桂 吾郎 その4
「おはよう、ばあちゃん。
今日は病院に行く日でしょ?」
「あぁ、覚えているとも。
ちゃんと行くよ。」
「ついて行かなくて大丈夫。」
「大丈夫。
心配してくれてありがとなぁ。」
「うん。
それでさ、ばあちゃん。」
「ん?」
「本当に桂先生に覚えはない?」
「桂さんって人なら何人かお会いした気もするけど、
先生は居なかった気がするなぁ?」
「余計なことしやがって!お前」
「まあまあそんなに怒らないで下さいよ。」
「プライベートだろうが、こう言うのは!」
「だから桂さんの名前を出しただけで、お見舞いは俺個人ですよ。」
「顔に嘘だって書いてあるぞ。
お節介なんだよ、ったく。」
「こうでもしないと行かないじゃないですか。」
「いいんだよ、それで。
もう昔の話なんだ。
とっくに終わ「終わってません!」
「終わらせないで下さいよ。
まだ終わらせないで下さい。
2人とも今ここにいるじゃないですか。
昔があって今があるんだから、
まだ、
終わりじゃないです。」
「何だってそんなお前が、
お前に…
言いたかねぇけどよぉ、
お前に何が分かるんだ?」
「後悔する。
後悔している。
そんなの俺にだって分かりますよ。」
「分からないですよ、
この先どうなるかだなんて。
分かってるのは、
後悔する。
でも簡単じゃないですか?
今、会いに行けばいい。
それだけじゃないんですか?」
「バカが、簡単に言いやがってぇ!!
こんなジジくさいセリフを今更吐くなんてなぁ。
難しいことなんてない。
なんてことはない。
ひと目会って、
ひと言交わして、
それだけの事が俺にはどうしようもなく難しいんだぃ。
それだけの簡単な話なんだよ…」
「それは あなたの絶望 だ。」
「!」
「それを俺に
…」…。
「男んなら言い切れぃ!」
… 「俺に押し付けないで下さい。」_
「「ぁあ、そう言われちゃあ、しようがねぇなあ、
あぁ、ったく…歳だけはとりたくねぇなって、
歳をとるたびに言って、言って、
いって逃げて来たんだ。
今まで、今日まで,お前と会うまで…
これまでだな_ここまでだ、
まだ諦めたくない_
そうだな、諦めたくねぇ、
それだけで生きてる。なら。よ…」
「いつかは_死にます。」
「分ぁっ
てるよ!!」
「行くよ」
「会いに?」
「そうだ、先生に会いに行く。」
「って、あれ?望、おばあさんはどうした?」
「ああ、今日は病院に行ってるよ。」
「具合悪いのか?」
「いや、悪くなる前に、定期検診。」
「あー、なるほど。帰りは遅いか?」
「病院の混み次第かなぁ?
また何か用事だった?」
「ああ、うん。
まあ俺じゃないんだけどね。」
「?」
「だ、そうですよ、桂さん。
どうします、待ちます?」
「一旦出直すか。」
「待ちましょうよ。」
「逃がさない気か」
「望、こちらが桂さんだ。
桂さん、彼が孫の望です。」
「どうも…」
「どうも。」
「望、これ50円だっけ?」
「自由だな本当。60円。」
「はぁ、俺にもそれくれ。」
「自分で出して下さいよ。」
「誰がたかるかよ。ほい、120円。」
「まいどあり、です。」
「やったー!ごちそうさまでーす!」




