によく言う言葉である。

 僕は、美術の時間に何度か被写体になったが、これはこれはひどいものだった。思い出したくもない。




「まぁ、行ってみるか」

 ハルの誘いに快く返事をしたのは栞だった。


「え、なんで?」

 僕は、あっけらかんとしている栞に対して訪ねた。


「後学のために」

 ボソッと彼女はいった。まさか、彼女から『後学』という言葉が出てくるとは思いもしなかった。そもそも、彼女はあまり先のことを考えないで有名であった。

 いきなり、制服のままプールに飛び込んだり、お年玉をもらったそばからすぐにおもちゃを買ったり。腐れ縁の僕は、その光景を何度も目に、何度も被害にあってきたのである。


 しかし、美術館であるならば、危険なことはなかろう。

 お金が取られることも、危険な目にあうこともない。体が水でビショビショになることも無いはずだ。


 こんな感じで、ハルの下心と、栞の勢いで決まってしまった。

 もはや、学校の課題なんてものは、ついでのついでにしかすぎなくなっていた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ