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第8話 イチゴの国(3)

 見た目はみすぼらしいくらいのその建物は、しかしかなり繁盛している様子だった。

 近づくとその賑やかな声が外からでも聞こえてくる。

 ここなら父の情報が何かしら入っていてもおかしくないなとオレは思った。


 キィ…


「いらっしゃ…よう!アサウェル!久しぶりだなぁ!」


 店のマスターが陽気にアサウェルに声をかける。

 やはりここでも彼は有名人のようだった。


「そいつは?まさかタダシの息子かい?」


 オレはその言葉に無言でコクリと頷いた。


「そうかい!いやあこれは嬉しいねぇ!タダシの息子がこの店に来てくれた!」


「彼にはジュースで頼みます」


「ああ…まだ未成年なんだな…了解だ」


 オレの前にイチゴジュースが出された。

 気を利かせて炭酸入りだ。

 目的は情報収集だから別に何を出されても文句はない。


 一緒にストローもついてきたが、さすがにそこまで子供じゃない。

 オレはコップに口をつけてダイレクトにそのジュースを飲んだ。


「…うまい…」


 何だこれ!見た目はありふれたイチゴジュースのはずなのにすごく美味い。

 甘酸っぱい苺の風味と喉を刺激する炭酸の具合が最高だった。

 オレの言葉に酒場のマスターも上機嫌だった。


「だろ?ウチのイチゴソーダはこの国一番さ!」


 あまりに美味しくてオレはすぐにこのイチゴソーダを飲み干してしまった。

 その味は今まで飲んだどのジュースよりも美味しかった。

 夢の世界、恐るべし…。


 オレがイチゴソーダに感動している内にマスターとアサウェルはしっかり情報収集をしていた。

 大人の話に子供は不要とでも言う感じでちょっとした疎外感をオレは覚えていた。


「それじゃあここにも情報は入っていないのですか…」


「ああ…逆に言うと情報の入らないエリアにヒントが隠されているのかもな…」


「危険地帯ですか…リスクが大きいですね…」


「だが…いつかは足を踏み入れなくちゃいけないだろ」


「ええ…分かっています」


 結局分かったのはここには何も有効な情報はないって事だった。

 酒場で軽い食事を取ったオレ達は宿に泊まって一日の疲れを癒やす事にした。

 今日は戦いこそなかったものの王に謁見したり酒場初体験したりと中々に濃い一日だった。

 宿のベッドに横たわるとオレはすぐに深い眠りへと入っていった。


 夢の世界で睡眠を取る何とも矛盾した行為…。

 気が付くと現実の朝になっていた。


 チチチ…チチチ…。


 今朝も目覚ましが鳴る3分前に目が覚めていた。

 やれやれ…こんな日々がこれからしばらく続くのか…(遠い目)。


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