第１０話 サーカスの国
「これは…マズイ事になった…でしょうか？」
「こう言う展開…アリなのかよ…」
グルルルルルル…。
オレ達の目の前には今にも襲いかかってきそうな凶暴化した動物が多数。
この動物達が操られているとは言えまた破壊的な力を持ってるんだよなぁ…。
夢の世界の動物達にオレの力がどこまで通用するか…ゴクリ…。
グオオオオオオ！
今は考えている暇なんかない！
持てる力全てで立ち向かうしか！
オレは動物達の爪や牙を交わしながらひたすらチャンスを探った。
致命的なダメージを与えずに何とか気絶させなければ…何て難しいんだ…。
それはオレ達が新しい国に入国した時に起こった。
そこはサーカスの国。
サーカスの興業で成り立っている国だ。
この夢の世界にも動物はいる。
夢の世界の動物は現実よりもアクロバティックで興業はいつも他国からのお客さんで大盛況だった。
勿論人間の能力もかなり人間離れしておりサーカスの演者たちの演技も現実ではありえない派手な曲芸でお客さんを楽しませていた。
「今後の戦いの参考になるって言うから見に来たけど圧倒されるよ」
「夢の国は想像が全て。目にした動作は全て出来ると思って集中してください」
アサウェルはそう言うけどやっぱりサーカスはエンターティメント。
お客さんを楽しませるための見栄えのいい動きとか…実践ではあんまり役には立たないでしょ…。
うん、やっぱりここは素直に楽しむのが第一だね。
そんな理由でオレたちは他のお客さんと一緒にサーカスを楽しんでいた。
演目が中盤に入った頃だろうか…舞台には少し不気味なピエロが舞台で演技をしていた。
そのピエロの演技はどこか闇を漂わせていた。
「アサウェル…もしかしてあいつ…」
「ええ…」
オレ達がピエロに気付いて警戒していると…オレと目が合ったピエロがニヤリと笑った。
「おやぁ…今日は珍しいお客様がいらっしゃる…それでは特別なおもてなしをしませんと！」
ピエロはそう言ったかと思うとおもむろに両手に上げて背後に宿した闇を拡散させる。
その闇はサーカスの動物達を侵食していく。
「早く観客達を避難させるんです！」
アサウェルがそう叫んだ時、ピエロの闇に取り込まれた動物達が暴れだした。
グオオオオオオ！
うわぁぁぁぁ！
キャァァァァ！
「皆さん、とりあえず落ち着いてください！」
と、オレは叫んだものの会場はもうパニックで誘導出来そうもない…。
そもそもそんな誘導なんてオレは今まで一度もした事ないしそう言うのはやっぱり専用のスタッフがした方がいいだろう。
オレ達が今一番しなくてはいけないのは…あの暴走した動物達を鎮める事！
とうっ！
オレは混乱する観客席からジャンプして舞台に躍り込む。
この全ての元凶のピエロを押さえ込めば！
うおおおお！
オレがピエロを抑え込もうとした時、ピエロはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ
フッ…！
と、消えてしまった。
