桂 吾郎 その1
いつも通りただ遊んでいただけの部活。
今日はトランプ占いから始まって結局最後はババ抜きが白熱して遅くなってしまった。
トイレに行ってる間に、他のみんなは先に帰った。
ちょうど施錠の時間。
誰もいない階段を見上げていると用務員さんが降りてきた。
「まだ残ってたの?
他に誰か待ってるの?」
「いや、俺だけです。」
「そう、早く帰んなよ。」
「はい。
…あ、あの、」
「ん?」
「この前は、あの、ありがとうございました。」
「何のこと?」
以前、沖先生から庇ってもらった事のお礼をやっと言えた。
「ああ、そんな事もあったな。」
「はい。」
「まあ、あいつが厳しいのは分かるが、
やっぱりやり過ぎは良くない。
それでもあいつを恨まんでやってくれ。
あれであいつも必死だからな。」
「そうなんですか?」
「余裕がないとすぐに人に当たる。
昔からそういう奴だった。」
「昔から知ってたんですか?」
「まあな。
それよりも、早く帰りな。」
「はーい。」
「なんだ、珍しいな。」
「聞きたい事があって。」
「授業の事か?」
「用務員さんの事ですけど。」
「…どうしてだ?」
「昨日少し話したんですけど、気になちゃっいまして。」
「何の話だ?」
「沖先生との関係性を」
「…昔、あの人は先生だったんだよ。
俺はあの人を見て先生になろうと決めたんだ。」
「そうだったんですね!
どんな先生だったんですか?」
…
.....
「あんまり桂さんの仕事の邪魔するなよ。」
「はい。ありがとうございました。」
別にそんなに興味はなかったんだ。
でも知りたいと思った。
思ってしまった。
知っていたいと思っていた。
用務員さんが、
桂 吾郎がどんな人間だったのかを。




