第9話 バナナの国(2)
(ま、バナナは好きだからいいけど…)
オレ達は特に何の問題もなくバナナの国に入国。
ここでは国王に接見もせずにただ歩いて行く。
このまま素通りするのかと思ったらアサウェルはお約束の酒場へと。
ここでも情報収集は欠かさないみたいだ。
オレもいつもの様に流れでその後をついて行く。
ギィ…
「おういらっしゃ…お前か」
ん?どうやらイチゴの国とは反応が違うみたいだ。
アサウェル…この国では何かやらかしたのかな?
「ここに何しに来た…ここはもう昔とは違うんだぞ…」
「分かっています…迷惑になる事は決して…」
「早く出て行ってくれ」
うわ…何か雰囲気悪い…。
何でアサウェルはこんな所に入ったんだ…。
もしかしてこの店に入るまでこうなるとは知らなかった?
思わずオレはアサウェルの顔を見た。
けれどその顔は人形ながら冷静そのものだった。
アサウェルは始めから織り込み済みで入った…そう言う風に思えてならなかった。
「一杯だけお願いします…そうしたら出て行きますので…」
「…ああ…」
アサウェルの前にカクテルらしい飲み物と小さな紙切れが渡された。
ははぁん、なるほど、そう言うやりとりか。
かっこいいいなぁ。ハードボイルドだなぁ。
しかし夢の中とは言え人形がお酒を飲む光景は奇妙なものだった。
その酒場を出てアサウェルは渡されたメモを片手に読みながら歩いて行く。
オレはその内容が気になって仕方なかった。
「そのメモには何て?」
「…この街にかなりの数のメアシアンが潜んでいると…」
「?!それってヤバイんじゃ…」
「さすがに白昼堂々と大胆な行動は取らないでしょう」
そうは言ってもオレは急に周りが気になり始めた。
一度疑念を持つと全てが怪しく見えてくる。
ここで動揺したら敵の罠にかかったようなものだ…って、頭では分かっているのに。
「早くこの街を出ようよ」
「なぁに…堂々としていれば何も問題ありません…君もしっかり鍛えて来たでしょう?」
場数を踏んだ経験の差だろうか…こんな状況になってもアサウェルは堂々としている。
対してオレの方はと言えば…情けないほどキョロ充になっていた。
(あわわわわ…)
いくら鍛えたって言ってもオレはまだ実践の経験なんてひとつもない。
敵がどんな手を使って攻撃してくるか分からない。
いつどこから攻撃されるか分からないこんな状況で冷静でいられるはずがなかった。
シュッ
今何か頬をかすめた!
思わずオレは頬を触って確認する。
一瞬風が吹いただけだと自分を納得させながら手を眺めたらその手は赤く染まっていた…。
う、うわああああっ!
オレは声にならない叫び声を上げながら駆け出した。
ヤバイ!ヤバイヤバイ!
これ飛び道具だよ!肉弾戦の想定しかしてなかったよ!
誰か!誰か助けてよ!
「あっ!単独行動はさすがに危険です!」
アサウェルの忠告もこの時は全然耳に入らなかった。




