第６話 再び修業の日々
「なぁ…いつまでこんな基礎的な事を？」
「何事も基礎が一番大事です！はい、もう１セット！」
夢ってほら続きの夢を見る事ってあると思うけど、そんな思い通りになる事ってまずない訳じゃん。
なのに何故オレは昨日の夢の続きを見ているんだろうね。
違う夢を見るって言う可能性を信じて眠ってみたんだけどやっぱり気が付くと昨日の夢の世界でした。
もしかして…もうオレは個人の夢を見る事は出来ないのかな…何てついてないんだ…。
今日は最初っからアサウェルに捕まって特訓モードだったので昨日よりかなり長い時間みっちりしごかれてしまった。
もうへろへろだよ…鬼より厳しいよこの人形(汗)。
「本当に効果出るのかこれ…」
肩で息を切らしながら自嘲気味にオレはつぶやいた。
「そんなに信じられないのでしたらちょっと飛んでみてください」
あら…さっきのオレの弱気発言聞こえてた？
でも分かってるよ…こんな短期間で効果が出ない事くらいオレだって。
この夢の世界…肉体を持ってないのに筋肉鍛えたって…。
ま、そう言うなら折角だから飛んでみるか…。
ピョーン。
え？
軽くジャンプしたオレは２ｍほどの高さを跳躍していた。
軽く飛んだだけですよ？な、何だこれ？
なら、本気で飛んでみたら…。
ビョーン！
うひぃぃ！
スチャッ！
本気でジャンプしたオレは近くの建物の屋根に着地していた。
「うそ…だろ？」
地上から何ｍだこれー！
多分軽く１０ｍくらいはある気がする。
この結果を自分でも信じられなかった。
まるで夢みたいだ！…って、そう言えばここ夢だ！
ひょいっ。
オレは軽く飛んでその建物の屋根から着地する。
あの高さから飛び降りても平気だとは…流石夢だぜ。
「分かりましたか」
アサウェルはドヤ顔でオレに同意を求める。
オレはその顔に本当は同意なんてしたくなかったけどそこは認めざるを得なかった。
「こんなに早く効果が…？」
「まだ信じられないのでしょう？でもそれがこの世界なんです」
この結果を知ってオレは俄然特訓に力が入るようになった。
この世界の事はまだ何も知らないけど、だからこそこの世界のエキスパートであるアサウェルを全面的に信頼して彼の言葉に従っていこうとこの時に思った。
たまにその態度にカチンと来る事もあったりするけど…(汗)。
「夢の世界なんだからほら例えば手からビームとか出せたりしないの？」
「君はそんな事がしたいのですか？」
「なっ…例えばの話だよ例えば！」
オレのガキっぽい質問にアサウェルが冷静な顔をして返すものだからオレは恥ずかしくなってしまった。
アサウェルはどうやら肉弾戦のプロみたいだからそう言う遠隔攻撃っぽいのが嫌いなのかも…。
「想いが強ければ何でも出来ます…ここは夢の世界ですから」
「マジで？」
「ですが君はまず基礎を鍛えてからですね…そう言うのはまだ早いかと」
なるほど！鍛えに鍛えたらそう言う攻撃も可能になるんだ！
オレはまだこの夢の世界で頑張れる気がした。
アニメのヒーローのようになれると思えばちょっとくらいの修行も耐えられる！…気がする(汗)。
「はい！休憩は終わりです！それじゃあいつものセットを後３回！」
「おうよ！」
テンションが上ったオレはこのセットを気合を入れてこなすのだった。
いつか手からエネルギー弾を出せるようになるその時まで！
チチチ…チチチ…
疲労感の残る朝。
体は疲れてないのに心が疲れている…この感覚、やっぱりまだ慣れないな。
準備を終えて台所に行くと今日の朝食はちょっとだけ豪華だった。
ご飯に味噌汁に納豆にハムエッグに…今日が味噌かつおにんにくが追加されていた。
オレ味噌かつおにんにく好きなんだよね…やった！
「おはよう♪夢の世界で大変でしょう？しっかり体力付けないとね」
いやぁ…やっぱ母さんは分かってるね！
オレは上機嫌で朝食を平らげた。
さあて！夢の世界であそこまで強くなったんだからきっと現実世界でも多少は強くなっているはず！
そう思って思いっきりジャンプしてみると…その結果はいつもと何も変わらないものだった…(汗)。
まぁ…肉体的には全然鍛えてないから当然だよね…トホホ…。
