第11話 おさるの国(3)
シュッシュッ!
間合いに入り込んだとは言え敵もかなりの手練…オレの攻撃は紙一重で交わされていた。
「やるねぇ、おじさん」
「おじさんか…この悪夢帝東方部特殊隊長ザクォルも舐められたものだ」
ザクォルと名乗る敵はオレの攻撃を交わしながら様子を窺っているようだった。
オレは攻撃を続けつつザクォルの反撃の芽を潰していく。
この勝負、どちらかが冷静さを欠いた方が負けだ。
オレをここまで連れてきた猿達はずっとこの戦いを見守っている。
よく訓練されているとは言え、逆にこの静けさが怖い。
隙を見せたら猿達が襲って来る可能性を常に警戒していないと…。
「ふふ…我が友たちを警戒してるね」
「くっ…」
ザクォルは周りの猿が攻撃するともしないとも言わない。
それが作戦だと分かっていながらオレは攻撃に集中出来ないでいた。
ニヤッ!
ザクォルはいやらしい笑みを浮かべたかと思うとどこからともなく取り出した武器を振り回した。
シャッ!
「ぅおっと!」
バランスを崩しながらも何とかその攻撃を避けるオレ。
鋭い風が空を切った。
「ふぅ、武器ね…」
「ここは武闘会の会場じゃないんだよ」
オレは何とか体勢を整えるものの…間合いはかなり遠くなってしまった。
ザクォルの手にしている武器は長い棒状のもので…刃物でないのが幸いしている。
ブン!
ブン!ブン!ブン!
ザクォルの猛攻が始まった。形勢逆転だ。
オレは何とか攻撃は避けるもののこのままでは敵の攻撃に当たるのも時間の問題だった。
「どうしたどうした!さっきまでの勢いはっ!」
ザクォルの攻撃を手で受け止めている内に痛みが限界に近付いてくる…。
せめてこっちにも武器があれば…。
ハッ!
ザクォルは棒を床に突き立ててそれを支点にしてオレに向かって蹴りを入れてくる!
ドゴォ!
「ぐふっ!」
その攻撃はオレにクリーンヒット!
オレの身体は軽く吹き飛び壁に激突してしまった。
「これで終わりかい?」
オレはすぐには起き上がれなかったが…ダメージはそこまで大きくなく
追撃をかけてきたザクォルを何とかかわす。
「冗談!」
「ほう…」
そうしてまた体勢を整える…こっちは素手…飛び道具的な攻撃があれば…。
そうだ…ここは夢の世界なんだ…想像が全て…。
オレはダメ元で手にエネルギーを溜めてみる。
ハァァァァ…!
うん、何だか力が高まってきたような…気がする。
頼む!どうかうまく行ってくれっ!




