第一章:第3話 やりすぎと加減
大分遅くなってしまいましたが3話投稿です。
少々のグロシーンありです。
「森の中にいても何だし。とりあえずは転生物の定番として村を目指そう。メルドナってところが近いって言ってたな」
「うん!」
「じゃあそこに行って拠点にしよう。家と安定した収入が必要だ」
「そうだね!愛の巣かぁ…えへへ」
「そんないいもんじゃないと思うが…出発しよう」
「はーい」
とは言ったもののどの方向に向かっていけばいいのか。
道みたいになってるところに沿って行ってみれば着くだろうか。
「ねぇねぇ。あなたのステータスはかなり高かったけど実際はどのぐらい強いのかなぁ?」
「なんだよ唐突に。だが、それは気になるところだな。こういう時は魔物的な存在にぶつけるのが鉄則なのだが…」
「そこの茂みにフォレストウルフっていうモンスターがいるみたいだよ!」
「わかるのか?」
「うん!索敵スキルのおかげみたい」
「なるほどなぁ」
索敵スキルってのは便利だな。
俺にはなんにも感じられないぞ。
「いるのがわかってはいても慎重に進むべきだな。なにせ初のモンスターとの邂逅だ。」
「そうだね!私はステータスも低いし頑張って!」
「まぁ、そうなるわな…。俺の後ろに隠れてろよ。」
「うん」
日比野はそう応えて俺の後ろに回ると服の裾をぎゅっと掴んだ。
胸にぐっとくるものがあったがここは動きに出ないように堪え、茂みに集中する。
茂みまで7mと迫ったところで
ぐるぅぁぁぁああ!
フォレストウルフが威圧するような大声を発しながらこちらへ襲いかかってきた。
「くっ!」
武器がない今拳を振るうしか対抗する術はない。
「ふっ!」
意を決して渾身の力を込め襲いかかるウルフにストレートを放つ。
ボパッ!
俺の拳を受けたウルフは赤い華を咲かせながら砕け散っていった。
そこに残ったのはただの血溜まりだけ。
「は?」
なんだこれ。
唖然として口が開いた。
そっと裾を掴んでいた日比野を見ると同じような顔をしていた。
「な、何が起こったの?」
「俺にもわからん」
とりあえずは…このまま村に行って力加減がわかってないってのは生活に大変不利なので実験でもしてみようか。
「このままだと村に行っても生活がままならなくなりそうだ。そこで、その辺にある木で力加減の実験でもしてみようかと思う」
「そうだね。うっかり人殺しちゃうってのも嫌だからね…」
「そのとおり。本気で殴ったら普通に折れそうなのでまずは50%ぐらいから」
木を殴る。
えい。
木は全体にひびが入りそのまま俺達とは反対側に倒れていった。
「つ、次は20%ぐらいにしよう。そうしよう」
木を殴る。
木は半ばまでひびが入り大きく揺れた。
「このぐらいの力で大丈夫なのか…?」
「人間相手ならもうちょっと弱くてもいいかも」
日比野は苦笑気味にそうアドバイスしてくれた。
「そうか。とりあえず魔物には50ぐらいでいいだろう」
「そうだね。肉体が残らないってかわいそうだものね」
「うるさい。とにかく早く村を目指そう」
「はーい」
ちょっとした足止め(?)をくらったけど改めて出発だ。
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歩き始めてから2時間は立ったのではないだろうか。
「う~…疲れたよ~…」
日比野が疲労感たっぷりにそう呟いてきた。
確かに女の子に舗装もされていない山道はきつかったかな。
「少し休憩しようか」
「うん」
しかし俺にも日比野ほどではなくとも疲労がたまってもいいとは思うのだが全然疲れてないな。
それはいいことではあるのだろうが。
ステータスと関係があるのだろうか?
いや、そんなことよりも水も食料もなく、村の発見さえできていないこの状況をなんとかしないといけないだろう。
…狼とかって食べれるだろうか…?
いやいややめよう。
とりあえず日比野を担いででも村を探そう。
「さて、そろそろ行こうか」
「えー!全然休んでないよー!」
「おんぶでも抱っこでもしてやるから行くぞ」
「え!じゃあお姫様抱っこを所望するぅ!」
すごく嫌そうな顔をして抗議していた顔が一変、光り輝くような笑顔で傍まで寄ってきた。
ちょろすぎるというかなんというか大丈夫か…
でもこの笑顔を見てると少しいたずらしたくなってしまうのは男の性故か。
……違うか。
「よしわかった。お姫様抱っこしてやろう」
「やったああああ!」
そんなに嬉しいか。
それにしてもこんなに近くでまじまじと日比野の顔を見たのは初めてかもしれない。
仕方なくだ、これは仕方なくしているんだ。
そう思わなければドキドキしてしまうぐらい顔の造形は綺麗に整っている。
思わず見蕩れてしまいそうになる。
「ん?どうしたの?私の顔に何かついてる?」
おっと、本当に見蕩れてしまっていたようだ。
「なんでもないよ」
「えー?怪しいなぁ。あ、もしかして私に見蕩れてたとか?」
「うるさい。飛ばすからしっかりつかまってなさい」
「はぁーい」
とてもいい笑顔でこちらに力を込めてしがみついてくる。
俺は見透かされて内心ドキドキだ。
少し顔も赤くなってしまっているかもしれない。
そんな俺は日比野を傷つけないよう力加減には一層気を付け、ステータスという力に身を任せ走り出すのであった。
まだ見えぬ村へと向かって。
…時速にするとおよそ120㎞は出ているであろう速さで。
「いやあああああああ!止まってええええええ!」
「悪いが車は急には止まれないんだ」
少女の叫び声と男の軽口を残して風は過ぎ去っていく。
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